【参入障壁|事業成功の鍵=へんてこ×がむしゃら・没頭レベルの『好き』】
1 マーケットへの参入障壁|形式的要素
2 昔の参入障壁は『資本』であった|高度成長・製造業全盛期に最適化された労働法
3 現在ではITの普及→『資本』は参入障壁ではなくなった
4 ITの普及→『情報』による参入障壁も崩壊した
5 参入障壁を超えられない『負け』パターン|アイデア勝負・努力なし
6 参入障壁と関連する要素|まとめ
7 事業の成功の要素|マーケット思考|へんてこ×がむしゃら
8 労力投入不足→競合に埋もれる|『がむしゃら』で乗り越えると成功へ
9 『がむしゃら→事業成功』のカギは『没頭レベルの好き』|カネ目的はNG
1 マーケットへの参入障壁|形式的要素
事業遂行・起業においては『参入障壁』が重要な検討事項となります。
まずは『参入障壁』の形式的な分類を整理します。
<参入障壁|形式的要素>
あ 法規制
本記事で説明してきた内容
裏にラッダイトが潜んでいることが多い
い 収支
ア 売上
・競合商品により想定ほど高く売れない
・想定ほど『需要』が獲得できない(想定数量が売れない)
イ ランニング・コスト
想定以上にコストがかかる=コスト削減ができない
ウ イニシャル・コスト(資本)
ただし現在はITの発展し,飛躍的に初期投資額は下がった
『土地や高価な機械への多額の初期投資が必要な業種』はごくわずかである
→生産手段の民主化・ビジネスチャンスの機会の平等の実現
う 生態系
取引関係者の範囲が狭い
→『つながり』の獲得がハードルになる
え 独自のスキル
他者による『模倣が困難』なもの
例;特許権などの法的制度・保護
以上は形式面での分類です。
実際に事業が成功・維持できるかどうかは実質的な内容で決まります。
以下『参入障壁』『事業・起業の成功』の実質面について整理します。
2 昔の参入障壁は『資本』であった|高度成長・製造業全盛期に最適化された労働法
かつては,資本が『競争優位=参入障壁』のほぼすべて,という時代もありました。
ルネッサンスや日本の高度成長期などの『製造業全盛』の頃の話しです。
例えば,20世紀末頃でも,『小規模事業の基本インフラ』=PC・電話などの導入に数十万円〜数百万円が必要でした。
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3 現在ではITの普及→『資本』は参入障壁ではなくなった
現在では,ITが急速に発展・普及しています。
ほぼゼロの資本でも『大規模なサービス』の遂行が可能となっています。
ITにより『資本の格差による事業チャンスの不公平』は解消されているのです。
小さなスタート(リーン・スタートアップ)=個人レベルのサービス構築・運用の優位性が強まっているのです。
そのため『競合他社』ではなく『競合他者』という用語を使っています。
4 ITの普及→『情報』による参入障壁も崩壊した
また『情報』を得るというプロセスのために,一定の時間・費用が必要でした。
これもITの普及により大幅に『障壁撤去』が実現しました。
<情報取得ハードル(障壁)の撤去>
あ 『情報取得』の時代変化
時代 | 情報取得方法 |
昔 | 学校や研修受講・専門書籍の購入・業務の体験・実業者から直接聴取(学ぶ) |
現在 | インターネット上の無償の情報取得(大部分が代替された) |
い 現在の『差が付く』ところ
情報『取得』ではあまり差が付かない
情報の『活用・実装・実行』で差が付く
現在でも,完全に『情報』の価値がゼロになった,というわけではありません。
勝負が決まるプロセスが『取得』から『活用』に変わった,ということなのです。
5 参入障壁を超えられない『負け』パターン|アイデア勝負・努力なし
一般的な『参入障壁』のありがちな誤解をまとめておきます。
<陥りがちな失敗確実パターン>
あ 『素晴らしいアイデア(ビジネスモデル)』さえ思いつけば成功だ!→☓
↓反論・正しい理解
・リソース(時間・資金)を使わずに『素晴らしいアイデア(ビジネスモデル)』を思いつく
・どんなに時間をかけてアイデアを思いついても模倣される(前述)
・『アイデアは保護されない』=『実装・実行することに意義がある』
・『思い付いた素晴らしいアイデア』も,ググると大体出ている
い スキルを身に付けるのが面倒・やり方が分からないからやらない→☓
↓反論・正しい理解
まさにここが『競争力』の要因・源である
『アイデア勝負』に陥るケースが多いのでさらに具体的情景としてまとめます。
<『空白地帯』『アイデア(だけ)で勝つ』は落とし穴>
あ 良くも悪くも『自由』
経済活動の自由・営業の自由
→多くの人が目を皿のようにして『利益の出る事業』を考えている
い サービス(ビジネス)空白地帯の発見時の心得
『やったー!すごいアイデアでビジネスになる!』 | ☓ |
『何か参入障壁を見落としている』 | ◯ |
『参入障壁なしに放置されている事業ドメインは普通ないはずだ』 | ◯ |
6 参入障壁と関連する要素|まとめ
『競合他者を引き離す→需要獲得』のために必要なリソースを整理します。
<『需要獲得→事業成功』のために必要な『リソース』>
資本 | 不要となってきている(大規模な事業は除く) |
情報 | 一般論としては『格差』がなくなってきている |
発想・アイデア | 単体での重要性は低い |
労力 | 現在はこれで勝負がつく傾向が強まっている |
独自の能力 | 個人特有=『他者が真似できない』の価値生成能力がある場合 |
7 事業の成功の要素|マーケット思考|へんてこ×がむしゃら
次に『参入障壁』の実質面を説明します。
要するに『需要』を獲得・拡大する,ということです。
<需要獲得・拡大の実質的要素>
あ 実質的な『需要獲得』
競合の中で商品・サービスそのもののクオリティで勝つ
い 2つの要素に分解
『競合が少ないサービス』×『相対的ハイクオリティ実現』
う 2つの要素を平たく言うと
独自性(既存の商品がない)×労力(リソース)
↓さらに口語化
『へんてこ×がむしゃら』
まず,競合が(需要との比較で)多数既に存在する場合は,クオリティで優位に立つためには大きな努力を要します。
いわゆる『レッド・オーシャン』であり,小規模の新規参入としては成功可能性が低いです。
そこで『既存サービスとの違い・独自性』は重要です。
仮に当初斬新・独自のアイデアがあった場合でも容易に模倣されます。
『模倣』を法的に阻止できる場合は高度な技術を開発した場合などのごく例外的場合だけです。
詳しくはこちら|知的財産権の全体像|特許権・意匠権の基本
8 労力投入不足→競合に埋もれる|『がむしゃら』で乗り越えると成功へ
競合よりも優れたサービスを提供するカギは『労力』です。
当然,競合も同じです。
競合よりも『有意に優位』に立つ要因があると,成功はより確実になります。
『優位性』を出せないと,マーケットメカニズムにより『埋もれ』ます。
埋もれる要因をまとめます。
<マーケットに埋もれる要因=超えられることが競争優位の源>
あ 『面倒』に直面した時の岐路
ア 『面倒』で止まる→埋もれるイ 『面倒』を『がむしゃら』で乗り越える→成功する
い 『面倒』=参入障壁の内容
ア スキルが必要(スキルを得るのに時間・労力がかかる)イ やり方が分からない
9 『がむしゃら→事業成功』のカギは『没頭レベルの好き』|カネ目的はNG
『面倒=埋もれる要因』は『乗り越えると競合を引き離せる』ということです。
この『面倒』を『がむしゃら』で乗り越えるための要因をまとめます。
<労力投入で競合に勝つ要因>
あ カネ目的→☓
競合他者と『有意差』がない
→『がんばり』の程度も同程度になりがち
→埋もれる
い 一般的好奇心=ユーザーとしての『好き』レベル→☓
う 『得意』レベル→△
作業を長時間継続して『苦痛ではない』程度のこと
え 本質的好奇心=『没頭』レベル→◯
個人的な好みで『没頭』できるコトがあるはず
これを行えば競合他者は『真似』できない
→引き離せる(有意に優位)
<参考情報>
大石哲之氏のブログ
外部サイト|『好きで食う』を目指す人が知るべき陥りやすい2つの罠