【創設的届出/報告的届出|役所への届出の分類|提出義務・罰則】
1 創設的届出/報告的届出
2 創設的届出|種類|当事者の合意のみによる手続
3 創設的届出×提出時の意思の維持
4 創設的届出×不受理申出|概要
5 報告的届出|種類|家裁が関与したケース
6 報告的届出|提出義務・罰則
7 報告的届出|意思の撤回・不受理申出
1 創設的届出/報告的届出
戸籍に関する役所への届出は2つの性質に分類できます。
<創設的届出/報告的届出>
あ 創設的届出
身分関係の変更が『当事者の合意』だけでは成立しない
『当事者の合意+届出』が必要である
=届出によって初めて身分関係が形成される
→『創設的』な届出と言える
い 報告的届出
家庭裁判所の手続が完了した
法的な身分関係の変更は既に生じている
ただし戸籍には『身分関係の変更』が反映されていない
→事後的に届出を行うことにより戸籍上の記録・変更が行われる
→『報告的』な届出と言える
2 創設的届出|種類|当事者の合意のみによる手続
創設的届出の種類をまとめます。
<創設的届出|種類>
あ 婚姻届
い 協議離婚届
う 普通養子縁組届
え 協議離縁届
お 認知届
これらは『裁判所が関与しない』手続です。
要するに当事者の合意のみで成立する身分関係と言えます。
3 創設的届出×提出時の意思の維持
創設的届出は『届出の提出時の当事者の意思』が重要です。
届出の効力との関係をまとめます。
<創設的届出×提出時の意思の維持>
あ 創設的届出×『意思』|基本理論
『創設的届出』は『役所への提出時』に効果が生じる
→『提出時』に当事者の意思・合意が維持されていることが必要である
い 意思の撤回=翻意|具体例
夫婦が納得して,離婚届に調印した
調印済の離婚届の用紙を夫が預かった
その後,妻の気が変わり『離婚したくない』と思うに至った
夫が離婚届を役所に提出した
う 意思の撤回×提出→無効
届出の提出時に届出内容の意思が維持されていない場合
→届出は無効である
詳しくはこちら|離婚意思の内容(形式的意思)と離婚意思が必要な時点(離婚届の作成・提出時)
4 創設的届出×不受理申出|概要
創設的届出は『無効』となることがあり得るのです(前述)。
このような構造から,一定の問題点とこれに対する制度上のケアがあります。
<創設的届出×不受理申出|概要>
あ 創設的届出×意思の撤回|問題点
理論的に無効な届出が役所に提出された場合
→役所が『意思の撤回』を確認・把握するわけではない
→受理し,戸籍に記録されてしまう
→戸籍の訂正のためには家裁の手続が必要になる
詳しくはこちら|離婚無効|調停・訴訟|『無効』の離婚届受理の撤回→家裁の手続が必要
い 不受理申出
一定の届出を『受理しない』扱いにする制度がある
詳しくはこちら|不受理申出|協議離婚届提出を阻止できる・報告的届出は対象外
5 報告的届出|種類|家裁が関与したケース
『報告的届出』の種類をまとめます。
<報告的届出|種類>
あ 離婚
家庭裁判所の手続による離婚成立後の離婚届
=調停離婚・訴訟離婚・和解離婚
い 離縁
家庭裁判所の手続による離縁成立後の離婚届
=調停離縁・訴訟離縁・和解離縁
う 認知
強制認知後の認知届
=審判・判決による認知
え 特別養子
特別養子縁組の届出
家庭裁判所が認めることが前提である
詳しくはこちら|特別養子縁組|親子関係を解消する・虐待や代理母のケースで利用される
6 報告的届出|提出義務・罰則
報告的届出は提出期間が決まっています。
<報告的届出|提出義務・罰則>
あ 典型例
家事調停で離婚が成立した
調停調書が作成される
この時点で理論的に離婚が『成立』する
い 届出義務|基本
当事者は役所に離婚届提出を行う義務がある
離婚成立後10日以内という期間が定められている
※戸籍法77条1項,63条1項,43条
う 届出義務×違反|罰則
正当が理由がなく期間内に届出をしない場合
→過料5万円以下
※戸籍法135条
え 届出義務×違反|民事的効果
既に成立した身分関係自体に影響はない
例;成立した離婚の『調停調書』が無効になるわけではない
実務上,条件交渉が終わって離婚調停が成立するとほっとします。
理論的に離婚が成立するので,役所への届出は気が回らない傾向があります。
そこで10日の提出期間を過ぎてしまう方も多いようです。
違反に対しては過料の罰則があります。
しかし実際に発動する=課せられる,ということはあまりないようです。
7 報告的届出|意思の撤回・不受理申出
『創設的』届出については意思の撤回の問題がありました(前述)。
この点『報告的』届出については性質的に,この問題は生じません。
そこで回避策である『不受理申出』も適用されないことになっています。
<報告的届出|意思の撤回・不受理申出>
あ 報告的届出×意思の撤回
報告的届出はその前に法的な身分関係変更が完了している
仮に『当事者が意思を撤回=翻意した』場合
→法律的な状況は何も変わらない
→役所への届出提出は有効である
い 報告的届出×不受理申出
報告的届出については『不受理申出』の制度は適用されない
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