【家事事件・移送申立|係属裁判所が変更する制度|基準・典型例】

1 移送申立により管轄が変更されることがある
2 移送判断は当事者両方の事情を考慮して判断する
3 移送が認められる典型例は幼い子供や経済的困難

1 移送申立により管轄が変更されることがある

どの裁判所で裁判を行うかというルールは法律上規定されています。
これを『管轄』と言います。
詳しくはこちら|家事事件の管轄のまとめ(調停・審判・訴訟での違いと優先管轄)
『管轄』については『当事者で綱引き』が生じることがあります。
具体的には『移送の申立』という制度です。
移送についての基本事項をまとめます。

<移送申立|基本>

あ 移送の申立

『不便な裁判所に申立をされた』当事者
→『移送の申立』をすることができる
※家事事件手続法9条2項

い 移送×典型例

複数の管轄が存在する
そのうち1つの管轄Aで申立がなされた
相手はA以外の管轄への変更を望む

裁判所としては,実際に不当な状態になっているか,要は,移送した方が良いか,維持すべきか,を判断します。

2 移送判断は当事者両方の事情を考慮して判断する

移送申立がなされると,裁判所は,移送するかしないかの判断を行います。
裁判所は,当事者双方の事情を考慮して判断します。

家事事件における典型的な考慮要素を説明します。

<移送×判断要素>

あ 当事者に『近い』ことを要請する事情

ア 経済的に窮状にあるイ 仕事や育児で移動時間を取りにくいウ 調停の中で,子の意向を調査する予定である 子が居る方の当事者が優先

い 当事者に『近い』ことが要請されない事情

ア 経済的に余裕があるイ 時間的に余裕がある

3 移送が認められる典型例は幼い子供や経済的困難

家事事件において移送が認められる典型例を説明します。

(1)小さなお子様がいて,親権が争われる予定である

お子様の意見(気持ち)の調査が必要となることが想定されます。
そのため,家裁の調査官がお子様に面会することもあります。
詳しくはこちら|監護に関する事項・親権者の裁判(審判・附帯処分等)における子の意見の聴取
詳しくはこちら|家裁調査官による子供の意見の調査(真意を把握する工夫や心理テスト)

(2)収入がないor極端に低い

交通費の出費を避ける必要性があります。
つまり,保護すべきということです。
結局,収入がない当事者の住所に近い家庭裁判所に移送される傾向があります。

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