【検索エンジン×プライバシー|検索結果・サジェストワード・削除リクエスト】
1 検索結果・サイト内容×プライバシー|事案
2 検索結果・サイト内容×プライバシー|裁判所の判断
3 検索結果の表示×プライバシー|事案
4 検索結果の表示×プライバシー|裁判所の判断
5 画像検索・検索結果×プライバシー|海外編
6 Googleサジェストワード×プライバシー
7 『検索結果』『サジェストワード』の適法化|削除リクエスト
8 『削除リクエスト・スパイラル』のリスク
1 検索結果・サイト内容×プライバシー|事案
Googleの検索エンジンは非常に有用で,非常に高い頻度で利用されています。
好ましくない『検索結果』が表示されて困る,というケースもとても多いです。
代表例は『違法な記載を含むサイト』が検索結果として表示されるものです。
削除請求が認められる基準を示した判例を紹介します。
<検索結果・サイト内容×プライバシー|事案>
あ 検索結果
個人Xの氏名で検索を行った
→掲示板のスレッドが検索結果として表示された
い リンク先の掲示板の内容
Xの名誉を毀損する複数の虚偽の書き込みがあった
う Xの主張
容易に掲示板に到達する
→『その内容を知ることができる状態』が継続している
2 検索結果・サイト内容×プライバシー|裁判所の判断
上記事案について裁判所の判断をまとめます。
<検索結果・サイト内容×プライバシー|裁判所の判断>
あ 違法性判断基準
次のいずれにも該当する場合
→違法性が認められる
ア Googleがリンク先サイトの違法性を認識することができたイ それにも関わらず放置している
い 事実認定|Googleの関与の程度
Googleは次のいずれにも該当しない
ア 違法な表示を行ったイ 違法な表現のあるサイトの運営を行った
う 事実認定|リンク先サイトの内容
名誉を毀損する書き込みは15〜30%程度である
→分量・割合が少ない
え 裁判所の判断|結論
違法ではない
→削除請求は認めない
※東京地裁平成22年2月18日
3 検索結果の表示×プライバシー|事案
Googleの『検索結果の表示自体』がプライバシーとの抵触を生じるケースもあります。
<検索結果としての表示自体×プライバシー|事案>
あ 検索結果|概要
個人Xの氏名で検索を行った
→Xが犯罪に関係しているかのような表示がなされた
=『犯罪連想表示』
い 検索結果|表示内容
次の項目の中に『犯罪連想表示』が含まれていた
ア タイトルイ スニペット=要約文
う 特殊性
検索結果だけで『犯罪連想表示』を閲覧できる
=リンク先のサイトを閲覧しない人も閲覧できる
4 検索結果の表示×プライバシー|裁判所の判断
上記事案について,裁判所の判断をまとめます。
<検索結果の表示×プライバシー|裁判所の判断>
あ 前提=表示の違法性
検索結果の表示の一部は人格権侵害に該当する
い 裁判所の評価
ア 検索結果の削除義務の負担の大きさ
Googleのシステム上,特定のURLを表示しない設定が可能である
→削除義務を課してもGoogleに不当な不利益とは言えない
イ 検索サービス利用者の利益
『特定人の人格権を侵害するサイトを検索できること』
→検索サービス利用者の正当な利益には含まれない
う 裁判所の判断|結論
『検索結果からの削除請求』を認めた
え 『忘れられる権利』
『忘れられる権利』の趣旨が示された
→現在では『削除権』と位置付ける見解が有力である
※東京地裁平成26年10月9日
※『月報司法書士2015年5月』日本司法書士会連合会p13〜
『犯罪』という事実の表示・表現の保護が問題となっているのです。
表現よりも『過去の犯罪からの更生』が重視される傾向があるのです。
詳しくはこちら|プライバシー権×前科|基本|忘れられる権利|報道以外
5 画像検索・検索結果×プライバシー|海外編
Googleの検索は『通常の文字=テキスト』だけではありません。
検索結果が『画像』という設定(サービス)もあります。
これについて,海外で法的責任が判断されたケースを紹介します。
<画像検索・検索結果×プライバシー|海外編>
あ 『公表』の態様・内容
ア 具体的態様
Googleの『画像検索結果』としての表示→『公表』
イ 公表(表示)した内容
原告(オーストラリア人)と全く無関係な『犯罪組織構成員の写真』
い 裁判所の判断
違法性を認めた
※オーストラリア・ビクトリア州最高裁判所2012年10月31日;報道内容より
6 Googleサジェストワード×プライバシー
Googleの検索サービスは高度に発展しています。
『サジェストワード』という便利な機能が稼働しています。
これについてもプライバシーとの抵触が問題にあるケースが生じています。
<Googleサジェストワード×プライバシー>
あ 『公表』の態様
ア 具体的態様
検索後を入力すると『候補としての単語』が複数表示される(サジェストワード)
イ 公表(表示)した内容
犯罪に関係する内容(単語)
い 裁判所の判断
ア 結論
名誉が毀損されたとは言えない
イ 理由
表示されるのはサジェストの『単語だけ』→不利益は小さい
対象者に『不利益』(ネガティブな印象)はあるが,『検索するユーザーの利益』の方が大きい
う 他の判例
本判決の第1審を含めて,地裁判決としては見解が分かれている
第1審=東京地裁平成26年10月9日
※東京高裁平成26年1月15日;報道
7 『検索結果』『サジェストワード』の適法化|削除リクエスト
以上のように,検索サービスは便利な反面,プライバシーとの抵触が問題になりがちです。
このような問題については,現在ではGoogle側の対応で『適法化』がなされています。
<『検索結果』『サジェストワード』の適法化|削除リクエスト>
現在では『削除リクエスト』窓口が設置されている
↓
『侵害の程度が小さい』
↓
適法と判断される方向性
8 『削除リクエスト・スパイラル』のリスク
『削除リクエスト』は適法化に有用です(前記)。
一方で『違法/適法』とは別の問題・心配も指摘されています。
<『削除リクエスト・スパイラル』のリスク>
『不自然にネガティブサジェストワードが消えた』
→『削除リクエストを行った』という投稿が拡散(イマココ)
→サジェストワードに『削除リクエスト』が登録される
→『削除リクエスト』という単語を『削除リクエスト』する必要がある