【事業上の動産・債権担保(ABL)|対象物・設定方法】

1 動産,債権を担保にする方法(ABL)が整備されている
2 動産,債権担保(ABL)の登記ができるようになった
3 動産,債権担保の対象は動産,債権を広く含む

1 動産,債権を担保にする方法(ABL)が整備されている

一般的・伝統的な金融機関による融資は,不動産の価値を引き当てにする方式,つまり,(根)抵当権設定を前提とするものでした。
この方式では,次のような,事業上価値があるもの,を担保にすることができませんでした。

<不動産以外の事業上の価値があるもの>

優れた技術
機械設備
在庫商品
売掛金

以前は公示方法(登記)がなかったので,担保とすることは事実上不可能でした。
しかし,現在では,このような収益力を引き当てとする担保制度が法改正で可能となっています。
具体的には,動産,債権を担保とする制度の整備です。
動産,債権担保融資のことをAsset Based Lendingと呼んでいます。
略して『ABL』と称することもあります。

2 動産,債権担保(ABL)の登記ができるようになった

<商品や債権を担保とする登記>

動産,債権の譲渡担保を登記する

従前は,動産の対抗要件は引渡,債権の対抗要件は原則として債務者への通知とされていました(民法178条,467条)。
しかし,これでは担保としての保全を確実するには不十分でした。
一覧性に欠け,第三者にとって認識しにくいからです。
そこで,法改正により,それぞれ登記することが可能となりました。
これで情報が整理され,また,第三者が一見して分かるようになりました。

3 動産,債権担保の対象は動産,債権を広く含む

ABLの担保となるものは,各種の収益源,将来入金予定の売掛金など,幅広いです。

<ABLの担保の例>

・肉牛として将来販売予定の子牛
・野菜として将来販売予定の(野菜の)苗
・将来納品予定の在庫製品
・工場内の特定の機械設備
・将来入金予定の売掛金債権

条文

[民法]
(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
第百七十八条  動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

(指名債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条  指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2  前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

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