交通事故の損害額計算|専門弁護士ガイド
1 過失割合の基準
2 治療費
3 介護費
4 休業損害
5 逸失利益
6 ライプニッツ係数とは?
7 代車使用料
1 過失割合の基準
多くの交通事故では,当事者双方に過失が認められます。
この場合,損害賠償の金額算定では過失割合が重要になります。
過去の多くの裁判例の蓄積から,過失割合の基準が作られています。
実際には,この基準に完全に当てはまる,ということはあまりありません。
見方,考え方によって,過失割合は大きく異なる,ということが多いです。
過失割合の基準には,修正する方法として『+5%』『−10%』なども記載されています。
いずれにしても,どれをどのように使うかという部分では意見が対立するということが起きやすいです。
例えば,警察に現場で聴取された質問への説明に間違いがあったために,その後の過失割合で不利になるケースもあります。
事故直後からの対応が損害賠償に影響することも少なくありません。
<→過失割合は類型的な基準が蓄積されている>
2 治療費
交通事故でケガをした場合,当然,治療費が損害となります。
実際には,加害者の保険から,直接病院に支払われるのが通常です。
しかし,健康保険や労災保険が使える状況もあります。
そのような場合は,どちらを先に使うのかで損するということもあります。
誤解が多いので注意が必要です。
治療費は実際に要した金額が損害とされる>">交通事故における労災保険,健康保険の利用;メリット">交通事故の怪我の治療でも健康保険は使える
3 介護費
交通事故でケガをした場合,入院中や日常生活で手助けが必要になります。
介護士が必要であれば,その費用が損害になります。
実際には,それよりも軽い程度の場合,家族が手助けすることがあります。
この場合被害者が,介護費用を家族に払うわけではないです。
しかし,サポートが必要な程度に応じて介護費用が損害に加算されます。
<→介護費用は必要な範囲で損害とされる>
4 休業損害
交通事故の結果として,収入が減少するということがあります。
具体的には,ケガをして働けなくなった,ということです。
治療期間中の収入減少のことを休業損害と言います。
当然,損害の1つとなります。
この休業損害額の算定で保険会社と金額が異なることが多いです。
算定方法が自己直前の収入を基準とするのですが,この金額が曖昧なことがあるのです。
特に被害者が自営業者の場合,もともと収入に波がある,とか,公的な税務申告の内容だけでは実態が再現できない,などの事情が典型的なものです。
<→休業により実際に生じた減収は休業損害となる>
5 逸失利益
(1)後遺症の場合の将来の収入は逸失利益として賠償される
交通事故によって後遺症が残った場合,その後も仕事ができない状態が続きます。
経済的には収入が少ないとか収入がない状態が続きます。
このような,将来の収入減少も,損害賠償の対象となります。
逸失利益と言います。
『本来得られたはずの収入が得られなくなった』という考え方です。
(2)67歳までの収入が賠償される
通常は,働ける年齢の上限を67歳として計算します。
ただし,将来の収入を前倒しで損害賠償として払ってもらうという都合上,中間利息を差し引きます。
ライプニッツ係数を使う計算となります。
(3)後遺症の等級によって労働能力喪失率が違う
後遺症の内容によってまったく働けないという状況から多少差し支える程度(軽度)まで,幅広いです。
そこで,逸失利益の計算では労働能力喪失率というものを使います。
何%働けない=収入が減るのか,という数値です。
<→休業損害,逸失利益;算定方法,割引率,ライプニッツ係数,表>
6 ライプニッツ係数とは?
後遺症の場合の,逸失利益の損害賠償では将来の収入分を前倒しして払ってもらう,ということになります。
そこで,『もらった賠償金に今後利息が付く』ことになります。
こうすると,利息分がトクしてしまう,ということになります。
そこで,将来発生する利息分は差し引くという考え方がされています。
中間利息の控除と言います。
中間利息の控除の計算は複雑です。
そこで,簡単に計算できるように,将来働ける年数によって中間利息控除が何%かということを表にまとめてあります。
これを,提唱者にちなんでライプニッツ係数と呼んでいます。
ライプニッツ係数表を使えば,簡単に逸失利益(の中間利息控除)の計算が行えます。
<→逸失利益の算定では中間利息の控除のためライプニッツ係数を用いる>
7 代車使用料
交通事故で自動車が損傷した場合,通常修理をします。
被害者は,修理期間中に自動車を使えなくて不便という状態になります。
修理期間中にレンタカーを借りてしのぐというニーズがあります。
この点,不便というだけで,レンタカーの代金(代車使用料)も賠償される,とは限りません。
一定の必要性がある時だけ代車使用料の賠償が認められます。
典型例は,営業車両や,電車やバスが使えない,使いにくいエリアの通勤です。
また,代車が認められる場合でも,グレード(車種)は必要最小限とされます。
実際には,ケガや自動車の修理といったメインの交渉と並行して代車の交渉が行なわれます。
そして,保険会社の見解,回答を待っているヒマがないというのが通常です。
いったん被害者の方で立て替えて,その後保険会社に請求することが多いです。
その場合,被害者としては,立て替えた金額が全額補償されないリスク,を負うことになります。
例えば,修理するか買い替えているか迷っていて修理が遅くなった場合には,修理期間全部の代車使用料は賠償されないというケースもあります。
このようなリアルタイムで進むによるリスクというのが代車使用料のトラブルの特徴です。
<→自動車修理期間中の代車使用料>