【書面受諾和解・調停|期日に出席せずに和解成立・電話会議システムにリプレイスされ気味】
1 裁判期日に参加しなくても事前の『受諾書』提出により和解成立が可能
2 離婚・離縁の成立だけは『書面受諾和解』は使えない
3 書面受諾和解・調停の手続の流れ
4 書面受諾和解・調停|デメリット・ウィークポイント
5 離婚・離縁成立×手続上の制限|電話会議システム・書面受諾和解・代理人のみ出席
1 裁判期日に参加しなくても事前の『受諾書』提出により和解成立が可能
『和解成立・調停成立』は通常,期日に出席した当事者が合意して行います。
裁判官が当事者の合意・納得,を確認して調書を作成するのです。
この点『当事者が期日に欠席』しても『和解・調停成立』ができるという例外的な制度があります。
『書面受諾和解・調停』と呼ばれる制度です。
<書面受諾和解・調停|要件>
当事者が遠隔地に居住などにより出席困難である
※民事訴訟法264条
※家事事件手続法270条
一方の当事者が『遠隔地』にある場合に,実際に使われることがよくありました。
2 離婚・離縁の成立だけは『書面受諾和解』は使えない
書面受諾和解は便利なのですが例外的な『適用除外』があります。
<書面受諾和解・調停|例外>
離婚・離縁では使えない
※家事事件手続法270条2項
『離婚・離縁』は,金銭的な処理だけではなく『身分の変動』が生じます。
そこで『意思確認』は『厳重さ』が要求されているのです。
これについては改めて後述します。
3 書面受諾和解・調停の手続の流れ
書面受諾和解・調停の手続の流れをまとめます。
<書面受諾和解・調停|手続の流れ>
あ 裁判所→欠席予定当事者|条項案送付
裁判所(調停委員会・裁判官)が欠席予定の当事者に『和解・調停条項案』を提示(送付)する
現実にはここまでの段階で『合意』に至っている
い 欠席予定当事者→裁判所|受諾書送付
欠席予定の当事者は『条項案』の『受諾書』を裁判所に提出(送付)する
↑『条項案を受諾する』という内容を記載した書面
う 裁判期日|和解・調停成立
次回期日では,出席当事者(欠席当事者以外)が,条項案をその場で受諾する
→和解・調停が成立する
※民事訴訟法264条
※家事事件手続法270条1項
4 書面受諾和解・調停|デメリット・ウィークポイント
(1)書面受諾和解・調停のデメリット・ウィークポイント
書面受諾和解・調停は便利ですが,次のような特徴があります。
<デメリット・ウィークポイント>
あ 期日の消費
裁判(調停)期日が1回余分にかかる
い 『公的な判断』がない
『意地で納得しない』を解消できない
(2)『期日の消費』
『既に合意に達している』場合に期日に出席せずに『和解成立』を実現する手続は『書面受諾』だけではありません。
法改正により,現在は『電話会議システム』による参加,という方法も可能となっています。
『電話会議システム』の方法であれば『期日1回の消費』を回避できます。
現在では『書面受諾和解』は『電話会議システム』にリプレイスされている状態にあります。
詳しくはこちら|電話会議システム|電話で裁判に参加できる|離婚・離縁成立だけはNG
(3)『公的な判断』
書面受諾の方法は,事前に当事者間で解決内容が合意に達している,ということが前提です。
逆に言えば,裁判所の判断は示されていないのです。
そのため『ごくわずかでも未解決の事項』がある場合は『受諾和解』の方法は使えません。
このような場合には『公的判断』を介在させる,別の方法のトライが有用です。
詳しくはこちら|判決と和解の中間的手続(裁定和解・17条決定・調停に代わる審判)
5 離婚・離縁成立×手続上の制限|電話会議システム・書面受諾和解・代理人のみ出席
『離婚・離縁』についてはいくつかの手続において,特別扱いがなされます。
手続上の制限・要請をまとめます。
<離婚・離縁×調停・審判の手続の制限>
手続のシーン | 可否 | 根拠 |
電話会議システムによる和解成立 | ☓ | 家事事件手続法268条3号 |
書面受諾和解 | ☓ | 家事事件手続法270条2項 |
代理人のみの出席=当事者欠席 | △ | 該当条文なし |
最後の『裁判期日に代理人弁護士のみが出席』というケースについては条文や判例はありません。
実務上,比較的広く認められています。
詳しくはこちら|家裁の調停・審判・訴訟における和解成立の際の当事者本人出席の要否