【空家問題→有効活用による解消|コンテンツ発掘・地域復興・民事信託】
1 空家の活用|賃貸借の工夫|DIY型賃貸借・定期借家
2 借主負担DIY型賃貸借|現状で貸す+借主がリフォーム
3 民間の『空き家問題』対策|無料診断・巡回・管理業務・活用コンサルティング
4 マーケット感覚に優れた『地域のコンテンツ発掘→活用』
5 行政による空家対策・取組支援|除却/活用事業タイプ
6 民間による空部屋活用策|都市部の空部屋の貸出〜airbnb〜
7 空家情報によるマッチング|民間と地方自治体|空き家バンク
8 『民事信託』を活用した『空き家放置問題』解消方法もある
本記事では民間・行政による対策や『空家の活用』『地域の復興』への取り組みについて説明します。
1 空家の活用|賃貸借の工夫|DIY型賃貸借・定期借家
空家の活用のアイデアは多くあります。
まずは『賃貸借』というレガシーな方法の枠内での工夫を紹介します。
<空家の活用|賃貸借の工夫|DIY型賃貸借・定期借家>
あ 基本構造
オーナーの手間・費用・リスクの削減を実現する
→貸しやすくなる
い 具体的方法
ア 借主負担DIY型賃貸借
内容は後述する
イ 定期借家契約
契約終了・退去時期が明確
→『退去してくれない』リスクが排除できる
詳しくはこちら|定期借家の基本(更新なし=期間満了で確実に終了する)
2 借主負担DIY型賃貸借|現状で貸す+借主がリフォーム
賃貸借の内容を工夫した方法として『DIY型』が提唱されています。
<借主負担DIY型賃貸借>
あ 修繕義務なし
貸主が修繕義務を負わない
い 賃料が低廉になる
オーナーの負担が小さい
→低廉な賃料の設定ができる
う 借主による自由な模様替え
借主が自費で修繕や模様替えをする
これらの『変更』について
→退去時の原状回復義務を免除する
え 国土交通省による推奨
国土交通省が推奨している
外部サイト|国土交通省|個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会
3 民間の『空き家問題』対策|無料診断・巡回・管理業務・活用コンサルティング
空き家問題は,一定の管理や,さらに『有効活用』という具体的作業で解決することになります。
現在空き家問題が拡がっており,民間企業としては『ビジネスの対象』となる規模と判断しています。
具体的にサービス化が進んでいます。
<民間による空き家ビジネス|例>
あ 空き家の無料診断
ア 売却・賃貸・管理などの収支を算出イ リフォーム・税金などの試算
い 巡回・管理業務
ア 敷地内に管理業者の連絡先を記載した看板設置イ 郵便ポストの清掃・転送ウ 草木の剪定・不法投棄されたゴミの処分
<価格破壊のサービス例>
月額100円で最低限の巡回を行う
外部サイト|NPO法人空地・空家管理センター
4 マーケット感覚に優れた『地域のコンテンツ発掘→活用』
『空き家』も含めた地域の『コンテンツ』の有効活用,という視点で『解決』に取り組む例もあります。
実は日本の各地では『活用されていない=活用できる』コンテンツが無数に眠っています。
コンテンツを活用できるかどうかは『マーケット感覚』で決まります。
マーケットから最も遠い場所にある『行政』のメンバーではなかなか実現できません。
マーケット感覚に優れる民間の具体例を紹介します。
<地域に眠るコンテンツ>
あ 空家活用×アート×猫の島=直島in香川県
い 古民家×ICT=神山ラボin徳島県神山町
三三株式会社(名刺管理ツール提供)のサテライト・オフィス
う 葉っぱビジネスin徳島県勝浦郡上勝町
え 空き家再生プロジェクトin広島県尾道
例;ガウディハウス
外部サイト|NPO尾道空き家再生プロジェクト
また,海外でも『コミュニティ』というコンテンツの活用,という手法が進められています。
詳しくはこちら|サービス付高齢者向け住宅
5 行政による空家対策・取組支援|除却/活用事業タイプ
空家・敷地の有効活用には行政が関与するケースもあります。
最終的に公的な用途を実現する,というものです。
<行政による空家対策・取組支援>
あ 除却事業タイプ
空家を解体して敷地を利用する
例;地域のポケットパークにする
い 活用事業タイプ
空家を改修する→地域の活性化に資する
例;滞在体験施設・交流・展示施設
これらのプロジェクトでは民間も関与することが多いです。
6 民間による空部屋活用策|都市部の空部屋の貸出〜airbnb〜
主に都市部について,空部屋をCtoCでやりとりする=事業者以外の個人同士で貸し借りする,という方法があります。
世界中で普及し始めています。
ただし,日本では旅館業法という既得権者の保護壁=一定のハードル,があります。
詳しくはこちら|旅館業法の規制|基本・参入規制=許可制
7 空家情報によるマッチング|民間と地方自治体|空き家バンク
空家やその敷地を利用する『ニーズ』自体がないわけではありません。
空家が放置される理由は『流通・マーケットに出てきていない』ことにあります。
そこで情報の発掘や提供があれば流通=再利用が進むはずです。
空家情報の収集・提供などは現在の大きな社会的な課題です。
このようなマーケット全体を踏まえた分析については別の記事にまとめてあります。
詳しくはこちら|空家問題|需給のマッチング・空き家バンク・空家情報のマーケット化
8 『民事信託』を活用した『空き家放置問題』解消方法もある
(1)空き家対策・有効活用で使う法的形式
以上のように空き家対策・有効活用の取り組みは民間・行政が行っています。
ところでこのような取り組みにおいて『法律的な扱い』について便利な方法を紹介します。
『信託を活用』したものです。
(2)無償であれば『営業』ではないので信託免許不要|民事信託
一般的なイメージで『信託は信託銀行が行って,手数料が高い』というものがあります。
しかし『無償』であれば『免許』が不要です(信託業法2条1項)。
実際の具体例としては,親族間やNPOなどで信託が行われています。
信託会社による『商事信託』と区別するため『民事信託』と呼ぶこともあります。
(3)民事信託を使った空き家対策
民事信託を使った空き家対策についてまとめます。
<民事信託による空き家放置問題予防方法>
あ 空き家放置問題解消の方針
所有者がNPOなどの『街づくり』を遂行する団体に管理を委ねる
い 信託契約の内容
ア 委託者=受益者=空き家の所有者イ 受託者=NPOなどの団体(法人)ウ 信託内容
物件の所有権は受託者に移転する(信託による移転)
受益者が優先的な物件利用権を持つ
委託者の死亡等一定の状況において,受託者が物件の『管理・処分』を行う
この方法により『管理する者がいない(管理してくれない)』という事態の発生を回避できます。
むしろ,受託者が多くの物件所有者から管理を引き受けることにより,地域の効率的な『街づくり』の実現につながります。
<参考情報>
『週刊ダイヤモンド2015年3月7日』p39,40
ちきりん『マーケット感覚を身につけよう』ダイヤモンド社『さいごに』