【商標権|登録すればトレードマークが保護される】

1 トレードマークは『商標』として保護される
2 商標登録の手続
3 『商標権』の内容|専用権・実施権・『使用』の意味
4 『商標権侵害』の内容・法的責任|差止・損害賠償
5 商標の『類似』の判断基準
6 『商品・役務』の類似の判断基準
7 『商標権侵害』の法的責任|差止請求・損害賠償請求

1 トレードマークは『商標』として保護される

商品やサービスのシンボルとして『トレードマーク』などが使われます。
このような『マーク』は,一定の範囲で『商標権』として保護されます。

<『商標』とは>

あ 『商標』の定義

事業者が,自社の取り扱う商品・サービスを他者のものと区別するために使用するマーク(識別標識)
→いわゆる,ブランドの名称を示す文字・図形
※商標法2条1項

い 『商標権』としての保護の前提

『商標登録』が必要
特許庁への出願を経て商標登録がなされる

う 『登録商標』

商標登録を受けている商標のこと
商標法2条5項

<商標の具体例>

ア 文字イ 図形ウ 記号エ 立体的形状オ 以上の組み合わせ

いわゆる『トレードマーク』や『ネーミング』,『ロゴ』のことです。

2 商標登録の手続

『商標』は,『登録』によって初めて『権利』(商標権)となり,保護されることになります。

<商標登録の手続>

あ 特許庁への『出願』

い 審査

う 登録査定

え 登録料納付

お 商標登録簿い『設定』の登録

か 10年毎に『更新』登録申請

3 『商標権』の内容|専用権・実施権・『使用』の意味

『商標権』という権利の内容は商標法で規定されています。

<商標権の権利内容>

あ 専用権

独占的に商標を『使用』すること
※商標法25条1項

い 禁止権

同一や類似の商標の『使用』を禁止すること
※商標法37条

『商標の使用』についてもまとめておきます。

<商標の『使用』>

あ 『使用』の定義

商品・商品の包装に標章を付する行為など
※商標法2条3項

い 『使用』の典型例

ブランドの名称を示す文字や図形をハンドバッグや自動車に付ける行為

4 『商標権侵害』の内容・法的責任|差止・損害賠償

(1)『商標権侵害』の内容・範囲

次に,このような『権利』の保護,つまり権利侵害への対応,について説明します。
『侵害行為』に対しては『法的責任(追及)』が可能です。
典型例は『偽ブランド』についての差止や損害賠償請求です。

<商標権侵害の内容>

あ 基本型

商標権者以外が,指定商品・指定役務について登録商標を使用すること
→商標権侵害になる
※商標法25条

い 『類似』まで拡張

『商品・役務が同一or類似』かつ『商標が同一or類似』
→商標権侵害になる
※商標法37条1項

う 商標権侵害にならない場合

『商品・役務』『商標』のいずれかが『類似していない』場合
→他方が『同一or類似』でも侵害とならない
例外=『防護標章登録』における特殊な事情がある場合のみ
※商標法64条,67条1項

(2)『商標権侵害』の具体例

<商標権侵害の具体例>

あ 偽ブランド商品の販売
い 偽ブランド商品販売のための表示

例;店頭・ウェブサイト・スマホアプリ上などの表示

実務では『類似』の判断が非常に重要になります(後述)。

5 商標の『類似』の判断基準

『商標』自体が似ている,ということが問題になるケースは多いです。
要するに『たまたま似ただけ』なのか『真似した』のか,ということです。
理論的には判断がブレることも多く,最高裁が基準を立てています。

<商標の『類似』の判断基準>

あ 根本的な基準

商品・役務の『出所』につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決する

い 判断要素|商標
『外観』 視覚を通して観察される商標の形象・見た目
『称呼』 文字,図形等の構成から生じる『読み方,呼び方』
『観念』 文字,図形等の構成から生じる『意味』のこと・想起される考え
う 判断要素|商標以外

ア 商品の取引の実情イ 具体的な取引状況

え 『注意力』の基準

誤認混同を生じるか否かは『需要者の通常有する注意力』を基準にする
※最高裁昭和43年2月27日;氷山印事件(登録要件)
※最高裁平成4年9月22日;大森林事件(侵害)
※最高裁平成9年3月11日;小僧寿し事件(侵害)
※特許庁|商標審査基準|第10版

6 『商品・役務』の類似の判断基準

仮に『まったく同じ商標(ネーミング)』でも『違う商品・サービス』であれば商標権侵害にはなりません。
ここで,商品や役務の同一・類似の判断が重要になります。
特許庁が公表している基準を紹介します。
なお,これは『登録』の際に用いる基準です。

<『商品』の類似の判断基準>

次の事項を総合的に考慮する
ア 生産部門が一致するかどうかイ 販売部門が一致するかどうかウ 原材料及び品質が一致するかどうかエ 用途が一致するかどうかオ 需要者の範囲が一致するかどうかカ 完成品と部品との関係にあるかどうか ※特許庁|商標審査基準|第10版 第3−九−4条1項11号『11』

<『役務』の類似の判断基準>

次の事項を総合的に考慮する
ア 提供の手段・目的・場所が一致するかどうかイ 提供に関連する物品が一致するかどうかウ 需要者の範囲が一致するかどうかエ 業種が同じかどうかオ 当該役務に関する業務や事業者を規制する法律が同じかどうかカ 同一の事業者が提供するものであるかどうか ※特許庁|商標審査基準|第10版 第3−九−4条1項11号『12』

<『商品vs役務』の類似の判断基準>

次の事項を総合的に考慮する
ア 商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうかイ 商品と役務の用途が一致するかどうかウ 商品の販売場所と役務の提供場所が一致するかどうかエ 需要者の範囲が一致するかどうか ※特許庁|商標審査基準|第10版 第3−九−4条1項11号『13』

外部サイト|特許庁|商標審査基準|第10版

7 『商標権侵害』の法的責任|差止請求・損害賠償請求

『商標権侵害』に該当することになった場合,法的責任が生じます。
責任の内容をまとめます。

<商標権侵害の法的責任(請求)>

あ 差止請求

『侵害』状態を解消する=商標の使用をやめさせることです。

い 損害賠償請求

生じた『損害』を賠償する,というものです。

最近では,SNSなどの投稿として『商標権侵害』が生じるケースが増えています。
以上はあくまでも『商標権』としての保護,商標法のルールを説明したものです。
具体的な行為によっては,別の法的責任が生じることもあります。
主なものは『不正競争』としての規制があります。

条文

[商標法]
(定義等)
第二条  この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一  業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二  業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
2〜6(略)

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