【投稿サイト・SNSの利用規約|広い『ライセンス』付与|非公開グループ情報の漏洩】
1 一般的投稿サイト・SNSで共通しているルール・全体像
2 YouTube|利用規約
3 YouTube|Content_IDシステム
4 ニコニコ動画|投稿規約
5 Facebook|利用規約
6 twitter|サービス利用規約
7 twitter|公式/非公式リツイート・パクツイの違い
8 SNS|『非公開』グループの情報を『漏洩』→プライバシー権侵害など
9 ブログの『コメント欄』|ブログ主は『削除義務』を負うこともある
1 一般的投稿サイト・SNSで共通しているルール・全体像
最近はインターネット上に多くの投稿サイトやSNS,アプリが存在します。
多くのユーザーが文章や写真・イラスト・動画を『公表』することが爆発的に普及しています。
この点『創作した人の権利(著作権)』はどのように守られているのか,について説明します。
具体的には,各サイト・SNSやアプリのサービスの『規約』で権利処理が規定されています。
まずは,代表的なサイトやサービスで共通している規約の内容をまとめます。
<一般的なサイト・サービスの利用規約|創作者の権利処理>
あ 権利(著作権等)自体の所在(譲渡)
権利(著作権等)の『譲渡』はない
→『著作物』の要件を満たす限り,創作者は著作権で保護される
い 使用許諾(ライセンス)
ア 投稿したコンテンツの『使用許諾』は広範に認められるイ 投稿したコンテンツを『削除』すれば『使用許諾』は合理的期間経過後に終了する
う 『公表』することの保護
運営会社は『表示を確保する義務』はない
ここで,使用許諾(ライセンス)の規約によって,具体的にどのようなことが可能となるのか,についてまとめます。
<利用規約による具体的な行為の可否>
創作者以外による行為 | 可能かどうか |
運営会社が『まとめ』を作る | ◯ |
別のユーザーが転載する(リツイート等) | ◯ |
別のユーザーが『自分の創作として』転載 | ☓ |
運営会社によるサービス停止・アカウント停止(削除)・投稿コンテンツ削除 | ◯ |
以上は一般的な規約を元に典型的な事例を想定したものです。
具体的な実際の規約内容や個別的事情によって,違う結論となることもあります。
次に,代表的なサイト・サービス(SNS)について,規約の概要を紹介します。
2 YouTube|利用規約
<YouTube|利用規約|コミュニティガイドライン>
・権利(著作権等)の『譲渡』はない
・投稿した動画の特許権・商標権・企業秘密・著作権・その他の財産権についてのライセンスをYouTubeに提供する
・ユーザーがYouTubeサービスから自己の動画を削除or消去した→合理的な期間内に終了する
※利用規約コミュニティガイドライン『6−B,C』
3 YouTube|Content_IDシステム
YouTubeには著作権に関する独特のルールがあります。
<『著作権者』の事前準備>
あ 動画登録
著作権者が事前にYouTubeに動画を登録する
い 『登録済動画』との照合
一般ユーザーが投稿した動画が『登録済動画』と照合される
→マッチした場合,著作権者は対応を選択できる
<著作権者の対応選択肢>
あ 音声ミュート
音声をミュートする(音を消す)
い 再生ブロック
動画全体のブロック(閲覧できなくする)
う 収益化
動画に広告を表示させ,その広告費を著作権者が得る
え 情報取得
対象動画の再生に関する統計情報を追跡する
一般的には,『無断での投稿』=違法な投稿,があった場合はストレートに『削除』するのが普通です。
この点,敢えて別の選択肢も用意してあるのです。
しかも,『違法な投稿』を想定して,事前に登録しておく,という仕組みも素晴らしいです。
なお,この仕組みがあるからと言って,『無断での著作物アップロード』が『適法になる』というわけではありません。
外部サイト|YouTube|Content_IDの仕組み
4 ニコニコ動画|投稿規約
<ニコニコ動画|投稿規約>
・権利(著作権等)の『譲渡』はない
・投稿した動画の世界的,非独占的,無償,サブライセンス可能かつ譲渡可能な自由に利用できるライセンスをニコニコ動画(運営会社・その子会社)に付与する
・ユーザーが動画の削除を行った→合理的な期間の経過により終了する
※ニコニコ動画投稿規約『2』
5 Facebook|利用規約
<Facebook|利用規約>
・権利(著作権等)の『譲渡』はない
・写真や動画の投稿者は非限定的,譲渡可能,サブライセンス可能,使用料なしの,全世界を対象としたライセンスをFacebookに付与する
・ユーザーがコンテンツを削除したときにライセンスは失効する
※Facebook利用規約『2−1,2』
6 twitter|サービス利用規約
<twitter|サービス利用規約>
・権利(著作権等)の『譲渡』はない
・ユーザーはコンテンツを使用,コピー,複製,処理,改変,修正,公表,送信,表示および配布するための,世界的な非排他的ライセンス(サブライセンスを含む)twitter(運営会社)に対して無償で許諾する
※twitterサービス利用規約『5』
7 twitter|公式/非公式リツイート・パクツイの違い
以上のtwitterの規約から,次のような結論が出てきます。
<twitter利用上の注意|公式/非公式リツイート・パクツイ>
あ 公式・非公式リツイート
twitter運営会社への許諾の範囲内に含まれる
『サブライセンス』という考え方もあります
い パクツイ
『パクリツイート』の略
『RT』などを表記しないで他のユーザーの投稿を転載すること
あたかも『自分のオリジナル』というような投稿となる
↓
『許諾の範囲外』と判定される可能性が高い
↓
複製権・公衆送信権・氏名表示権の侵害
※『著作物』に該当することが前提
投稿したオリジナル創作者としては,リツイートは仕方ないがパクツイまでは許せない,というようなバランスです。
ただし,オリジナルが『文章だけ』の場合,短いために『創作性なし』→『著作物』ではない,ということも多いです。
『著作物』だとしても『著作権侵害による損害』が小さいのが通常です。
詳しくはこちら|『著作物』に該当しない典型例(全体)
なお,不正競争防止法等の『著作権法』以外の法規に抵触する可能性もあります。
第三者のコンテンツを流用することに関する適法性については別にまとめてあります。
詳しくはこちら|外部サイト情報表示×適法性|キュレーションアプリ・バイラルメディア・まとめサイト
8 SNS|『非公開』グループの情報を『漏洩』→プライバシー権侵害など
(1)非公開情報の『漏洩』は『著作権』以外の法律問題も生じる
以上は一般的なサイト・SNSを利用する上での『著作権』の問題の説明でした。
この点,SNSやLINEなどのメッセンジャーでは『非公開』のコミュニケーションもあります。
見られるメンバーが限定されている『グループ』や『トーク』と呼ばれるものです。
このような『非公開グループ内のコミュニケーション』では『情報漏洩』の問題が生じます。
『非公開情報』の『漏洩』に関する法律問題をまとめます。
(2)非公開情報漏洩×著作権
『著作権』で保護されるのは,あくまでも『創作的表現』です。
『情報』そのものの『漏洩』は『著作権』の保護の対象外です。
詳しくはこちら|アイデア・実用品の『著作物』該当性
(3)不正競争防止法
『情報の漏洩』が不正競争防止法違反となることがあります。
漏洩した情報が『営業秘密』であった場合です。
<『営業秘密』の定義>
次の3要件を満たすもの
あ 秘密管理性
『秘密として管理されている』
い 有用性
『生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報』
う 非公知
『公然と知られていないもの』
※不正競争防止法第2条第4項
実際によく問題になるのは『秘密管理性』の判断です。
<『秘密管理性』の判断|方向性>
あ 公開範囲=『友人まで公開』の場合
ア 原則
それだけで『秘密管理性』は認められない
イ 例外;少人数の場合
『友達』の数自体が1〜2名程度→『秘密管理性』が認められる
い 公開範囲=『友人の友人まで公開』の場合
通常は『秘密管理性』は認められない
(4)プライバシー権侵害/名誉毀損
<プライバシー権侵害の判断基準>
あ プライバシー情報
次のすべてを満たす情報
ア 私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれがあるイ 一般人が公開を欲しないウ 一般の人々にまだ知られていない
い 公開・公表
う 不快・不安の発生
公開・公表の結果,被害者本人に実際に不快・不安の感覚が生じた
<『名誉毀損』の意義>
社会的評価の低下(を生じる言動)
プライバシー権侵害・名誉毀損ともに『少人数限定』の情報を『大多数に拡散』した場合に『権利侵害』が認められる可能性が高まります。
少人数グループ内でのトークをtwitterにコピペで投稿したような場合が典型です。
詳しくはこちら|プライバシー権のまとめ|判例の基準|定義の発展
詳しくはこちら|違法な表現行為|基本|損害賠償・差止・削除請求・謝罪広告・違法性阻却
(5)画像・動画→肖像権・著作権
<『肖像権』の内容>
自己の容貌を撮影されない(永続的な記録にされない)人格的利益
人物の写真や映像を『公表した』という場合は,肖像権侵害,となることがあります。
『非公開=特定メンバーの範囲内限定』の人物写真を,大多数に拡散した,という場合もその一例です。
同様に『非公開前提で提供された写真・映像』は創作者の著作権で保護されています。
これを『公表』=大多数に拡散した,という場合は著作権侵害(複製権・公衆送信権)となります。
9 ブログの『コメント欄』|ブログ主は『削除義務』を負うこともある
(1)違法なコメントによる『ブログ主』の責任
ブログやSNSによっては,特定の記事に付随して『他のユーザーがコメントを投稿できる』機能があります。
『他のユーザー』が『コメント』としてプライバシー権侵害や名誉毀損となる投稿をする場合があります。
この場合,投稿したユーザーは当然として『ブログ本体のユーザー(ブログ主)』も責任を負うことがあります。
ブログ主はその『サイト』のコメントの削除権限がある場合,一種の『管理人』という立場と言えます。
<ブログ主・管理人の『プロバイダ責任制限法』上の立場・責任>
あ ブログ主の法的な立場
『特定電気通信役務提供者』に該当する(2条3号)
い 違法な『コメント』があった場合の手続・責任(3条)
ア 知らなかったので削除しなかった→責任なし(1項1号)イ 権利侵害を認識して削除した→責任なし(2項1号)ウ 削除要請を受けた+同意の有無の照会+回答なし→削除した→責任なし(2項2号)エ (反対解釈)これらに該当しない場合→ブログ主が責任を負うこともあり得る
以上の責任は『削除権限』が前提です。
例えば『2ちゃんねる』の『スレ立て人』は,当該スレの他のユーザーの投稿を削除する権限がありません。
上記の責任の対象外です。
つまり,他のユーザーの違法な投稿に関する責任を負うことはありません。
(2)削除したことによる違法性・損害
『他のユーザーのコメント』は,もともと,管理人に削除される可能性があることが当然の前提です。
また,コメントの投稿者には『書き込む権利』が認められるわけではありません。
そこで,『コメントの削除』については,原則的に違法性がありません。
損害がない,と言うこともできます。
コメントが『著作物』に当たるかどうか,ということは関係ありません。