【内縁関係の解消(離婚)における清算(財産分与の適用・家裁の調停・審判)】

1 内縁解消時の清算は離婚と同様である

内縁の夫婦が別れることは,(法律婚の)離婚と同じような法的扱いとなります。
具体的には,財産分与として財産の清算を行い,一方の不当な行為が原因となっている場合には慰謝料が発生します。
子供がいる場合には,別れた後の生活費として養育費の金額を決めることになります。

内縁解消時の清算内容

あ 財産分与

内縁関係の2人で築いた財産があれば,2人で分ける(清算する)

い 慰謝料

内縁解消について,いずれか一方に責任がある場合,精神的苦痛に対する損害賠償として慰謝料が発生する

う 養育費

2人の間に子供が誕生していれば,引き取った方は,相手方に子供の扶養費用として養育費を請求できる

2 内縁解消時には財産分与が必要である

内縁関係でも夫婦で財産を築いているはずです。そこで,内縁解消の際には2人の財産を清算することになります。法律的には,法律婚の財産分与の規定を類推適用する,ということになります。
結局,内縁の夫婦の協力により築いた財産があれば,どちらの名義でも2人で分ける必要があります。

内縁解消への財産分与の規定の類推適用(※1)

あ 類推適用(肯定)

内縁関係の解消について,(法律婚の)財産分与の規定を類推適用(準用)する
※最判昭和33年4月11日
※東京家裁昭和31年7月25日
※広島高裁昭和38年6月19日

い 重婚関係への類推適用(肯定・参考)

重婚関係にあった内縁のケースであっても,財産分与の類推適用を認めた
※広島高裁松江支部昭和40年11月15日
詳しくはこちら|重婚的内縁関係にも適用される法律婚の規定と適用されない規定がある

3 内縁解消時の財産分与について家事調停・審判が利用できる

内縁解消についての家庭裁判所の手続も法律婚の離婚と同じ扱いとなります。つまり,離婚時の財産分与の調停,審判について,家事調停,審判を利用することができます(東京高裁昭和54年4月24日)。
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)

4 内縁解消時の慰謝料は家事扱いはされず地裁で扱う

内縁解消の経緯によっては,慰謝料請求を行うことも多いです。
離婚に伴う慰謝料請求については,家事事件として家庭裁判所で扱います。
この点,内縁解消に伴う慰謝料請求については通常の民事訴訟として扱われるのが通常です。
この場合,地方裁判所(または簡易裁判所)の管轄となります。

5 内縁関係の死別における財産分与(否定方向・概要)

以上は,(当然ですが)内縁の夫婦が生存しているうちに内縁関係を解消した場合の扱いです。
この点,死別,つまり内縁の夫婦の一方が亡くなった場合には,財産の扱いが大きく違ってきます。内縁の夫婦には相続権がないので,財産の清算はないのです。
死別と生前の内縁解消とで,大きな違いがあるのです。
ただし,状況によっては例外的な扱いになることもあります。たとえば内縁解消に向けた話し合いや調停などの手続をしている時に一方が亡くなったというケースでは,財産分与として清算が行われることもあるのです。
このようなことについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|内縁関係の死別における相続権・財産分与の適用の有無

6 内縁関係解消の慰謝料相場は100〜300万円

内縁関係にあった男女が別れる時の慰謝料の問題について説明します。
一方の不当な行為によって内縁解消に至った,というケースでは,慰謝料が発生することがあります。
理論的には,債務不履行と不法行為の両方があり得ますが,いずれにしても,損害賠償請求権が発生することになります。
内縁解消の慰謝料の金額は,個別的な事案によって異なりますが,100万~300万円となることが多いです。離婚と同程度かやや低めといえます。
もちろん,特に悪質性が高い,あるいは被害(苦痛)が大きいようなケースでは1000万円の慰謝料と認められることもあります(東京地裁平成3年7月18日)。
なお,不貞行為が原因で別れたケースでは,関与していた人(不貞相手)への慰謝料請求が認められることもあります。

内縁関係不当破棄の責任

いわゆる内縁は,婚姻の届出を欠くがゆえに,法律上の婚姻ということはできないが,男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であるという点においては,婚姻関係と異るものではなく,これを婚姻に準ずる関係というを妨げない。
そして民法七〇九条にいう「権利」は,厳密な意味で権利と云えなくても,法律上保護せられるべき利益があれば足りるとされるのであり・・・,内縁も保護せられるべき生活関係に外ならないのであるから,内縁が正当の理由なく破棄された場合には,故意又は過失により権利が侵害されたものとして,不法行為の責任を肯定することができるのである。
されば,内縁を不当に破棄された者は,相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに,不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるものといわなければならない。
※最判昭和33年4月11日

7 子供が認知されていれば,内縁解消後に養育費が生じる

内縁の関係を終わらせ,母が子を引き取った場合における養育費について説明します。
最初から父親が認知していれば特に問題はありません。
離婚の時と同じように養育費の請求が可能です。
仮に認知されていない場合は,法的には父と子の間の親子関係は,ないものとして扱われます。
さらに,父親が認知に応じない場合は,最終的には,訴訟において強制的に認知を行うということも可能です(民法787条,強制認知)。
詳しくはこちら|強制認知|家裁の調停・訴訟|協力しない『父』への認知請求
いずれにしても,父と子の間に親子関係が認められれば,子供を引き取った母親から父親に養育費の請求ができます。
金額の相場については,一般の夫婦の場合と同様です。
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用分担金の金額算定の基本(簡易算定表と具体例)

本記事では,内縁の解消の際の清算の内容について説明しました。
実際には,個別的事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際に内縁の解消に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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