交通事故の基礎知識|専門弁護士ガイド
1 交通事故に遭ったら
2 交通事故の3つの責任
3 自転車事故の特殊性
4 運行供用者責任とは?
5 社用車の交通事故
1 交通事故に遭ったら
交通事故が起きた場合,救護義務や警察への届出義務があります。
これらをしない場合,道交法で懲役や罰金の罰則があります。
意図的に逃げる,つまりひき逃げは当然罰せられます。
実際に起きることがあるのは,被害者が対してケガをしていないように見えた,とか,被害者が『大丈夫』と言ったというケースです。
加害者としても,それ以上問題にならないと思ってその場を去ってしまい,後から罰金が課せられることがあります。
小さな事故でも警察に届け出ると良いです。
また,同時に加入している保険会社にもスグに連絡しておくと良いでしょう。
連絡していなかったから保険金が出ないとなることはほとんどありません。
しかし,自己内容の確認が不十分ということで保険金の支払を受けるのに苦労するケースもあります。
交通事故発生時の警察への届出義務;事故証明書
2 交通事故の3つの責任
交通事故を起こした場合,3種類の責任が発生します。
<交通事故の3つの責任>
・刑事責任
懲役や罰金
・民事責任
損害賠償
・行政責任
免許の停止や取消
これらは別々の責任です。
ただ,民事の損害賠償をしっかりを行った場合,刑事責任の量刑が軽くなる,というように影響を及ぼすことはあります。
交通事故を起こすと3つの責任が生じる
3 自転車事故の特殊性
自転車事故でも自動車と同じように,非常に多く生じています。
裁判例の蓄積から過失割合の基準が作られています。
自転車事故の過失割合;類型別
ところで,自転車の事故は,自動車と比べて,被害の規模が小さい,というイメージがあります。
その傾向自体は正しいのですが,悩ましい問題があります。
自転車は子供が乗っていることも多いです。
免許制度もないし,気軽な乗り物です。
事故が生じた時に加害者が子供ということも多いのです。
子供が事故を起こした,という場合,法的に,親への請求ができる場合とできない場合があります。
小規模な事故で,自発的に親が賠償を払うという場合は問題にはなりません。
しかし,死亡事故で,数千万円を超える賠償額の場合,親が自発的には払わないということが起きます。
裁判所が理論的に親の責任を認めないと,親は賠償金を払わず,また,子供に請求しても払ってもらえないです。
差し押さえる財産もないでしょう。
一方,自動車では自賠責保険という強制加入の保険が最後の頼りです。
しかし,自転車には強制保険というものはありません。
結局,被害者が泣き寝入りという可能性もあるのです。
法的な問題としては,子供の年齢や具体的なしつけ,自転車の管理状況をしっかりと主張,立証することが,親の責任が認められることにつながります。
自転車事故の特徴,危険性の認識不足
子供と親権者の賠償責任;事理弁識能力,監督責任
4 運行供用者責任とは?
交通事故によって責任を負う者は,原則として運転していた者です。
この例外があります。
自動車を貸しただけの所有者です。
事故を起こしたのは借りた人なのに,貸した人=所有者も責任を負うことがあるのです。
これを運行供用者責任と言います。
実際には,運行供用者に当たる場合と,当たらない場合が曖昧なケースもあります。
状況によっては,この解釈で見解が熾烈に対立することもあります。
詳しくはこちら|運行供用者責任の基本(運行支配・運行利益・他の制度との関係)
詳しくはこちら|特殊な事情と運行供用者責任の判断(所有権留保・レンタカー・盗難車)
5 社用車の交通事故
社用車で営業活動中に,従業員が運転ミスで交通事故を起こすケースがあります。
この場合,損害賠償責任については,ちょっと複雑になります。
運転者が責任を負う,という原則自体はあてはまるのですが,雇用関係ならではの例外があるのです。
まず会社も連帯責任を負います。
次に,従業員と会社の間で,どちらが負担すべきかという問題があります。
求償とか逆求償という問題です。
大雑把に言うと,大部分は会社が負担するという傾向です。
つまり,従業員保護という根本的な考え方があるのです。
社用車と運行供用者責任;不真正連帯債務,求償