【不動産取引の不正な広告や表示の規制(全体)】
1 不動産取引の広告や表示の規制全体(総論)
2 宅建業法による広告の規制(概要)
3 独占禁止法・景品表示法・条例による広告規制
4 不正行為一般を対象とする法規制
5 不動産業界の広告の自主規制(概要)
6 広告媒体の自主規制
1 不動産取引の広告や表示の規制全体(総論)
不動産の売買・賃貸については,仲介業者が成約を目標にして物件の紹介をします。この紹介が行き過ぎるケースもあります。
主に,ホームページやチラシでの不正な広告や表示が問題になります。また,個々のセールストークの内容が問題となることもあります。
そこで,不動産の取引に関する広告や表示を規制するルールはいくつものものがあります。
本記事では,不正な広告や表示を防止するための各種ルールの全体を説明します。
2 宅建業法による広告の規制(概要)
不動産の仲介業者を対象とする代表的な法律は宅建業法です。宅建業法に広告の規制の規定があります。
<宅建業法による広告の規制(概要)>
あ 宅建業法による広告規制
主な広告規制として次のような規定がある
ア 誇大・虚偽表示の禁止
※宅建業法32条
イ 広告開始時期の制限
※宅建業法33条
い ペナルティの種類
ア 監督処分
指示処分・業務停止処分・免許取消処分
イ 行政指導ウ 刑罰
詳しくはこちら|宅建業法による不動産広告の規制
3 独占禁止法・景品表示法・条例による広告規制
宅建業法以外の法令でも広告の規制が設定されています。広告や表示を主な規制対象とする法令についてまとめます。
<独占禁止法・景品表示法・条例による広告規制>
あ 独占禁止法
ア 基本事項
具体的内容は景品表示法に規定されている
イ ペナルティの種類
行為の差止
措置命令・指示処分
刑罰(措置命令違反につき)
い 景品表示法
ア 基本事項
独占禁止法の特別法という位置付けである
詳しくはこちら|景品表示法による不動産広告や表示の規制(全体)
告示としても具体的内容が示されている
詳しくはこちら|不動産のおとり広告・表示に関する景品表示法の告示
イ ペナルティの種類
行為の差止
措置命令・指示処分
刑罰(措置命令違反につき)
う 自治体による条例
ア 基本事項
条例による広告規制がある
※消費者保護基本法4条
イ ペナルティの種類
行為の差止
刑罰
4 不正行為一般を対象とする法規制
広告よりも広い不正な行為を対象とする法律もいくつかあります。広告や表示も,これらの法律に抵触することがあります。
<不正行為一般を対象とする法規制>
あ 不正競争防止法
ア 基本事項
マーケットの競争一般に関する規制
イ ペナルティの種類
行為の差止
損害賠償
刑罰
い 刑法
ア 具体例
特に悪質な広告は『だました』ということになる
→詐欺罪が成立する
※刑法246条
イ ペナルティの種類
刑罰
う 軽犯罪法
ア 基本事項
広告・セールスの内容によっては
軽犯罪法上に該当する罪名がいくつかある
イ ペナルティの種類
刑罰
5 不動産業界の広告の自主規制(概要)
以上の規制は公的なもの,つまり法令でした。法令以外にも,不動産流通業界の自主規制としての広告のルールがあります。
<不動産業界の広告の自主規制(概要)>
あ 代表例=表示規約
『不動産の表示に関する公正競争規約』のこと
※景品表示法10条
い 法的位置付け
対象者は不動産公正取引協議会の加盟業者に限られる
景品表示法の解釈基準としても機能する
※明石三郎ほか『詳解宅地建物取引業法』大成出版会p171
う ペナルティの種類
排除の警告
違約金
詳しくはこちら|不動産の公正競争規約(表示規制と景品規約)(全体)
6 広告媒体の自主規制
法令以外の広告の自主規制には,広告業界によるものもあります。
<広告媒体の自主規制>
あ 規定
ア 日本新聞協会
広告倫理綱領
新聞広告掲載基準
イ 日本雑誌広告協会
雑誌広告倫理綱領
雑誌広告掲載基準
い 審査機関
ア 日本広告審査機構(JARO)イ 財団法人新聞広告審査境界(首都圏)ウ 社団法人関西広告審査協会(近畿圏)