【住所の調査方法と交渉や裁判手続での利用方法の全体像】

1 民法上の『住所』の意味(概要)
2 公的な『住所』の記録(住民票・戸籍)
3 住民票・戸籍の調査で住所を特定できない典型例
4 『住所』調査方法のバリエーション(概要)
5 住所の調査結果を交渉・裁判で利用する(概要)

1 民法上の『住所』の意味(概要)

住所は『当事者の特定』として,いろいろな手続の中でよく使われています。
この点,民法では,住所とは生活の本拠のことであると定めています。

<民法上の『住所』の意味(概要)>

住所とは生活の本拠のことである
※民法22条
詳しくはこちら|民法上の『住所』(意味・認定基準・認定した判例)

実際に住所が問題となるのは裁判の管轄が多いです。
詳しくはこちら|民事訴訟(と家事調停・審判・訴訟)の土地管轄のうち人的裁判籍
詳しくはこちら|家事事件の管轄|まとめ|調停・審判・訴訟での違い|優先管轄
ところで住所は住民票などの公的な記録になっています。相手の住所を調べる際の有力な資料です。
次に説明します。

2 公的な『住所』の記録(住民票・戸籍)

公的な記録の中にある『住所』と関係する制度をまとめます。

<公的な『住所』の記録(住民票・戸籍)>

あ 『住所』の公的記録

ア 住民票イ 戸籍の附票

い 転居→届出義務

引っ越した場合
→転居届を提出する義務がある
期限=転居後14日以内
※住民基本台帳法23条

う 記録変更

『あ』の中の『住所』が変更される

3 住民票・戸籍の調査で住所を特定できない典型例

住民票や戸籍の附票から『相手の住所』が判明するとは限りません。
実際に,すぐには判明しないということがよくあります。

<住民票・戸籍の調査で住所を特定できない典型例>

あ 転居届提出未了

対象者が転居後,転居届を提出していない
→『住民票上の住所』には『現在相手が住んでいない』
=住民票は『古い住所のまま』である

い 外国への転居

対象者が外国に転居した
次の状態となっていることが多い
ア 日本国内の最後の住所地のままになっているイ 最初の海外の居住地のままになっている

4 『住所』調査方法のバリエーション(概要)

実務での『住所』の公的な調査方法については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|当事者の特定|公的調査|不動産登記・住民票・戸籍
詳しくはこちら|当事者の調査×外国在住|日本人会・県人会・外務省の所在調査・法務局資料
また,これらとは別に調査会社による調査もあります。
『興信所』『探偵』と呼ぶこともあります。
これも別に説明しています。
詳しくはこちら|調査会社・探偵・興信所|相手方の財産や住所の調査

5 住所の調査結果を交渉・裁判で利用する(概要)

相手方の住所が発覚した後に,交渉を始めるケースが多いです。
当然,交渉はうまく合意に達するとは限りません。
相手方が『逃げている』というような場合,交渉自体拒否される可能性が高いです。
そのような場合でも『住所の調査』は無駄になるわけではありません。
その後の裁判手続で活用できます。
一般的に,調停・訴訟などの裁判手続において相手方の住所,が必要になります。
実際に,訴訟の申立後,裁判所から相手方に呼出状を出すことになっているからです。
送付先が分からないと呼出状が発送できません。
なお,例外的に,住所不明のまま訴訟が継続するという方式も用意されています。公示送達という方法です。
詳しくはこちら|民事訴訟における公示送達の要件(公示送達を使える状況)

本記事では,住所の調査方法や,調査した住所を交渉や裁判で利用する方法を説明しました。
住所の調査や活用の方法によって,メインのトラブルの解決が有利にも不利にも変わることがあります。
実際に,相手の住所を調べることで問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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