【子の引渡の手続(調停・審判・保全処分・親権・監護権者指定との関係)】
1 子の引渡の手続(審判・保全処分・親権・監護権者指定との関係)
2 親権・監護権と子供の引取の理論的な関係
3 親権・監護権者の指定の審判と子の引渡の審判
4 事実上の調停前置
5 子の引渡の審判前の保全処分の活用
6 子の引渡の保全命令の執行期限(概要)
1 子の引渡の手続(審判・保全処分・親権・監護権者指定との関係)
離婚や別居の際に子供を取り戻すという場面はとてもよくあります。この場合には家裁の子の引渡の審判という手続を利用せざるを得ないケースも多いです。この時,同時に審判前の保全処分を利用することもよくあります。
本記事では,このような子の引渡の手続について説明します。
2 親権・監護権と子供の引取の理論的な関係
まず,子の引渡を求めるための理論的な前提は,親権者や監護権者となっていることです。監護(親権の内容の1つ)の本質として,物理的に子供を手元で養育することが含まれているのです。
家裁の手続として,親権者や監護権者として指定してもらうというものがあります。
詳しくはこちら|親権者・監護権者の指定の手続(手続の種類や法的根拠)
結局,親権者や監護権者に指定された親は,他方の,子供を連れている親に対して,子供を引き渡すよう請求できるのです。
3 親権・監護権者の指定の審判と子の引渡の審判
親権や監護権者を裁判所の手続で決めてもらう手続は,親権者・監護権者の指定の審判というものです。
この手続を行うような状況では,普通,夫婦の間で話し合いができなくなっています。
仮に裁判所が親権者や監護権者を(例えば)妻に決めたとしても,夫が子供を素直に引き渡さないということが十分にあり得ます。
そこで,親権者・監護権者指定の審判と一緒に子の引渡しを求める審判も申し立てると良いのです。
子の引渡審判は,家事事件手続法別表第2『3 子の監護に関する処分』の1つとされています。
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)
4 事実上の調停前置
親権・監護権者の指定と子の引渡は家裁の審判として最終的に判断されます。審判とは別に調停もあります。
現在では,調停を先に申し立てる義務(調停前置)はありません。しかし,実際の運用では,調停を先に申し立てることが要請されています。
詳しくはこちら|一般的付調停|事実上の調停前置・必要的付調停との違い
5 子の引渡の審判前の保全処分の活用
監護権者指定や子の引渡の審判を申し立てて,最終的に裁判所が決定を出すまでは一定の時間がかかります。平均的に1~3か月程度を要することが多いです。
その間,ただ待っていると,当然子供は相手方のもとで生活を継続します。
適切ではない子供の生活環境であれば生育に悪影響が生じます。また,子供の生活が継続していること自体がその後の親権者や監護権者の指定の判断に影響を与えますので不公平な状況となることも考えられます。
詳しくはこちら|親権者指定での『子の利益』では4つの原則が基準となる
そこで,子供の取り戻しまでの時間を短縮する方法もあります。子の引渡について審判前の保全処分を申し立てる方法です。
保全処分なので,通常の審判とは違う一定の要件が必要となります。なお,一般的に保全処分では,担保の提供が必要ですが,子の引渡については,例外的に担保不要ということの方が多いです。
6 子の引渡の保全命令の執行期限(概要)
家裁が子の引渡の保全処分を命令する(保全命令)と,子の引渡を執行できることになります。
ところで,保全命令の期限は告知から2週間と短く限定されています。
詳しくはこちら|審判前の保全処分の効力(発生時期・執行期限・執行停止)
相手が子の引渡を拒否して妨害するようなケースでは,いろいろな準備が必要になります。2週間の期限内に執行を完了するためにはしっかりした対応が必要となります。
本記事では,子の引渡の審判や審判前の保全処分の手続について説明しました。
実際には,個別的な事情によって最適な手段は異なります。手段の選択によって結論が違ってくることもあります。
実際に子供の引渡が必要な状況にある方や子の引渡を求められている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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