【不動産売買・賃貸の仲介手数料(報酬額)の上限の例外】
1 仲介手数料の法律上の上限と例外(概論)
2 仲介手数料に追加可能な費用(全体)
3 『広告の料金』の細かい解釈
4 特別の依頼業務の要件と具体例
5 特別の依頼業務の適用除外の注意点
6 加算が認められない費用・名目
1 仲介手数料の法律上の上限と例外(概論)
不動産売買・賃貸の仲介(媒介・代理)の手数料には法律上の上限があります。
詳しくはこちら|不動産売買・賃貸の仲介手数料(報酬額)の上限(基本)
この上限金額には,例外的に加算が認められる費用もあります。
本記事では,このような上限規定の例外について説明します。
2 仲介手数料に追加可能な費用(全体)
仲介手数料の上限には例外もあります(前記)。まずは,例外として追加できる費用の種類全体をまとめます。
<仲介手数料に追加可能な費用(全体)>
あ 広告料
『顧客の依頼によって』行う広告の費用は加算できる(後記※1)
※建設省告示1552号『第7 1』
い 消費税額
現在の告示では消費税相当分を含んだ上限金額(総額表示)となっている
別途消費税を加算することはない
う 特別の依頼業務の実費
一定の要件を満たした業務の費用(後記※2)
3 『広告の料金』の細かい解釈
『広告の料金』は例外的に仲介手数料に加算できることもあります(前記)。この規定については,さらに細かい解釈があります。これをまとめます。
<『広告の料金』の細かい解釈(※1)>
あ 判断基準の基本
『い・う』の両方に該当した場合
→『広告料金の加算』が認められる
いずれかでも該当しないと加算は認められない
い 広告の『種類』
ア 基本的事項
特別の広告の料金を意味する
イ 『特別の広告』の内容
報酬の範囲内で賄うことが相当でない多額の費用を要する
例;大手新聞への広告掲載料など
う 顧客の納得の程度
次の『ア・イ』のいずれかに該当する
ア 事前承諾=原則
次の2つについて事前に顧客が承諾した
・特に顧客から広告を行うことの依頼があった
・費用を顧客が負担すること
イ 事後承諾=例外
事後的に顧客が次の両方について『全く』異議なく承諾した
・広告を行ったこと
・費用を顧客が負担すること
※東京高裁昭和57年9月28日
4 特別の依頼業務の要件と具体例
仲介手数料に加算できるものとして『特別の依頼業務』もあります(前記)。この解釈についても細かいものがあります。
<特別の依頼業務の要件と具体例(※2)>
あ 特別の依頼業務の判断基準
次のいずれも満たす場合
→特別の依頼業務の実費として加算できる
ア 特別な依頼があった
依頼者の特別な依頼があった
イ 通常業務に含まれない
通常の仲介業務では発生しない
ウ 『実費』である
支出を要する特別の費用である
エ 依頼者の承諾がある
費用を依頼者が負担することについて依頼者の承諾があった
い 特別の依頼業務の実費の具体例
依頼者の特別の依頼により行う
遠隔地における現地調査に要する交通費
※宅建業法46条(以下省略する)
※建設省告示1552号『第7』
※国土交通省『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』第46条第1項関係1(6)2
5 特別の依頼業務の適用除外の注意点
前記の『特別の依頼業務』の解釈は,明文として法律・告示に記載されていないという特殊性があります。解釈に一定の不確実なところがあるのです。
<特別の依頼業務の適用除外の注意点>
あ 適用除外の法的根拠
建設省告示には記載されていない
国交省の見解として示されている
※国土交通省『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』第46条第1項関係1(6)2
い 判断リスク
国交省による法解釈は裁判所を拘束しない
→裁判所が『適用除外』を認めない可能性もある
詳しくはこちら|通達の意味・種類・法的性質(国民・企業・裁判所への法的拘束力)
う 広告料との比較
『広告料金』の適用除外については
告示に規定(明記)がある
※建設省告示1552号『第7 1』
さらに裁判例により基準が示されている(前記※1)
6 加算が認められない費用・名目
国交省の解釈としても,加算が認められないものが示されています。
<加算が認められない費用・名目>
あ 『案内料』
現地案内料など
い 『申込料』
う 一般的な広告費用
依頼者の依頼によらずに行う広告の料金
裁判例でも細かい基準が示されている(前記※1)
※国土交通省『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』第46条第1項関係1(6)1
え 優先的に成約させるための料金
不正なセールスをする対価としての費用が横行している
詳しくはこちら|広告費の悪用による暗黙の販売促進費用=タンボー・AD
例えば『広告料』を『当然のように上乗せする』ケースは実務でまだ存在するようです。しかし,このような行為は違法となります。