【借地権・底地の『第三者』への売却|代金相場|路線価の借地権割合は使わない】
1 借地権・底地の『第三者』への売却|『地主・借地人間の売買』との比較
2 底地・借地権の第三者への売却|代金相場
3 底地・借地権の第三者への売却|路線価の借地権割合とは大きく異なる
4 共同売却・交換では『協力により生じた価値の分配』が協議対象となる
5 協力により生じた価値の分配|相対的に分配すべき
1 借地権・底地の『第三者』への売却|『地主・借地人間の売買』との比較
借地に関する問題解決の手段として,底地・借地権の『第三者への売却』を検討することも多いです。
この解決ルートでは『誤解』が結構生じやすいです。
『地主・借地人の間での取引』と混同する,という誤解です。
『地主・借地人間の売買』と『第三者への売却』の特徴の違いまとめます。
<借地権・底地の取引|『当事者間』と『対第三者』の違い>
あ 『第三者への売却』
ア 『地主・借地人の関係』を承継する
→評価額=売値が大きく下がる傾向
イ 当事者の候補が多い
マーケット(需要と供給の程度)による影響が大きい
い 『地主・借地人間』の売買
ア 『地主・借地人の関係』の承継はない=消滅する
これを理由に『利便性が低くなる』ことはない(むしろ利便性が高まる)
イ 当事者が限定
当事者の個別的な事情・意向による影響が大きい
一方が『買わない・売らない』という意向であるだけで『不成立』になる
2 底地・借地権の第三者への売却|代金相場
底地・借地権を第三者に売却することを検討する場合『相場』が重要です。
ごく平均的・一般的な相場の目安をまとめました。
<底地・借地権の売買の相場|目安としての1例>
あ 前提条件
ア 更地評価=1億円イ 路線価図の借地権割合=60%
い 取引の実例からの目安
売買対象物 | 更地評価に対する割合の相場・目安 |
底地 | 10〜15%・良くても20% |
借地権 | 30%程度(後記※1) |
(※1) 『譲渡承諾料』は含まない→その分借地権者が得る金額は減る
『地主・借地人間の売買』と比べると『第三者への売却』では金額が大きく下がるのです。
3 底地・借地権の第三者への売却|路線価の借地権割合とは大きく異なる
底地・借地権の取引相場の誤解は多いです。
不動産を扱う弁護士でも理解していない人がいるようです。
『路線価図の借地権割合』を『当然の前提』とする誤解です。
<路線価図の『借地権割合』|ありがちな誤解>
あ 誤解
取引の際の価格算定でも『借地権割合』を使う(←誤解)
い 正解
『借地権割合』は,納める相続税の計算で使うものである
『実際の取引価格=実勢価格』の算定・評価では用いない
4 共同売却・交換では『協力により生じた価値の分配』が協議対象となる
第三者に『底地や借地権(どちらか一方)を売却すると大きなディスカウントを受けます(前述)。
この点『共同売却』では『底地と借地権を1セットとして=更地として』売却します。
そうするとディスカウントされないで売却できます。
底地と借地権の交換の場合でも実質的に『ディスカウントを受けなかった』ことになります。
<共同売却・交換の分析>
あ 経済的な現象
『協力』により『価値』が生じる
=正確には『価値が減らなくて済んだ』と言える
い 分配の問題
『協力により生じた価値』をどう分配するか
このように『協力により生じた価値の分配』が協議事項となります。
5 協力により生じた価値の分配|相対的に分配すべき
『強力により生じた価値』の分配は弁護士の交渉で,大きなテーマとなります。
ここで『損する』考え方を持っている弁護士も散見します。
相手方がこのタイプの弁護士だとその時点で『有利になる』ことが確約されます。
このように当事者の利害に直結する『考え方』の違いをまとめてみます。
<分配の問題|『相対』と『絶対』>
あ 誤り=絶対評価
地主は(非協力であれば)もともと15%しか獲得できない
だからそれを超えた部分は相手(借地人)にわたっても『トク』と言える
い 正解=相対評価
2当事者の『トク』をどのようにバランスさせるか
弁護士によってはこの区別ができない人もいるようです。
結果的に,依頼者にとっては『相手の味方みたいじゃないか』と思わせる現象となります。
相手にとっては,『有利になる=ラッキー』という状態です。