【著名人の氏名や画像・動画はパブリシティ権が認められる】
1 著名人の氏名や画像・動画は『パブリシティ権』として保護される
2 パブリシティ権侵害の判断は『顧客吸引力』がキーとなる
3 パブリシティ権侵害に対しては差止請求・損害賠償請求ができる
4 物・動物にはパブリシティ権は認められない
5 名誉毀損・プライバシー権侵害,不正競争防止法違反等は別問題
1 著名人の氏名や画像・動画は『パブリシティ権』として保護される
被写体によっては,パブリシティ権として法的に保護されることもあります。
その被写体自体が,販売用(商用)であるような場合です。
典型例は,『著名人の写真(肖像)』です。
これ自体が商品そのものです。
『承諾を得ていない者が撮影して,動画・画像を販売すること』から保護する必要があります。
このような権利を『パブリシティ権』と呼んでいます。
これは,著作権のように,具体的な法律・明文がある権利とは違います。
人格権の権利の一環として解釈上認められている権利です。
<パブリシティ権の内容>
著名人が氏名・肖像について有する顧客吸引力・経済的利益を排他的に支配する権利
※最高裁平成24年2月2日;ピンク・レディー事件
※東京地裁平成22年10月21日
※東京地裁昭和51年6月29日
2 パブリシティ権侵害の判断は『顧客吸引力』がキーとなる
パブリシティ権の侵害となるかどうか,つまり違法性の判断は判例で基準が立てられています。
<パブリシティ権侵害(違法性)判断基準>
あ 概括的基準
もっぱら氏名・肖像の有する顧客吸引力の利用を『目的』とする場合
い 『もっぱら』の判断基準
例えば肖像写真と記事が同一出版物に掲載されている場合
ア 写真の大きさ・取り扱われ方等イ 記事の内容等
アとイを比較検討する。
次の場合に『もっぱら』(顧客吸引力利用目的)と言える。
『記事は添え物で独立した意義を認め難い場合』
『記事と関連なく写真が大きく扱われていたりする場合
う 侵害に該当する類型
ア 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
→例;ブロマイド・グラビア写真
イ 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合
→例;キャラクター商品
ウ 肖像等を商品等の広告として使用する場合
※最高裁平成24年2月2日;ピンク・レディー事件
3 パブリシティ権侵害に対しては差止請求・損害賠償請求ができる
パブリシティ権侵害に対しては,差止請求と損害賠償請求という対抗策があります。
<パブリシティ権侵害に対する法的請求>
あ 差止請求
侵害する内容の写真が掲載された書籍の販売を差し止める
い 損害賠償請求
侵害により生じた損害について金銭で賠償する
損害賠償額の算定方法にはいくつかのバリエーションがあります。
詳しくはこちら|パブリシティ権侵害の損害賠償額の算定(3つの算定基準と慰謝料の判断)
4 物・動物にはパブリシティ権は認められない
物や動物についても,パブリシティ権を認める考え方もあります。
所有権や占有権の一環として認める解釈です。
しかし,現時点では,判例上,所有権・占有権に基づくパブリシティ権は否定されています。
<物・動物に対するパブリシティ権>
あ 結論
物・動物についてはパブリシティ権は認めない
い 判例における事例
『競走馬の名称等の無断利用行為』→違法性なし→差止・不法行為否定
※最高裁平成16年2月13日ギャロップレーサー上告事件
5 名誉毀損・プライバシー権侵害,不正競争防止法違反等は別問題
著名人の画像・動画,さらには物・動物の画像・動画の無断使用は『パブリシティ権』以外で法的な問題となることがあります。
<人物・物・動物の画像・動画の無断使用→パブリシティ権以外の問題>
あ 名誉毀損
詳しくはこちら|違法な表現行為|基本|損害賠償・差止・削除請求・謝罪広告・違法性阻却
詳しくはこちら|違法な表現行為×刑事責任|名誉棄損罪・侮辱罪・信用毀損罪|違法性阻却
い プライバシー権侵害
う 不正競争防止法・商標法違反
一定の名称や画像等の独占使用については,これらの法律で認められています。
無断使用が規制されています。
え 管理権侵害
店舗・展示場,動物園,植物園において,これらの施設管理権者が『撮影を禁止』していることがあります。
これに違反して撮影すると,撮影自体が管理権侵害となります。
別項目|店舗運営者は,店舗内の撮影を禁止できる
本記事では,パブリシティ権の内容やその侵害についての法的責任を説明しました。
実際には個別的な事情の主張と立証によって結果は大きく違ってきます。
実際にパブリシティ権に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所
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