【外国語学校,学習塾の中途解約時の返金;特定商取引法】
1 一般的な中途解約によるペナルティーは合理的
2 外国語学校,学習塾では損害賠償額,違約金の条項は制限されている
3 最大限の控除をした残額は返還義務がある
1 一般的な中途解約によるペナルティーは合理的
外国語学校や学習塾では,授業料等の料金を先払いする方式も多いです。
この場合,当初の予定よりも早く辞める,という場合に返金の問題となります。
外国語学校や学習塾では,一般的なルールが大幅に修正されます。
一般的ルールから順に説明します。
通常,約款や契約として,返金しないことが規定されています。
中途解約の場合にペナルティーとしての金銭を設定することは一般的に認められています。
法的には『損害賠償額の予定』,『違約金の定め』と言います。
この2つをまとめて,ここでは『ペナルティー金』と呼びます。
中途解約の際は,既に支払われた金額から,既に提供したサービス相当額+『ペナルティー金』を差し引くことになります。
ごく一般的には,契約当事者で特定の状況における経済的負担を設定することは自由とされています。
契約自由の原則,とか,私的自治の原則と呼ばれる原則論です。
2 外国語学校,学習塾では損害賠償額,違約金の条項は制限されている
(1)特定商取引法により損害賠償額,違約金(ペナルティー金)の上限額が設定されている
外国語学校や学習塾は特定商取引法における特定継続的役務提供に該当します。
正確には,契約期間が一定の基準を超えている場合に該当します(特定商取引法41条)。
この基準は後述します。
特定継続的役務提供に該当する場合,『ペナルティー金』の上限規定が適用されます(特定商取引法49条2項)。
<特定商取引法による,損害賠償額,違約金(ペナルティー金)の上限>
あ サービス提供開始後
※特定商取引法49条2項1号
提供済のサービス対価相当額 + 『通常生じる損害額』
い サービス提供開始前
※特定商取引法49条2項2号
『契約締結,履行のために通常要する費用額』
(2)『通常生じる損害額』,『契約締結等に通常要する費用額』の内容
これらの金額は通達上規定されています(後記)。
その内容は次のとおりです。
なお,『特定継続的役務』に該当するための最低限の役務提供期間も含めて記載されています。
<『通常生じる損害額』,『契約締結等に通常要する費用額』の金額>
特定継続的役務 | 役務提供の期間 | 契約解除によって通常生ずる損害額 | 契約の締結等に通常要する費用額 |
エステティックサロン | 1月 | 2万円,契約残額の10%のいずれか低い額 | 2万円 |
語学教室 | 2月 | 5万円,契約残額の20%のいずれか低い額 | 1万5000円 |
家庭教師 | 2月 | 5万円,1月分の料金のいずれか低い額 | 2万円 |
学習塾 | 2月 | 2万円,1月分の料金のいずれか低い額 | 1万1000円 |
<通達>
特定商取引法における『特定継続的役務提供』に係る規制の概要
平成15年2月 消費経済政策課(経済産業省)
3 最大限の控除をした残額は返還義務がある
(1)『ペナルティー金』控除後の残額は返還義務がある
特定商取引法の規定に該当する場合,『ペナルティー金』の上限金額が適用されます。
中途解約の場合には,支払済の金額から,提供済のサービス対価相当額+『ペナルティー金』は差し引くことが可能です。
当然,その残額は返還する義務があります。
(2)返金額算定方法を規定していた場合でも実質的な控除額の上限は適用される
例えば,学校,塾において,中途解約時の返金額について一定の算定方法を規定している場合もあります。
この場合でも,実質的に『ペナルティー金』として控除しているのと同じ状態になります。
つまり,次のような関係式となります。
<中途解約時の返金額の最低額>
返金額の最低額 = 既払い金額 − (提供済のサービス対価相当額+『ペナルティー金』上限額)
※最高裁平成19年4月3日