【監禁罪|典型例・衣類奪った→羞恥心による脱出困難】
1 監禁罪|基本事項
2 監禁罪|監禁行為の具体例
3 監禁罪|無形的方法による監禁|衣類奪った→羞恥心
1 監禁罪|基本事項
<監禁罪;刑法220条>
あ 監禁の意義
一定の場所からの脱出を不可能or著しく困難にして,移動の自由を奪うこと
い 法定刑
懲役3か月〜7年
刑法220条は『逮捕』と『監禁』についての規定です。
『監禁』は『逮捕』よりも時間的に長めの『身体の拘束』を対象とするものです。
2 監禁罪|監禁行為の具体例
具体的な『脱出を不可能or著しく困難にする』行為には多くのバリエーションがあります。
<監禁行為の具体例>
あ 部屋に鍵を掛けて出られなくした
典型例である。
い 沖合の漁船
深夜の海の沖合に停泊中の漁船の一区画に女性を閉じこめた
→ある程度の距離を泳がない限り脱出できない
※最高裁昭和24年12月20日
う 走行する自動車
被害者を脅迫して自動車に乗せて,被害者が『降りたい』と告げたが降ろさなかった
→怪我覚悟でない限り脱出できない
※最高裁昭和30年9月29日
え 走行するバイク
強姦の目的を隠して女性をバイクの荷台に乗せて疾走した
→女性がその目的に気付いて飛び降りた
→現実には『脱出』できたが,一定時間『脱出不可能』の状態にあった
※最高裁昭和38年4月18日
お カミソリで『切るぞ』脅迫
カミソリを女性被害者に突きつけて『お前の顔を切る』と脅迫した
→被害者女性が畏怖し,部屋から出られなくなった
→『恐怖』の程度として脱出を断念させるレベルに達している
東京高判昭40・6・25
3 監禁罪|無形的方法による監禁|衣類奪った→羞恥心
以上の実例は,判例で『監禁』であると肯定されたものです。
次に,判例がなく,学説上,見解が対立している,曖昧なものを紹介します。
<『無形的方法による監禁』|羞恥心による監禁>
あ 事例
入浴中の女性の衣服を持ち去った→羞恥心により風呂場から出られないようにした
※これは典型例であり,風呂場以外の場所でも同様である。
い 学説の分布(刑法の学者)
肯定説 | 団藤・大塚・大谷・川端・井田・大コンメンタール第11版;青林書院 |
否定説 | 平野・西田・伊東・前田・高橋 |
この点,被害者=男性,という場合についてはさらに曖昧になります。
『隠す必要性・部位の数』が少ない→脱出を断念する程度が(女性の場合よりも)低い,という指摘もあります。
一方で,男性でも社会的信用失墜・社会的な立場の喪失,など,裸体さらしのダメージはとても大きいと言えます。
このことから,衣類を失った男性でも,『脱出を断念する』→『監禁肯定』という考え方も有力です。