【不動産流通業界の基礎知識|3つの『価格』|買取業者・下取業者の活用】
1 不動産流通業界の基礎知識|ユーザーは優良な仲介業者を選ぼう
2 仲介(媒介)契約の3種類|専属専任・専任・媒介
3 不動産流通業界の3つの『価格』|売出価格>査定価格≧成約価格
4 不動産売買|成約金額・相場=売出価格の7〜10%ディスカウント
5 不動産売買|成約価格×相場|実勢価格|基本
6 不動産売買|成約価格×相場のブレ|3D・囲い込み
7 買取業者・下取業者|スピーディー売却・ひっそり引っ越し
8 仲介業・買取業の兼業業者のリスクと対応策
9 不動産仲介では『仲介手数料』をめぐる不正・トラブルが多い
1 不動産流通業界の基礎知識|ユーザーは優良な仲介業者を選ぼう
不動産のマーケットでの流通は『売買の仲介業者』に独占されています。
合法独占があったら『ネオラッダイト』と思え,ということわざがあります。
詳しくはこちら|子供×労働・事業|教育産業のネオラッダイトをテクノロジーで打ち破る
つまり,業界の既得権確保の力学が働き,ユーザーの利益が犠牲になるケースも見受けられます。
マイホームなどの不動産の売却や購入の際は『優良な仲介業者』を選ばないと大きな被害を受けます。
もちろん,被害に遭った後に,損害賠償請求や解除など,リカバリーする方法はあります。
しかし,金銭的・時間的・精神的コストは大きいです。
以下,不動産流通業を利用する場合に注意すべき『業界事情の基本』について説明します。
2 仲介(媒介)契約の3種類|専属専任・専任・媒介
仲介業者に不動産の売却を依頼する場合『3種類の契約』があります。
<媒介契約(仲介契約)の種類>
あ 専属専任媒介契約←レアケース
売り手自身が見つけた買い手であっても手数料が発生する
い 専任媒介契約←ノーマル
他の仲介業者に依頼できない
売却活動の報告頻度=最低限2週間に1回
う 一般媒介契約←プロ向け
複数の仲介業者との同時契約が可能
売却活動の報告義務なし
業界では『独占』を認める『専任』がよく用いられています。
さらに『専属』が付くと『売主個人が知人に当たる』ことができなくなります。
そこで『専属』なしの『専任』が最もよく用いられています。
3 不動産流通業界の3つの『価格』|売出価格>査定価格≧成約価格
不動産流通のマーケットで使われる『価格』は大きく3種類があります。
<不動産売買における段階的な『価格』の種類>
あ 査定価格
一般的な『評価額』=『成約できるであろう価格』
仲介業者のセールスの一環となり『駆け引き』が行われる
《評価方法の種類》
ア 取引事例比較法イ 原価法(積算法)ウ 収益還元法
い 売出価格
『所有者が売りたい価格』
売却物件情報として最初に『表示』する=オープンにする
う 成約価格
買主との間で合意した価格
→『取引事例』としての評価で使われる
『査定価格』はセールスの中心にあります。
つまり,仲介業者がユーザー(売却予定者)に対して最初に示すものです。
当然,善良なユーザーは『高い金額提示=高く売れる自信』と受け取りがちです。
しかしその後『変更』されます。
売却情報として正式に公表する段階は『後から減額する余地』を含めて高目に設定します。
その後,個別的な購入候補者との交渉の過程で減額されるのが通常です。
3つの『価格』の大小関係をまとめます。
<3種類の『価格』の不等式>
『売り出し価格』>『査定価格』≧『成約価格』
4 不動産売買|成約金額・相場=売出価格の7〜10%ディスカウント
一般的に,買主(候補者)は,売却物件の表示価格(売出価格)をストレートに受け入れる,ということは少ないです。
条件交渉を経ることがほとんどです。
具体的には,代金額の値下げの交渉です。
最近では,買主候補者から『**円まで下がらないなら買いません』と,希望金額を指定することが多いです。
『指値(さしね)』と言うこともあります。
もちろん,交渉の結果,一定額の値下げに応じて成約することも,成約に至らないこともあります。
平均的な相場・目安をまとめます。
<不動産売買|成約金額・相場>
東京の中古マンション売買のマーケット
成約価格の相場・目安
=売出価格の約7~10%引き
5 不動産売買|成約価格×相場|実勢価格|基本
不動産の評価の中で『実勢価格』があります。
詳しくはこちら|不動産(土地)の評価額の基本(実勢価格・時価・不動産鑑定評価・売出価格・成約価格)
これは『成約価格』を集約したものです。
この関係についてまとめます。
<不動産売買|成約価格×相場|実勢価格|基本>
あ 不動産流通マーケット・相場
一般的に売買では一定の『相場』が形成されている
=条件による推定値付近に『成約価格』が集中する
い 特殊要因|基本
特殊事情・要因がある場合
→『相場』を離れた金額での売買が成約する
う 特殊要因|減額方向|基本
『売却を急ぐ=売り急ぎ』の場合
→成約金額は大きく下がる
いわゆる『叩き売る』状態である
6 不動産売買|成約価格×相場のブレ|3D・囲い込み
実際の売買では理論的な推定値=実勢価格から大きくブレることがあります。
<不動産売買|成約価格×相場のブレ|3D・囲い込み>
あ 特殊要因|減額方向|典型例
まとめて『3D』と総称することもある
ア 相続=Deathイ 離婚=Divorce
売却して代金を分ける=換価分割
ウ 借金=Debt
債務整理・任意整理・競売・破産など
い 構造的特殊要因|囲い込み
仲介業者のコントロールが強い
中古不動産流通市場では『相場』から乖離した成約が多い
※のらえもん『本当に役立つマンション購入術』廣済堂新書p210
買い手の立場としては『3D物件』に巡り合ったらラッキーです。
大幅に『実勢価格=相場』よりも安く買えるチャンスなのです。
一方,仲介業者の不正により『押し下げられる』こともよくあります(後述)。
7 買取業者・下取業者|スピーディー売却・ひっそり引っ越し
不動産を売却する時に,事情によっては『買取業者・下取業者』に頼ることもあります。
<買取業者・下取業者のビジネスモデル>
あ 仕入れ
売却希望者から現金決済でスピーディーに買い取る
い クリーンナップ
ア リフォーム・再築などを行うイ 明渡その他の負担する権利の処理を行う
う イグジット
エンドユーザー(=居住する者)などに売却する
買取業者に『買い取ってもらう』とどのようなメリットやデメリットがあるのかを整理します。
<買取業者・下取業者の特徴>
あ メリット
ア スピーディー
すぐ売れる・売主は現金が入手できる
イ 売主の『負担』排除
設備の補修義務なし・瑕疵担保責任なし
荷物(動産)の処分も引き受ける(量などによる)
ウ 周囲への影響
『ひっそりと』引っ越しができる
い デメリット
ア 金銭面 売却価格が相場の3〜4割引となる
8 仲介業・買取業の兼業業者のリスクと対応策
中には買取業と仲介業の両方を兼業で行っている業者もあります。
これ自体は問題ないのですが,一定のリスクが潜んでいます。
<仲介・買取兼業の潜在リスクと対策>
あ リスク
『転売の場合の差額=利益』がとても大きい
→『仲介の営業活動』へのインセンティブが超低下
い 対策
対策;他の『買取業者』へのアプローチの並行
少なくとも『買取業者』については『他の業者との競争』にしておくと良いのです。
9 不動産仲介では『仲介手数料』をめぐる不正・トラブルが多い
実際の不動産仲介の現場では『仲介手数料』に関する不正やトラブルが多いです。
『双方代理』という構造から『両手(両方の手数料)』を狙った不正手法が横行しています。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|仲介の不正|全体|囲い込み|手数料上限張り付き|両手の誘惑
<参考情報>
『週刊ダイヤモンド』2015年3月7日p51〜