【労働マーケットの過剰規制→社内ラッダイト→企業の新陳代謝→個人の格差拡大】
1 マーケットの性質と種類|商品取引・労働力・恋愛マーケット
2 労働マーケットは『政府の介入』『規制』が強烈|高度成長期に最適化されている
3 労働マーケット|過剰規制の効果=社内ラッダイト・プロフィットイーター
4 労働マーケット|解雇規制→労働力流動性阻害のスパイラル
5 解雇規制=既存企業へのブレーキ+ベンチャーのスリップストリーム
6 企業の新陳代謝→少数精鋭ベンチャー活躍→個人の『格差拡大・2極化』
7 ベンチャーによる開拓を社会が待っている分野=ネオラッダイト・独占事業
8 企業の『淘汰』を促進するための『規制強化』アイデア
9 国家単位の『淘汰』|税制・宗教(参考)
1 マーケットの性質と種類|商品取引・労働力・恋愛マーケット
一般的に『マーケット』と言うと『商品・サービス取引』を対象としたものを指します。
しかし『マーケット』の性質からは,他の種類の『取引』でも『マーケット』が形成されています。
<マーケット|性質論>
多数対多数の間で個別的に取引が行われる
その中で『取引相手』の選択が行われる
<マーケットの種類>
あ 商品・サービス取引マーケット
い 労働マーケット
う 恋愛マーケット
これらのマーケットのうち『あ』『い』は強く関連しています。
以下この『関連性』について説明します。
2 労働マーケットは『政府の介入』『規制』が強烈|高度成長期に最適化されている
商品・サービス取引マーケットでは『自由』が尊重されています。
逆に言えば『政府の介入・規制』は最小限にとどめる基本原則があるのです。
詳しくはこちら|マーケットメカニズムの基本|自由経済・商品流通の最適化・供給者の新陳代謝
しかし,労働マーケットでは『政府の介入・規制』が非常に強いです。
『解雇規制』という強烈な規制をはじめとして『労働者保護』のルールが多く設定されているのです。
<労働法による規制の概要・項目>
あ 解雇規制
い 賃金
う 労働時間
そして『終身雇用』が長らく『原則的な雇用形態』とされていました。
このような規制・実情は,『高度成長期・製造業全盛時代』の状況を前提に最適化されたものです。
現在の社会の実情に整合せず,不合理・時代錯誤と言える場面が生じることが多いです。
3 労働マーケット|過剰規制の効果=社内ラッダイト・プロフィットイーター
『解雇規制』を中心に,労働者は非常に強く保護されています。
『安心して働ける』という良い面はありますが,次のようなネガティブ要素が大きいです。
『会社内ラッダイト』と呼ばれる現象です。
<会社内ラッダイト=プロフィットイーター>
あ 社内ラッダイト・プロフィットイーターの内容
ア 会社内に『肩書を重視する文化・雰囲気』ができた状態イ 『会社の利益』よりも『自分の利益・立場』を優先する状態ウ 年功序列・終身雇用が強固な場合=『官僚化』
い 社内ラッダイトの状態の結果
組織がマイナスに働く場合
→会社の収益性悪化
4 労働マーケット|解雇規制→労働力流動性阻害のスパイラル
労働法では非常に強い『解雇規制』があります。
その結果『労働力の流動性』が極端に低くなっています。
この関係は循環して『抜け出せない』ような構造を持っています。
<解雇規制→労働力流動性阻害スパイラル>
解雇規制により『解雇』が非常に少ない
↓
『空き席』があまりできない
↓
『求人・募集』が少ない
↓
労働者は『退職』した場合『次の職』が見つかりにくい
↓
労働者は『退職』を極力避ける方向性が強くなる
↓
政府として『解雇規制』を維持・強化する方向性
↓
(最初に戻る)
5 解雇規制=既存企業へのブレーキ+ベンチャーのスリップストリーム
労働マーケットの過剰規制=流動化阻止という現象が商品マーケットに影響を及ぼします。
<解雇規制によるベンチャーのスリップストリーム>
あ 労働マーケットの過剰規制
既存の大企業は解雇規制・官僚化→収益構造の最適化が阻害される
廃業・倒産に至り,従業員は強制的に排除される
い コンプライアンス
大規模化→グレーゾーンからの撤退方向
→新規参入企業(ベンチャー)に負ける
=『グレーゾーンはベンチャーの聖域』
詳しくはこちら|グレーゾーンはベンチャーの聖域|濃いグレー・薄いグレー|大企業バリアー
う 大規模化企業の廃業・倒産(※1)
先行企業がマーケットから退場する
↓
え ベンチャー企業がシェア獲得(※2)
既存の大企業が解放したシェア+新規シェア創出
ベンチャー企業にとっては『スリップストリーム』となります。
レースにおいて『先行車よりも後続車の方が空気抵抗が少ない→有利』という現象のことです。
本来既得権者を保護するはずの『法規制』が新規参入に有利に働くという結果に結びつくのです。
この意味ではシオナイト現象と同じです。
詳しくはこちら|ネオ・ラッダイト討伐|3権・テクノロジー・グレーゾーン=ベンチャーの聖域
6 企業の新陳代謝→少数精鋭ベンチャー活躍→個人の『格差拡大・2極化』
企業の新陳代謝を『個人=従業員』の立場から整理してみます。
<企業の新陳代謝→個人の適正配置>
あ 大企業の廃業
雇用されていた従業員が失業する(上記※1)
↓
い ベンチャー企業の『起業→躍進』(上記※2)
失業した従業員のうち『スキル・努力』ある者が運営・雇用
IT駆使×少数精鋭で高収益を実現
↓
う 優秀・有能な者
大きなやりがい・収益を得る
え 元『大企業でのプロフィットイーター』=『解雇規制依存者』
失業後,職を得られない状況が続く
結果的に『寄生する・される』が解消され,実質的な公平性が実現することになります。
スキル・能力による『格差拡大・2極化』と言うこともできます。
<企業の新陳代謝→個人の格差拡大・2極化>
『社内限定』の人脈・スキル | 無効化する |
「マーケットに評価される」スキル | 経済的格差(拡大)につながる |
7 ベンチャーによる開拓を社会が待っている分野=ネオラッダイト・独占事業
ベンチャー・スタートアップの開拓が望まれるサービス・分野をまとめます。
<ベンチャー・スタートアップのターゲット>
あ ネオラッダイト分野
既存の制度・法令や業界内しがらみ(ギルド化)により『最適化』されていない分野
例;医療・金融・教育・農業
い 独占事業+会社内ラッダイト
特定企業のシェアが高い+社内ラッダイトが存在している(※3)
8 企業の『淘汰』を促進するための『規制強化』アイデア
マーケットを最適化する手段として『規制強化』を使うアイデアもあります。
<規制強化→企業の淘汰促進|例>
最低賃金をアップ
↓
『収益効率』が低い企業は廃業する
↓
収益効率が高い企業のシェア拡大・新規参入が促進される
『法規制』は『既得権者保護』につながるのが通常です。
上記アイデアは『既得権者のマーケットからの退場』を実現する手段としての規制です。
変わっている,というか『全体最適を目指す好ましい』方向性の法規制の使い方と言えましょう。
9 国家単位の『淘汰』|税制・宗教(参考)
制度による『淘汰』が生じるマーケットは『世界中の国家』にも当てはまります。
グローバルなレベルでの『淘汰』についてもまとめておきます。
<国家単位の『淘汰』>
あ 税制による企業・個人資産家の誘致競争
い 『宗教×戦争』→宗教の拡大
中世以前は兵士の『勇気』が戦争の勝敗に影響を大きく与える要素であった
類型的に『宗教なし』の組織よりも『宗教あり』の組織の方が『勇気』が格段に強い
ア 『宗教あり』の組織(国)→戦勝→エリアを拡大したイ 『宗教なし』の組織(国)→敗戦→エリアを縮小した
本記事では主にマーケットメカニズムの中身をまとめました。
いろいろな法律解釈の中で『背景事情』の理解が前提となることも多いのです。
実際に,付随的な知識・理解の差→勝ち負けにつながる,ということもあります。