【飲食店営業許可|反復継続意思がポイント|出張料理人の許可の要否が曖昧】
1 食品の料理・提供→飲食店営業・喫茶店営業の『許可』が必要
2 飲食店・喫茶店営業許可→調理師や栄養士などの資格者が必要
3 『飲食店営業』『喫茶店営業』の定義|『出張料理』も含まれる
4 食品衛生法の『営業』は『営利目的・有償』が必要とされない
5 業法における『業』の解釈(概要)
6 『業』の具体的な判定の方向性|実務的な事実認定
7 『食品』に関する事業に広く適用される『努力義務』|法的義務ではない
8 発展が期待される出張料理サービス
『料理人の出張』という新しいサービスが流行りつつあります。
本記事では『食品の調理』に関する規制についてまとめます。
1 食品の料理・提供→飲食店営業・喫茶店営業の『許可』が必要
食品の調理・料理や顧客への提供をする業務は『営業許可』が必要になります。
<『飲食店営業』『喫茶店営業』の規制>
あ 都道府県知事の『営業許可』が必要
厚生労働省が監督官庁;施行令は厚生労働省令
※食品衛生法51条,52条,施行令35条
い 施設ごとに『食品衛生責任者』を置く
※各都道府県・食品衛生法施行条例
う 無許可営業の罰則
ア 法定刑
懲役2年以下or罰金200万円以下
イ 併科
情状により併科(=懲役+罰金)となる
※食品衛生法72条
2 飲食店・喫茶店営業許可→調理師や栄養士などの資格者が必要
飲食店や喫茶店営業を許可を取得する条件として一定の『資格者』が要求されています。
具体的な業務内容によって異なります。
<『食品衛生責任者』の資格|例>
栄養士・調理師・製菓衛生師・食鳥処理衛生管理者
地方自治法が実施・指定する食品衛生責任者のための講習会の受講修了者
※各都道府県・食品衛生法施行条例
3 『飲食店営業』『喫茶店営業』の定義|『出張料理』も含まれる
営業許可が必要となる『飲食店営業』『喫茶店営業』は施行令で定義が規定されています。
<『飲食店営業』『喫茶店営業』の定義>
あ 飲食店営業
食品を調理するor設備を設けて客に飲食させる営業
ただし別の形態(喫茶店営業など)に該当する場合は除く
《飲食店営業の例示》
一般食堂・料理店・すし屋・そば屋・旅館・仕出し屋・弁当屋・レストラン・カフエー・バー・キヤバレー
い 喫茶店営業
『設備を設ける+酒類以外の飲物or茶菓を客に飲食させる』営業
《喫茶店営業の例示》
喫茶店・サロン
※施行令35条1号,2号
『食品を調理して客に飲食させる』業務は『飲食店営業』に該当します。
これだけを見ると『友達が集まったパーティー』も該当し,許可が必要になってしまいます。
当然,別の要件もあります。
『営業』という部分です。
4 食品衛生法の『営業』は『営利目的・有償』が必要とされない
一般的な『営業』の意味は『営利目的・有償』というものです。
しかし,食品衛生法では『営業』の定義として,ちょっと変わった内容が規定されています。
<『営業』の定義|条文>
あ 該当する業務
業として次のいずれかを行うこと
ア 食品or添加物を採取・製造・輸入・加工・調理・貯蔵・運搬・販売することイ 食品用器具or容器包装を製造・輸入・販売すること
い 除外される業務
農業・水産業における食品の採取業
う ポイント;『有償・営利』性
有償・営利の有無は定義に含まれていない
→無償・非営利でも該当する
=一般的な『業(として)』と同義と考えられる
※食品衛生法4条7項
この定義では『友達が集まったパーティー』も該当するように思えてしまいます。
これに関して,業務規制の業法一般の解釈があります。
5 業法における『業』の解釈(概要)
『営業』の意味として『営利・有償』とは関係なく『業(業務)』というものも含まれます。
多くの業法における『業』の解釈はほぼ同様のものといえます。
<業法における『業』の解釈(概要)>
あ 基本部分
『業とする』は,反復継続性(い)と事業的規模(う)の両方を満たすものを対象とする
い 反復継続性
行為が反復継続的に遂行されている
う 事業的規模
社会通念上『事業の遂行』とみることができる程度のものである
詳しくはこちら|業法の『業・事業・営業』の基本的な解釈(反復継続意思・事業規模・不特定多数)
6 『業』の具体的な判定の方向性|実務的な事実認定
『営業(業務)』の解釈はちょっと複雑でした(前述)。
これについて具体的な判断の方向性をまとめます。
『出張料理』に関するケースでも判断の参考となります。
<『業』の一般的解釈|実務的な事実認定>
『規模』が『反復継続意思』の判定に影響を与える
事情 | 『反復継続意思』判定の方向性 |
ユーザー(飲食社)は知り合いだけ | 否定方向 |
公募=不特定多数への勧誘 | 肯定方向 |
ユーザーの負担金が実費程度(低い) | 否定方向 |
ユーザーの負担金が作業対価を含む(高い) | 肯定方向 |
飲食以外の『主目的』がある | 否定方向 |
7 『食品』に関する事業に広く適用される『努力義務』|法的義務ではない
『飲食店営業』などの場合は『許可』が必要です(前述)。
これとは別に,より広く,食品を扱う業務に対して適用される規制があります。
いくつかの『努力義務』です。
<『食品等事業者』の努力義務>
あ 『食品等事業者』の定義
次のいずれか
ア 食品or添加物を採取・製造・輸入・加工・調理・貯蔵・運搬・販売することを営む者イ 食品用の器具or容器包装を製造・輸入・販売することを営む者ウ 学校・病院などの施設において継続的に不特定or多数の者に食品を供与する者
い 安全確保の対象物『販売食品等』
採取・製造・輸入・加工・調理・貯蔵・運搬・販売により不特定or多数の者に授与する食品・添加物
営業上使用する食品・添加物・器具・容器包装
う 努力義務|安全確保
安全性を確保するために必要な措置を講ずる
ア 販売食品等の安全性の確保に係る知識及び技術の習得イ 販売食品等の原材料の安全性の確保ウ 販売食品等の自主検査の実施
※食品衛生法3条1項
え 努力義務|購入元の記録
販売食品等or原材料の購入元の名称などの記録を作成する
この記録を保存する
お 努力義務|記録提出・有害食品廃棄
『え』の記録を国・都道府県などへ提供する
食品衛生上の危害の原因となつた販売食品等の廃棄などを適確・迅速に講ずる
※食品衛生法3条
『努力義務』なので,不履行に対するストレートな罰則はありません。
8 発展が期待される出張料理サービス
現在サービス提供中の出張料理サービスを紹介します。
前述のような適法性をクリアして,ブレーキがかからないように普及することが期待されます。