【船上カジノ×賭博罪|法解釈|カジノクルーズ・リアルサービス】
1 カジノ×犯罪|賭博罪・賭博場開張図利罪
2 賭博罪|適用範囲
3 『属地主義』(旗国主義)の内容|まとめ
4 『日本国外』の内容|概要
5 船上カジノ×賭博罪|適法条件|まとめ
6 カジノ・クルーズへの言いがかり主張(仮説)|幇助犯・共謀共同正犯
7 カジノ・クルーズ×幇助犯・共謀共同正犯|否定的見解
1 カジノ×犯罪|賭博罪・賭博場開張図利罪
最近,日本でもカジノを解禁する,という計画が話題になっています。
カジノは諸外国で行なわれていて,税収・観光の促進,という素晴らしい効果を生んでいます。
『カジノ』と現在の法律との関係と,法改正のアイデアについて説明します。
まず,現在の刑法では,カジノを行うと,次のように犯罪が成立します。
<カジノ×犯罪|賭博罪・賭博場開張図利罪>
あ 『賭博』・解釈論
『偶然の支配』による財物の得喪
い 成立する犯罪
プレイヤー | (単純or常習)賭博罪 |
運営者 | 賭博場開張図利罪 |
『カジノ』では,ストレートに『現金』を賭けるので,当然『賭博罪』に該当するわけです。
詳しくはこちら|賭博罪の適用除外となる『一時娯楽物』の判断基準・具体例・判例
2 賭博罪|適用範囲
『カジノの実施場所』を工夫すると,刑法の適用範囲から外れます。
『刑法の適用範囲』についてのルールは多少複雑です。
賭博罪の適用範囲についてまとめます。
<賭博罪|適用範囲>
『賭博』に関しては『属地主義』が適用される
※刑法1条
3 『属地主義』(旗国主義)の内容|まとめ
『属地主義』の内容をまとめます。
<『属地主義』(旗国主義)の内容|まとめ>
あ 基本的事項
次の両方に該当しない場合
→『属地主義』の規定は適用されない
い 属地主義|判断要素
ア 『実行場所』が『日本国外』であるイ 『実行場所』が『日本国籍の船舶(航空機)』以外である
『カジノ・クルーズ』=『船上カジノ』は,適法に行える可能性があります。
重要なのは『日本国外』の内容です。
4 『日本国外』の内容|概要
刑法の適用範囲における『日本国外』の解釈論をまとめます。
<『日本国外』の内容|概要>
あ 『日本国外』×海
海のエリアでは『領海』以外は『日本国外』となる
い 『領海』
日本の陸地の海岸から12海里以上離れた海上
※12海里=22.224キロメートル
以上の『刑法の適用範囲』の基本的事項は別に説明しています。
詳しくはこちら|刑法の適用範囲|準拠法|条例の適用範囲→属地主義が原則
5 船上カジノ×賭博罪|適法条件|まとめ
賭博罪の適用範囲は以上のようにちょっと複雑です。
船上カジノが適法に遂行できる条件の結論をまとめます。
<船上カジノ×賭博罪|適法条件|まとめ>
次の両方に該当する場合
→適法となる
ア 日本以外の船籍であるイ 接続水域・排他的経済水域(EEZ)・公海のいずれかである
実際に運営・就航が行なわれている『カジノクルーズ』もあります。
外部サイト|PRINCESS CRUISES|株式会社カーニバル・ジャパン
6 カジノ・クルーズへの言いがかり主張(仮説)|幇助犯・共謀共同正犯
さらに,理論的な思考実験を進めます。
『カジノの実施』は日本国外,ですが,『準備行為』は日本の港など,『日本国内』でも行なわれている,と仮定します。
例えば,カジノ実施に必要な機材の積み込みです。
すると,次のような仮説が成り立ちます。
<カジノ・クルーズへの言いがかり主張(仮説)>
あ 賭博罪・賭博場開張図利罪の『幇助犯』
『賭博罪の実行を容易にした(サポートした)』
い 賭博場開張図利罪の『共謀共同正犯』
『港での準備行為も,『賭博場開設』の行為そのものである』
詳しくはこちら|犯罪の手助け,そそのかしだけでも,幇助犯,教唆犯が成立する
しかし,このような主張(仮説)は,認められる理論ではないと思われます。
次に説明します。
7 カジノ・クルーズ×幇助犯・共謀共同正犯|否定的見解
『幇助犯』は,あくまでも『正犯』が成立することが前提です(従犯従属性)。
これに準じた考え方で,『共謀共同正犯』も合理性を欠くでしょう。
要するに,このような『犯罪認定を拡げる方向の解釈』は,国民・企業の行動を過剰に制限するため人権侵害に該当するのです。
特に刑事法では『拡大解釈』が禁止されています。
『幇助犯』や『共謀共同正犯』という主張は認められる可能性は低いでしょう。