【道交法・道路運送車両法の定義|自動車・原付・電動自転車・車いす・歩行補助車】
1 道交法の『自動車』『原動機付自転車』などの移動物体の分類・定義
2 道交法の『自動車』『原動機付自転車』などのチェックフローシート|総まとめ
3 道交法の『自動車』の定義|基本部分の詳細説明
4 道交法|原動機付自転車の『総排気量・定格出力』の上限
5 道交法|特殊なマシーンの定義|電動アシスト自転車の規格
6 道交法|特殊なマシーンの定義|電動車いす
7 道交法|特殊なマシーンの定義|歩行補助車の規格
8 道交法の『自動車・原動機付自転車』→運転免許・自賠責・所定の装備が必要
9 道路運送車両法の『自動車・原動機付自転車』の定義
10 道路運送車両法の『自動車・原動機付自転車』→車検・登録などが必要
1 道交法の『自動車』『原動機付自転車』などの移動物体の分類・定義
道交法では『自動車』などの定義が決められています。
まず,大きなグルーピング・総称として『車両』という定義があります。
<道交法の『車両』の定義;2条1項8号>
自動車・原動機付自転車・軽車両・トロリーバス
ところで,この定義・分類のうち,重要なのは『免許が必要になる』ものの範囲です。
<道交法の『車両』のうち『要免許』マシーン>
自動車・原動機付自転車
道交法では『自動車』『原動機付自転車』を始めとして多くの『種類』が登場します。
これらの『種類』は結構入り組んで複雑になっています。
以下,整理してまとめてみます。
2 道交法の『自動車』『原動機付自転車』などのチェックフローシート|総まとめ
最初に『総まとめ』として完成させた『チェックフローシート』を掲載します。
細かい規定の説明はその後しっかりとまとめます。
<総まとめ|道交法の各種『車両』の該当性チェックフローシート>
あ 原動機があるか
No→軽車両・自転車
Yesは次へ
↓
い 人力との併用か
Yes→アシストの程度が一定規格内→『自転車(電動アシスト自転車)』
Noは次へ
↓
う 『車いす』か
Yes→身障者用+一定規格範囲内→『歩行者(電動車いす)』
Noは次へ
↓
え 『歩行補助車』の規格範囲内か
Yes→『歩行者(原動機を用いる歩行補助車)』
Noは次へ
↓
※ここから先は『要免許ゾーン』
お 『原付』の規格範囲内か
Yes→『原付』
Noは次へ
↓
か 『自動車』に該当する
なお『自動車』の内訳(種類)として7種類ある
3 道交法の『自動車』の定義|基本部分の詳細説明
道交法2条1項に『車両』全体の定義が規定されています。
ここだけでも分かりにくいですが,次にまとめます。
(1)『車両』の種類ごとの定義
<道交法の『車両』の内容・分類(定義)|2条1項>
あ 自動車;9号
ア 定義
原動機を用い,かつ,レール又は架線によらないで運転する車
《除外されるマシン》
原動機付自転車・自転車・身体障害者用の車いす・歩行補助車等
イ 『自動車』をさらに分類する『種類』;3条
大型自動車・中型自動車・普通自動車・大型特殊自動車・大型自動二輪車・普通自動二輪車・小型特殊自動車
い 原動機付自転車;10号
内閣府令で定める大きさ以下の総排気量又は定格出力を有する原動機を用い,かつ,レール又は架線によらないで運転する車
《除外されるマシン》
自転車・身体障害者用の車いす・歩行補助車等
う 軽車両;11号
ア 軽車両の1つ|自転車;11号の2
ペダル又はハンド・クランクを用い,かつ,『人の力』により運転する二輪以上の車
一定範囲の『原動機のサポート』は『自転車』とする=『自動車・原付』にはならない(※3)
《除外されるマシン》
レールにより運転する車
身体障害者用の車いす・歩行補助車等・小児用の車
イ 軽車両の1つ|自転車以外の軽車両;11条
荷車その他人若しくは動物の力により,又は他の車両に牽引され,かつ,レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む)
《除外されるマシン》
身体障害者用の車いす・歩行補助車等・小児用の車
え トロリーバス;12号
架線から供給される電力により,かつ,レールによらないで運転する車
(2)『車両』に該当しない種類
<道交法の『車両』に該当しないマシン>
あ 路面電車;2条1項13号
レールにより運転する車
い 身体障害者用の車いす;2条1項11号の3
身体の障害により歩行が困難な者の移動の用に供するための車いす
原動機を用いるものにあつては,内閣府令で定める基準に該当するものに限る
→『歩行者』とする;2条3項1号
う 歩行補助車等又は小児用の車を通行させている者
→『歩行者』とする;2条3項1号
4 道交法|原動機付自転車の『総排気量・定格出力』の上限
(1)原付と自動二輪車の違いはエンジン・モーターの大きさ
道交法では『原動機』を持つ『車』は原則的に『自動車』と『原動機付自転車』のどちらかとなります。
要するに2輪車にエンジンかモーター(電動機)が付くと『原動機付自転車』か『自動車(のうち自動二輪車)』となります。
『原動機付自転車』と『自動二輪車』の区別はエンジン・モーターの大きさで区別されます。
<『原動機付自転車』|エンジン・モーターの規模>
あ 『規模』の『上限(以下)』
形態 | 総排気量 | 定格出力(※2) |
2輪・3輪(※1) | 0.05L | 0.60kW |
その他 | 0.020L | 0.25kW |
い 法律上の扱い(効果)
該当する場合 | →『原動機付自転車』に該当する |
該当しない場合 | →『自動車』に該当する |
※道交法2条1項9号,10号,施行規則1条の2
<『定格出力』の意味>
指定された条件下で機器類が安全に達成できる最大出力
→『標準的な状態での最大出力』
(2)『3輪の原付』も規格に合えばOK
ところで一定規格の『3輪』は『2輪』と同様に扱われます。
ピザ宅配などで良く見る『3輪の原付』が典型です。
<『2輪』とみなす『3輪』の条件(上記※1)>
ア 3個の車輪を備えているイ 車輪が車両中心線に対して左右対称の位置に配置されているウ 同一線上の車軸における車輪の接地部中心点を通る直線の距離が460ミリメートル未満であるエ 車輪及び車体の一部又は全部を傾斜して旋回する構造を有する ※内閣府告示;平成21年6月1日施行
5 道交法|特殊なマシーンの定義|電動アシスト自転車の規格
形式的には『2輪車+モーター』という場合は『原付or自動車』となってしまいます。
免許が必要,ということになります。
しかし『人力併用』という場合は『自転車扱い』=免許不要,というルールがあります。
要するに『電動アシスト自転車』です。
<『電動アシスト自転車』の法的位置付け(上記※3)>
『自転車』の要件の『人の力』を一定範囲で緩和する
『一定範囲のアシスト』であれば『自動車・原付』としては扱わない
→運転免許が不要となる
<『電動アシスト自転車』の定義>
あ 原動機の種類
電動機である
い サポートフォースレシオ(原動機の『力』の比率上限(以下))
速度(km/h) | 『原動機の力』/『人力』 |
10未満 | 2 |
24未満 | 2−(時速−10)÷7 |
24以上 | ゼロ |
う リミッタキャンセラープロテクター
『い』の原動機のリミッター解除(改造)が容易ではない構造
え 円滑&安全
原動機のサポートが円滑に働く+安全な運転の確保に支障が生じるおそれがない
お 法律上の扱い(効果)
該当する場合 | →『自転車(軽車両)』に該当する |
該当しない場合 | →『原動機付自転車』or『自動車』に該当する |
※道交法2条1項9号,10号,11号の2,施行規則1条の3
6 道交法|特殊なマシーンの定義|電動車いす
車いすにモーターを搭載したものはユーザーにとって便利で,実際に普及しています。
形式的には『原動機+車(車輪あり)』なので『原付or自動車』に該当して,免許必要,ということになってしまいます。
当然,法律上『要免許』を回避しています。
<電動車いす(歩行者扱い)の基準>
あ 『長さ×幅×高さ』の上限(超えない)
120×70×109センチメートル
い 車体の構造
ア 原動機
電動機を用いる
イ 速度
時速6km毎時を超える速度を出すことができない
ウ 突起
歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がない
エ 識別の明確性
自動車・原動機付自転車と外観を通じて明確に識別することができる
う 個別的な緩和措置
身体の状態により上記規制に該当しない車いすを用いることがやむを得ない場合
→警察署長の『確認』を受ければ適法(歩行者扱いを維持)となる
え 法律上の扱い(効果)
該当する場合 | →『自転車(軽車両)』に該当する |
該当しない場合 | →『原動機付自転車』or『自動車』に該当する |
※道交法2条1項9号,10号,11号の3,2条3項1号,施行規則1条の4
7 道交法|特殊なマシーンの定義|歩行補助車の規格
(1)歩行補助車の規格
原則論では『原動機ありの車(車輪あり)』だと『自動車or原動機付自転車』となります。
免許が必要,とか,車道を走る,とかのルールが適用されてしまいます。
この点『歩行補助車』については一定の規格の範囲内で『歩行者』扱いが認められています。
<『原動機を用いる』『歩行補助車・ショッピングカート』>
あ 『長さ×幅×高さ』の『上限(超えない)』
120×70×109センチメートル
い 車体の構造
ア 原動機の種類
電動機を用いる
イ 上限速度
時速6キロメートルを超える速度を出すことができない
ウ 突起なし
歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がない
エ オートパワーオフ
歩行補助車等を通行させている者が当該車から離れた場合には原動機が停止する
う 法律上の扱い(効果)
該当する場合 | →『歩行補助車等』に該当する→『歩行者』扱い |
該当しない場合 | →『自動車』に該当する |
※道交法2条1項9号,施行令1条,施行規則1条
(2)歩行補助車の具体例
『歩行補助車』の具体例と,似ているけど該当しない,という実例を紹介します。
<典型例>
シルバーカー
乳幼児用の手押し車
<該当しない具体例>
電動キックボード・電動スクーター
『歩行補助車』には該当しない→結果的に『原付(or自動車)』に該当する
※平成14年11月警察庁交通局の見解
8 道交法の『自動車・原動機付自転車』→運転免許・自賠責・所定の装備が必要
道交法の『自動車・原動機付自転車』に該当すると,次のような規制が適用されます。
<道交法の『自動車』の規制内容>
あ 道交法の『自動車』
ア 運転免許が必要
無免許運転は罰則がある
※道交法64条
イ 一定の装備が必要
《例》
・前照灯
・ブレーキ
・方向指示器
違反者には罰則がある
※道交法62条;整備不良車両の運転の禁止(運転させた者・運転した者)
ウ 自賠責への加入義務
※自賠法2条1項,5条,道路運送車両法2条2項,3項
9 道路運送車両法の『自動車・原動機付自転車』の定義
以上は道交法の『自動車』『原動機付自転車』などの説明でした。
これらの用語は同じものが道路運送車両法でも使われています。
しかし,内容は多少違っています。
同じ用語が法律によって違う内容,というのは非常に紛らわしいです。
ここでは,道路運送車両法における定義をまとめます。
<道路運送車両法の『自動車』『原動機付自転車』の定義>
あ 『自動車』『原動機付自転車』共通の定義
原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの
又はこれにより牽引して陸上を移動させることを目的として製作した用具
い 『原動機付自転車』の規格
原動機 | 総排気量/定格出力 |
内燃機関(エンジン)+2輪 | 0.125L以下 |
内燃機関(エンジン)+2輪以外 | 0.050L以下 |
内燃機関以外(電動機など)+2輪 | 1.00kW以下 |
内燃機関以外(電動機など)+2輪以外 | 0.60kW以下 |
※道路運送車両法2条2項,3項,施行規則1条
う 『自動車』の定義
『い(原動機付自転車)』に該当しないマシーンが『自動車』となる
道交法は『車』という用語が明記されていますが,道路運送車両法では『車』が入っていません。
代わりに『用具』という用語が使われています。
要するに道路運送車両法では『車輪が付いていないマシーン』も含まれると考えられます。
ただ,この解釈自体が確定的ではありません。
詳しくはこちら|道交法・道路運送車両法|『自動車』の定義
10 道路運送車両法の『自動車・原動機付自転車』→車検・登録などが必要
道路運送車両法の『自動車・原動機付自転車』に該当した場合の規制内容をまとめます。
<道路運送車両法の『自動車』の規制内容>
あ 道路運送車両法の『自動車』
車検→登録義務
い 道路運送車両法の『原動機付自転車』
道路運送車両法上の届出義務はない
ただし,条例により市区町村へ届け出る義務がある
具体的な既存・近未来のマシーンに関する法規制は別記事でまとめています。
詳しくはこちら|公道・上空の『移動物体』への法規制|セグウェイ・ロボット・ホバーボード・ドローン