【公的情報の保存期間|戸籍・住民票・登記・固定資産評価証明書・裁判記録・税務申告書】

1 公的情報の保存期間
2 民事裁判に関する資料の保存期間
3 刑事裁判に関する資料の保存期間
4 課税に関する資料|確定申告書など×税務署・国税庁の保存期間
5 通信記録の保管期間・相場|民間企業
6 ブロックチェーン方式→『記録の永久保管』が望ましい

1 公的情報の保存期間

訴訟・交渉などの準備段階で『公的情報』を取得することがあります。
『保存期間』が経過しているために既に廃棄済,ということも生じます。
ここでは,『保存期間』をまとめます。

<情報の保存期間>

情報 最終形(※1) 保存期間 根拠
戸籍 除籍簿 150年(※10) 戸籍法施行規則5条4項
住民票・戸籍の附票 除票 5年 住民基本台帳法施行令34条1項
土地の登記 閉鎖登記簿 50年 不動産登記規則28条4号
建物の登記 閉鎖登記簿 30年 不動産登記規則28条5号
登記の附属書類 30年 不動産登記規則28条10号
土地所在図・地積測量図・建物図面・各階平面図 (閉鎖) 30年(※2) 不動産登記規則28条13号
固定資産課税台帳(評価証明書) 5年〜永久(※3) 参考;地方税法18条
金融機関の取引履歴 7年(※4) 本人確認法5条2項

<補足>

あ 『最終形』(前記※1

現在は物理的な『簿』ではなく『サーバー上の情報』ということが多い
ここでは以前のレガシーな名称を用いた

い 除籍簿,改製原戸籍簿の保存期間(前記※10

以前の規則では保存期間は80年(種類によっては100年)と定められていた
平成22年の戸籍法施行規則改正により現在の内容(150年)に変更され,平成22年6月1日に施行された
そのため,昭和5年5月以前に除籍・改製事由に該当しているものは既に廃棄されている可能性がある

う 地積測量図・建物図面など(前記※2

閉鎖されていないものの保存期間は永久である
※不動産登記規則28条13号
詳しくはこちら|地積測量図の意味と境界の特定における有用性(時期・内容による精度の違い)

え 固定資産課税台帳(評価証明書)の保存期間(前記※3

『保存期間』についての規定がない
市町村によって独自に運用している
固定資産税の徴収権の消滅時効は5年間である(地方税法18条)
そのため最低限でも5年は保管する運用がなされている

お 金融機関の取引履歴保存期間(前記※4

これは法律上の最低限である
実際には少なくとも10年間は保管していることが多い
『過払金』などの一般的な債権の消滅時効に合わせる趣旨である

詳しくはこちら|不動産登記制度の意義,保管期間

2 民事裁判に関する資料の保存期間

民事訴訟・家事調停・審判に関する資料の保存期間をまとめます。
参考として依頼した弁護士が書類を保管する義務の期間も含めておきます。

<民事裁判の資料の保存期間>

対象資料 保存期間
通常訴訟事件の判決原本 50年(※5)
民事保全処分の決定書原本 10年
和解調書 30年
その他の事件記録 5年(※6)
(参考)弁護士の書類保管義務 3年(※7)
(参考)弁護士の『本人確認・指定取引記録』保管義務 5年(※8)
(参考)司法書士の『本人確認記録』保管義務 10年(※9)

※事件記録等保存規程(最高裁判所規程第8号)
※事務総長依命通達『事件記録等保存規程の運用について』
※7 民法171条
※8 日弁連;依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程5条1項
詳しくはこちら|弁護士|依頼者本人確認義務|記録の作成・保存,スタッフの教育
※9 東京司法書士会;司法書士会会則91条の2第2項

<判決原本の保存期間延長(前記※5)>

保存期間=50年の満了後も,移管を考慮して廃棄を留保する取扱いとされている

<『特別保存』制度(前記※6)>

あ 対象となる記録

『史料的価値』が高い事件記録など
典型例;重要な憲法判断があった事件の記録

い 保存期間の延長

個別的判断により保存期間を延長する
事実上の『永久保存』となっている
※事件記録等保存規程9条2項参照

<参考情報>

最高裁判所事務総局『裁判所における文書管理』平成20年9月25日

3 刑事裁判に関する資料の保存期間

刑事裁判に関する資料の保存期間をまとめます。

<刑事裁判の資料の保存期間|主な有罪・確定判決>

あ 裁判書(判決書)
判決内容 保存期間
死刑・無期懲役or禁錮 100年
有期懲役or禁錮 50年
罰金・拘留・科料・刑の免除 20年
い 裁判書以外の保管記録  
判決内容 保存期間
死刑・無期懲役or禁錮 50年
懲役or禁錮20年を超える 30年
懲役or禁錮10年以上20年以下 20年
懲役or禁錮5年以上10年未満 10年
懲役or禁錮5年未満 5年
罰金・拘留・科料 3年

※刑事確定訴訟記録法2条2項,別表2

4 課税に関する資料|確定申告書など×税務署・国税庁の保存期間

過去の『確定申告書』が重要な資料・証拠になるケースもあります。
提出済の資料が税務署・国税庁で保管される期間についてまとめます。

<課税関係×保存対象となる文書>

内国税の賦課及び徴収の実施に関する事項
→決裁文書・重要な経緯が記録された文書
例;納税申告書

<課税関係文書×保存期間>

あ 内国税の課税一般;1番

国税の更正・決定等の処理を行うことができる期間

い 相続税;2番

次のいずれかの長い期間
ア 国税の更正・決定等の処理を行うことができる期間イ 相続が開始する日に係る特定日以後10年

う 贈与税の特例適用;3番

例;配偶者控除
30年

え 贈与税の相続時精算課税制度の適用;6番

すべての特定贈与者の相続が開始する日に係る特定日以後7年
※国税庁行政文書管理規則13条1項,別表第1『23』

外部サイト|国税庁|国税庁行政文書管理規則

5 通信記録の保管期間・相場|民間企業

『通信記録』が立証の中で重要な証拠となることは多いです。
プロバイダや通信キャリアーが通信記録を保有しています。
通信記録は『保存期間切れ』となりやすいです。
一般的な保存期間の相場については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|発信者情報開示請求|具体的手続|開示・消去禁止×仮処分・本訴

6 ブロックチェーン方式→『記録の永久保管』が望ましい

以上のような『保存期間』という制約は古い・レガシーテクノロジーの限界です。
既に世界から取り残されつつあります。
今は,ブロックチェーンのプロトコルが普及し始めています。
『特定のサーバー・特定の管理者』から,『非中央集権管理』のブロックチェーンテクノロジーに移っていきます。
既得権益による抵抗=ネオラッダイト,があることは当然の前提です。
テクノロジーの発展でなるはやで多くの方がメリットを受けられることが望まれます。
詳しくはこちら|ブロックチェーン・テクノロジーによる既存システムのリプレイス

本記事では,いろいろな公的記録の保存期間について説明しました。
実際には,立証のために役立つ資料・記録には幅広いものがあります。
実際に立証(証拠・資料)を集める状況にある方や資料収集に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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