【民泊サービス|法的問題|全体|法規制・法的制限・税務・保険】
1 民泊・マッチング×法的問題|根本
2 民泊×法規制|旅館業法・建築基準法・消防法
3 規制緩和方針=国家戦略特区・規制改革実施計画
4 民泊×マンション管理規約・賃貸借契約
5 民泊×住宅ローン|期限の利益喪失
6 民泊×減税措置|住宅ローン減税・小規模宅地
7 民泊×納税|所得税・法人税・消費税
8 民泊×現実的制限|保険
9 民泊×現実的制限|募集
10 民泊の妙手|ワケあり物件→有効活用
1 民泊・マッチング×法的問題|根本
現在,空部屋マッチング・シェアリングが普及しつつあります。
代表的なサービスは『airbnb』や『とまりーな』などがあります。
社会的なニーズに対応し,社会的問題の解消につながるサービスです。
詳しくはこちら|空部屋マッチング・シェアリング|マーケット|インバウンド増加・供給不足
一方で空部屋マッチングサービスは『クリアすべき法律問題』があります。
<民泊・マッチング×法的問題|根本>
あ 根本的な『不明確』性
空部屋のシェアは次の中間的な性格がある
ア 従来型の旅館・ホテル・民宿イ 住居
い 法律上の扱い
各種法律・その他での『扱い』に2つの見解が生じる
→上記『ア・イ』のどちらと同じ扱いにするか
う 問題点
法規制が中心である
それ以外の法律の適用の問題もある
直接的な法律とは関わらない付随的な問題もある
法的な問題は『シェアリング=貸すこと』と『マッチング』に分けられます。
本記事では『シェアリング』に関する法的問題の全体像を説明します。
『マッチング』の法的問題は別記事にまとめてあります。
詳しくはこちら|空部屋マッチング|法的問題|全体|ホストの適法性確保・リスク説明
2 民泊×法規制|旅館業法・建築基準法・消防法
民泊サービスに関係する法規制はいくつかあります。
まずは代表的なものをまとめます。
<民泊×法規制|全体>
あ 旅館業法
旅館業に該当する場合→営業許可が必要
い 建築基準法・都市計画法
ア エリア
『用途地域』の制限がある
イ 建物の仕様
耐火性能・採光・換気などの仕様が必須となる
既存の住居を『旅館』にする場合→『用途変更手続』が必要
う 消防法
防火性能・消防用設備の使用・設置が必須となる
防火性能の例=防炎のじゅうたん・カーテン
消防用設備の例=消火器・火災報知機・誘導灯
既存の法規制として関係するものは多いです。
小規模な『部屋を貸す』ことが該当するかどうかの判断は難しいものも多いです。
既存の法規制では想定していない貸出形態だからです。
それぞれの法規制の内容は別記事で説明しています。
詳しくはこちら|旅館業法の規制|基本・参入規制=許可制
詳しくはこちら|宿泊サービスに関する建築基準法の規制(用途変更・仕様)
詳しくはこちら|宿泊サービス×消防法|基本|防炎性能・簡易宿所の扱い・民泊関連資料
3 規制緩和方針=国家戦略特区・規制改革実施計画
以上説明した法規制は,あくまでも現時点の規定を前提にしています。
現在政府では,空部屋の貸し借りについて法規制の方針が取られています。
国家戦略特区法や規制改革実施計画による施策があります。
具体的な内容については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|旅館業法×規制緩和|全体・方針|緩和の方向性・アイデア|ゲリラ性
4 民泊×マンション管理規約・賃貸借契約
民泊サービスが抵触するのは公的な法規制だけではありません。
分譲マンションであればマンション管理規約に違反することもあり得ます。
賃貸物件であれば『転貸』として解除されることがあります。
この問題については別記事でまとめてあります。
詳しくはこちら|民泊サービス×管理規約・契約条項との抵触|対応・予防の概要
5 民泊×住宅ローン|期限の利益喪失
民泊サービスは『住宅ローン』への影響もあり得ます。
<民泊×住宅ローン|期限の利益喪失>
あ 住宅ローン約款|期限の利益喪失
一般的な住宅ローンでは約款に次の条項がある
ア 住宅として使用するイ 約款違反があった場合期限の利益を喪失する
い 民泊サービスの影響
『営業』としての使用に該当する場合
→期限の利益を喪失する
→ローン残額を一括請求される
サービス提供の状況によっては『営業』の判断が不明確となります。
過去に判例が蓄積されているテーマではないのです。
6 民泊×減税措置|住宅ローン減税・小規模宅地
民泊サービスは税務面への影響も考えられます。
<民泊×減税措置|住宅ローン減税・小規模宅地>
あ 住宅ローン減税|要件
『自己の居住の用途』が要件となっている
床面積の半分以上などの細かい基準がある
い 民泊サービスの影響
『営業』としての使用に該当する場合
→優遇措置が適用されなくなる
外部サイト|国税庁|タックスアンサー|住宅借入金等特別控除
う 民泊×小規模宅地特例
一定の土地について相続税の減税制度がある
民泊として用いている建物敷地の扱いに不明確なところがある
詳しくはこちら|相続税・小規模宅地特例|基本・併用|民泊の扱い
過去の実例では『賃貸用』の使用というケースは多かったです。
しかしごく短期間の小規模なシェア,については判断基準が不明と言えます。
7 民泊×納税|所得税・法人税・消費税
民泊の売上・利益に対する『納税』も必要となります。
<民泊×納税|所得税・法人税・消費税>
あ 利益に対する課税
所得税or法人税
詳しくはこちら|建物の貸付の収入×税金|全体|所得税・法人税|事業的規模
い 売上に対する課税
消費税
『課税or非課税』の判断が難しいこともある
詳しくはこちら|相続税・小規模宅地特例|基本・併用|民泊の扱い
消費税の課税or非課税という問題は,旅館業許可の要否とリンクします。
そのため判断が曖昧・難しいという局面も多いです。
8 民泊×現実的制限|保険
民泊を行う場面で『保険』が現実的な問題となることもあります。
<民泊×現実的制限|保険>
あ 一般の火災保険・住宅総合保険
宿泊客が起こした事故
→対象外=免責事項となる可能性がある
い 旅館賠償責任保険
旅館業許可が加入条件となっている
宿泊客が起こした建物内での事故
→保険が適用される
う 旅館業許可なし×保険
旅館賠償責任保険に加入できない
え 民泊用保険の登場
民泊に対応した保険の発売が始まっている(平成29年8月現在)
従来の保険は『民泊』に適したものがなかったのです。
しかし,政府として規制緩和=民泊推進の方針がはっきりしています。
そこで,民泊の普及とともに,保険商品も開発され,現在では販売されています。
9 民泊×現実的制限|募集
民泊については法律以外の面での制限もあります。
主なものは『募集・保険』についてのものです。
この2つは『旅館業許可』の有無によって違いが生じるのです。
まずは『募集』に関する事実上の制限についてまとめます。
<民泊×現実的制限|募集>
あ 旅行業許可なし×宿泊客募集|大手
多くの大手旅行会社・旅行代理店で扱わない
例外は楽天トラベルくらい
→宿泊客の募集・獲得がしにくい
い 旅行業許可なし×宿泊客募集|ベンチャー
現在では許可なし物件も扱うサービスが多い
例;airbnb
詳しくはこちら|民泊マッチング・プラットフォーム|代表的サービス
現在では閲覧者の多いサービスもあります。
『大手旅行会社の募集』が利用できなくても問題なくなってきました。
10 民泊の妙手|ワケあり物件→有効活用
過去に人が亡くなった,いわゆる『ワケあり物件』が社会的に問題になりつつあります。
『賃貸』などで活用できないまま,放置状態になる,という傾向があるのです。
このような物件でも『賃貸』でなければ活用のハードルが下がります。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|旅館業×『過去の人の死』告知義務|賃貸借との違い・ワケあり物件有効活用