【夫婦の一方の行方不明→3年で離婚原因,7年で失踪宣告】
1 配偶者が行方不明の場合は離婚か失踪宣告のどちらかを利用できる
2 配偶者の生死不明が3年で離婚原因となる
3 配偶者の行方不明後3年未満でも離婚原因として認められることもある
4 配偶者が所在不明の場合公示送達で離婚訴訟を提起する
5 生死不明が7年で失踪宣告がなされる
1 配偶者が行方不明の場合は離婚か失踪宣告のどちらかを利用できる
配偶者が行方不明の場合は,その生死不明の期間によって婚姻を解消する2つの方法があります。
離婚と失踪宣告の2つです。
詳しくはこちら|嫁姑問題・浪費・行方不明などは程度によっては離婚原因となる
その効果も異なるのでしっかりと理解した上で選択すると良いでしょう。
2 配偶者の生死不明が3年で離婚原因となる
(1)離婚原因
3年間,配偶者と連絡が一切取れず,生死不明,という事情は離婚原因になります(民法770条1項3号)。
訴訟によって,離婚が認められます。
(2)財産分与の適用
財産については,離婚に伴う清算として財産分与が適用されます。
3 配偶者の行方不明後3年未満でも離婚原因として認められることもある
配偶者の生死不明が3年,ということは法定離婚原因となっています(上記『2』)。
ただし,状況によっては,行方不明になった後3年未満でも,離婚原因として認められることがあります。
その時点で夫婦仲が破綻していて戻る可能性もほぼないと言える状態の場合です。
このような場合は,『婚姻関係を継続し難い重大な事由』と認められるのです(民法770条1項5号)。
<配偶者が家を出たことで「離婚原因」と認められる具体例>
ア 夫婦仲が非常に悪化した状態になったイ 夫婦で離婚の意向が共通し,話し合いをしていたウ このような状態の時,一方が家を出て行った
4 配偶者が所在不明の場合公示送達で離婚訴訟を提起する
(1)調停前置の例外となる
一般的に,「離婚」の手続は,最初に調停を申し立てることとされています。
これを「調停前置」と呼んでいます。
しかし,相手方の所在が不明という場合は,例外的に「調停前置」が適用されません。
最初から「離婚訴訟」の提起が認められます。
詳しくはこちら|調停前置=必要的付調停|例外=合意成立の余地/見込みなし|調停取下
(2)公示送達がなされる
一般的に訴訟においては被告の住所を特定する必要があります。
しかし,被告の住所が判明しないという場合は,特定しないままでも提訴できます。
裁判所から「被告への送達」の時には「公示送達」という方式が取られます。
詳しくはこちら|民事訴訟における公示送達の要件(公示送達を使える状況)
5 生死不明が7年で失踪宣告がなされる
(1)失踪宣告の要件
生死不明の期間が7年に達すると,失踪宣告の申立ができます(民法30条1項;普通失踪)。
(2)相続の適用
家裁に申し立ててこれが認められると,『死亡した』とみなされます(民法31条)。
そうすると,夫婦関係は,いわゆる死別になります。
この場合,離婚ではないので財産分与は生じず,その代わり相続が生じます。
(3)死亡に付随する生命保険金など
また,生命保険などの夫婦と関係ない部分でも「死亡」とみなされます。
(4)失踪宣告の取消
なお,その後,本人が戻ってきた場合は,失踪宣告を取り消すことになります(民法32条)。
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
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