【自転車事故の過失割合;類型別】
- 自転車と自動車が衝突した場合,自転車も多少は責任を負うのでしょうか。
過失割合はどのように判断するのでしょうか。 - 自転車事故についても,事故状況の類型によって,過失割合(過失相殺)の基準が確立しています。
1 自転車と自動車の過失割合は,自転車が有利,という傾向がある
2 自転車事故における過失割合基準は蓄積されている
3 自動車左折で自転車巻き込まれる類型
4 渋滞中の自動車の間から別の自動車が出てくる類型
5 道路外から自動車が道路に進入してくる類型
6 自動車が道路外に出る類型
1 自転車と自動車の過失割合は,自転車が有利,という傾向がある
一般的に,自転車と自動車では,過失割合において自転車が有利という傾向があります。
自転車側の過失ゼロ,ということも結構あります。
元々,弱者保護という考え方があって,危険性の大きい自転車の方が過失割合は低い傾向です。
とは言っても,基本的には,自転車を運転する以上は周囲に注意を払わなくてはならない,という大原則があります。
多少は責任(過失割合)を負うことが少なくないです。
その一方で,自転車を運転していて,『これは予想できない。実際問題避けようがない』という場合には過失ゼロとなります。
なお,自転車事故に関する特徴については別に説明しています。
<→別項目;自転車事故の特徴,危険性の認識不足>
2 自転車事故における過失割合基準は蓄積されている
裁判所や弁護士の交渉において用いられることが多いのは,財団法人日弁連交通事故相談センターの損害賠償額算定基準という本です。
赤本とか赤い本と呼ばれています。
その本の表紙に『赤い本 弁護士必携』とビジネス精神を伴って自ら書かれています。
以下,具体的類型ごとに説明します。
なお,賠償額の算定上過失ゼロとなっても,実際に怪我をしたり,事故の当事者となって嫌な思いをするのは避けられません。
信頼の原則もありますが,かもしれない運転を心がけるべきなのでしょう。
3 自動車左折で自転車巻き込まれる類型
<事故の類型>
自動車=左折,自転車=直進 で衝突した
先行していたのが自動車か自転車かで自転車の過失割合が10%か0%か違ってきます。
(1)自動車先行
自転車の過失は基本10%
ただし,自動車側に合図なし,合図遅れまたは大回りがあった場合は,マイナス10%となります。
つまり,自転車の過失はゼロとなります。
具体的には,前方の自動車が左に寄っていないし,合図(ウィンカー)も出していないという場合は,その後衝突しても自転車の過失はゼロ,となります。
さすがにこのような場合は左折するとは思わなかったが通用するということになります。
(2)自転車先行
自転車の過失は基本0%
要は,自転車が直進しているところを,自動車が追い越して前を横切る形で左折した,ということです。
さすがに,この自動車の動きは想定外でしょう。
自動車が少し待って自転車をやり過ごすなどの対応を求められていたと考えるべきでしょう。 .
4 渋滞中の自動車の間から別の自動車が出てくる類型
<事故の類型>
渋滞していると,交差点でも自動車がつながっている状態になります。
対向車が右折する場合は,渋滞中の自動車の「隙間」を通り抜けます。
この自動車と車線キワを走行してきた自転車が衝突した場合です。
<過失割合>
自転車の過失は基本10%
ただし,自転車が自転車横断帯か横断歩道上を走行していた場合はマイナス5%です。
さらに,自動車が徐行をしていなかった場合はマイナス5%です。
両方が重なると合計マイナス10%となります。
その場合は,結果的に,自転車側の過失はゼロとなります。
5 道路外から自動車が道路に進入してくる類型
<類型>
ロードサイドの駐車場などから自動車が道路に出てくる際,道路を普通に走行している自転車と衝突した
<過失割合>
自転車の過失は基本10%
ただし,自動車が飛び出してきた(徐行していなかった)場合,マイナス10%です。
また,道路が幹線道路だった場合もマイナス10%です。
これらのどちらかに該当すると結果的に自転車の過失はゼロとなります。
さすがに,大きな道路に出ようとする自動車が道路を走行する自動車・自転車に注意するべきです。
逆に,自転車側からすると,すべてのロードサイドの出入口について注意してスピードを落とすのは不合理です。
このような考え方が根底にあるのです。
※かもしれない運転の対極にあるのが信頼の原則です。一定の常識的な行動はあるだろうと考えても良い,という考え方です。
6 自動車が道路外に出る類型
<類型>
いわゆる『右直(うちょく)事故』が典型例です。
よく,ロードサイドのレストラン・店舗など(の駐車場)に自動車が入ることがあります。
対向車線から入る場合は,店舗に近い側の自動車が「進入路を譲る」形になります。
これと同時に,自転車が渋滞中の自動車を尻目に,車線キワをすり抜けているとこの形態の事故が起きます。
<過失割合>
自転車の過失は基本10%
ただし,自動車が徐行していなかった場合はマイナス10%です。
また,自動車が合図(ウィンカー)をしていなかった場合もマイナス10%です。
結局,どちらかに該当する場合は,自転車の過失はゼロとなります。
要は,自動車がウィンカーも徐行もしていない場合は,急に進路を変えてくるとは思わなくても仕方ない,ということになります。