不動産(建物賃貸借)トラブル解決・不動産競売の流れ|専門弁護士ガイド
1 建物賃貸借の賃料増額・減額請求の流れ※
建物の賃貸借において、賃料が適正な額ではない、ということもあります。
そのような場合、賃料の増額や減額の請求ができます。
これについては、借地の地代の増額・減額と同じ手続です。
こちらをご覧ください。
ガイド|借地の明渡請求の流れ(交渉、仮処分、訴訟)
詳しくはこちら|借地の明渡請求の手続の流れ;仮処分、合意の項目、強制執行
また、災害などで建物の一部(や全部)が使用できない場合に、賃料減額となる、または解除できることもあります。
詳しくはこちら|賃貸建物の使用不能による賃料減額や解除(震災・火災・新型コロナなど)
2 建物賃貸借のトラブル(修繕義務、損害賠償、原状回復・敷金返還)解決の流れ
建物賃貸借に関するトラブルのうち、金銭的なもの(賃料以外)については、解決の流れは同じようなものになります。
建物賃貸借のトラブルのうち同じ解決の流れとなるもの
(1)相手や連帯保証人に支払を求める書面を送付
弁護士が代理人になったことも含めて通知します。
通常は、払ってくれないことが異常事態です。
訴訟提起などの警告を含めて強いメッセージを通知書として内容証明で送ります。
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(2)実質的な交渉
相手から、払わないことについての理由が主張されることもあります。
その場合は、相手からその証拠(根拠)を求めるなど、反論を行います。
相手の主張に合理性がない、あるいは誠意がない場合は、解決の見通しが立ちません。
すみやかに交渉を打ち切ります。
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(3)民事調停
共有者間の請求について、調停を申し立てる方法もあります。
しかし、それまでの交渉が成立しなかった場合なので、調停も成立しない可能性が高いです。
特殊な事情がない限り、調停は行なわず、次の訴訟に進みます。
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(4)金銭の支払を請求する訴訟を提起
最終手段は訴訟です。
原告として、請求の根拠となる主張や証拠を裁判所に提出します。
通常、被告(相手)も反論や証拠提出をします。
当方の主張、希望の合理性が認められるためには、有利な事情をしっかりとピックアップする必要があります。
そして、この有利な事情を裏付ける資料として、効果的な証拠を集めて提出します。
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(5)裁判所による和解勧告
一般的に、訴訟では、裁判所から和解勧告がなされます。
有利な事情と有利な証拠をしっかりと良いタイミングで提出することが有利な和解勧告につながります。
実務では和解勧告は非常に重要です。
統計上も、判決と同じくらいの件数が和解で終わっているのです。
詳しくはこちら|ご相談者へ;訴訟;判決/和解レシオ
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(6)判決言渡
和解が成立しない場合、審理が進み、最終的に判決が言い渡されます。
当然、各当事者の提出した主張、証拠を総合的に判断した内容となります。
効果的に有利な主張、有利な証拠を提出した者が勝つということになります。
詳しくはこちら|賃貸人の修繕義務不履行の効果(賃料支払拒絶・賃料減額請求など)
詳しくはこちら|賃貸ビルで営業や居住に支障が生じたらオーナーが責任を負うこともある
詳しくはこちら|原状回復一般論;通常損耗、特約の有効性
詳しくはこちら|借家;敷金;性格
3 家賃滞納の対応策の流れ
(1)実力行使は危険
賃料が滞納になっているのに、賃借人が話し合いに応じようとしない、ということもよくあります。
ところで、賃貸借契約書に家賃滞納時はオーナー(賃貸人)が居室内の動産を処分して良いということが記載してあるものもあります。
オーナーによっては、この条項どおりに、居室内の家財などを捨ててしまうケースもあります。
しかし、このような条項は無効となり、逆にオーナーが住居侵入罪、器物損壊罪などの犯罪になってしまいます。
誤解が多いところなので注意が必要です。
詳しくはこちら|建物明渡×実力行使|基本・違法性判断|自力救済or自救行為
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(2)賃借人と連絡保証人に、支払を請求する通知書を送付
弁護士が代理人になったことも含めて通知します。
通常は、払ってくれないことが異常事態です。
訴訟提起などの警告を含めて強いメッセージを通知書として内容証明で送ります。
支払がない場合は賃貸借契約を解除するということを明記しておきます。
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(3)実質的な交渉
相手から、『遅れているけど払う』、『1か月待って欲しい』とお願いされることもあります。
このような場合は、単に断ることを希望するオーナーが多いです。
契約継続を承諾しない、つまり明渡をしてもらうことを前提として、猶予期間だけ与える方法をとることも多いです。
この場合は明渡期限を明確にしておくことが重要です。
もちろん、最低限、書面にしておきます。
訴え提起前の和解を利用しておくと、仮に自主的に退去しない場合に強制執行ができるようになります。
詳しくはこちら|訴え提起前の和解の基本(債務名義機能・互譲不要・出席者)
詳しくはこちら|建物賃貸借における期限付合意解除(合意解除+明渡猶予)の有効性
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(4)明渡請求訴訟
賃借人が話に応じない、とか、交渉が進まない、ということも多いです。
そのような場合は、訴訟を提起します。
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(5)和解勧告
たまに、賃借人が自ら裁判所に来ることもあります。
その場合、裁判官からも、和解を勧めます。
具体的には、明渡の期限を設定するというものです。
場合によっては、オーナー側としても、この和解に乗った方が良いです。
裁判上の和解であれば、仮に期限どおりに退去しない場合でも、強制執行が可能になるのです。
詳しくはこちら|債務名義は確定判決以外にも多くの種類がある
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(5)判決
賃料滞納の場合、少なくとも3か月以上であれば、ほぼ確実に明渡が認められます。
特殊な事情がない限り、1〜2回の裁判期日で判決に至ります。
主張、立証も単純です。
弁護士の手間も少ないので弁護士費用も抑えられます。
みずほ中央法律事務所では、この手続に慣れているので、利用しやすい費用設定を実現しています。
弁護士費用|不動産|建物明渡の一律料金制度
訴訟のスピードと費用は非常に重要です。
退去を待って長期化すると、その分賃料が入らないからです。
ある程度のコストをかけてスピーディーに空室にした方が、かえって安上がりなのです。
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(6)明渡の強制執行の予告
明渡の判決を獲得したら、強制執行を申し立てます。
明渡の強制執行は雰囲気として大げさです。
居室内の家財を全部搬出する作業になるのです。
しかし、実は実際に明渡の執行を実行しないで済むことも多いのです。
最終的な執行の前に、裁判所の執行官が現地に行き、警告するのです。
賃借人が留守だったり、居留守だったとしても、解錠をして居室に入ります。
例えば、『来週◯曜日に全部搬出します』と口頭で伝えるか、置き手紙(通知文)で知らせます。
ここまで居座った賃借人も、ここまで来ると、執行を実感します。
結果的に、ようやく自ら退去する、ということもよくあります。
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(7)明渡の強制執行の実行
警告でも賃借人が退去に応じない場合は、遂に強制執行をすることになります。
居室内の家財などを搬出し、賃借人も強制的に執行官が退去させます。
その上で、カギ(錠)を交換して完了となります。
これで、空室となり、新たに貸せるようになります。
もちろん、滞納家賃や執行費用の一定部分は、賃借人や連帯保証人に請求できます。
4 建物賃借人への明渡請求の流れ
オーナーの都合で、建物賃貸借(借家契約)を終わらせ、賃借人に退去を求める手続の流れをまとめます。
ガイド|借家契約を終わらせるには?(正当事由・明渡)
(1)更新拒絶または解約申入の通知
契約期間の満了時に更新拒絶の通知を賃借人に送付します。
もともと期間の定めがないという場合は、解約申入の通知を送付します。
これは、通知をしたことが重要なので、内容証明で行ないます。
この通知書の中には、弁護士が代理人になったことも含めて記載しておきます。
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(2)明渡料の交渉
相手から、退去の意向や(退去する前提で)明渡料の希望を提示されることもあります。
この場合、オーナー側として、明渡時期や明渡料について、提示を行ない、条件交渉となります。
相手の主張に合理性がない、あるいは誠意がない場合は、解決の見通しが立ちません。
すみやかに交渉を打ち切ります。
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(3)民事調停
共有者間の請求について、調停を申し立てる方法もあります。
しかし、それまでの交渉が成立しなかった場合なので、調停も成立しない可能性が高いです。
原則的には、調停ではなく、次の訴訟を提起します。
逆にあと少しで合意に達するというような場合は、調停を行う意義があります。
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(4)明渡請求訴訟を提起
最終手段は訴訟です。
原告としては、正当事由となる事情を中心に主張し、その裏付けを証拠として提出します。
被告(相手)も反論や証拠提出をします。
詳しくはこちら|建物賃貸借終了の正当事由の内容|基本|必要な場面・各要素の比重
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(5)裁判所による和解勧告
通常、訴訟では、裁判所から和解勧告がなされます。
それまでに正当事由が認められるような事情を主張し、かつ、効果的な証拠を提出しておくべきです。
有利な事情と有利な証拠が揃っていれば、裁判所は、低めの明渡料を勧告してくれます。
そのような意味で有利な判決を勝ち取るのと同じ準備が必要なのです。
実務では和解勧告は非常に重要です。
統計上も、判決と同じくらいの件数が和解で終わっているのです。
詳しくはこちら|ご相談者へ;訴訟;判決/和解レシオ
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(6)判決言渡
和解が成立しない場合、審理が進み、最終的に判決が言い渡されます。
正当事由がしっかりと主張、立証できていれば、明渡が認められます。
主張、立証のデキによって、明渡料が違ってきます。
5 不動産競売の流れ
不動産競売は、担保権の実行や、共有物分割の方法(換価分割による形式的競売)などとして行なわれます。
ごく平均的な所要期間もまとめます。
<不動産競売の流れ>
↓〜2週間
競売物件公示
↓2〜3週間
競売物件情報閲覧開始
↓1週間
期間入札開始
↓1週間
開札期日
↓〜1か月
売却許可決定
特殊な事情が発覚した場合は、ここで売却不許可となります。
後から売却許可取消となる場合もあります。
↓1〜2週間
代金納付期限
代金納付により、所有権が移転します。
↓2〜3週間
所有権移転登記
↓事情によって異なる
不動産の引渡
買受人(新所有者)が行ないます。
引渡命令を利用できるとスピーディーです。
詳しくはこちら|競売の買受人は引渡命令申立ができる
詳しくはこちら|競売における明渡猶予制度(民法395条)
詳しくはこちら|不動産競売で不動産が損傷・滅失した場合の救済手段(売却不許可・売却許可取消)
詳しくはこちら|不動産競売における心理的瑕疵の救済(売却不許可・売却許可取消)
詳しくはこちら|競売;売却手続におけるイレギュラーなフロー;売却不許可、代金不納付、次順位買受申出、停止