【タクシー料金『上限・下限』|公定幅運賃制度|裁判所が違法・無効と判断】
1 タクシー料金の『上限・下限』設定|公定幅運賃制度導入
2 タクシー料金|事業者と規制庁の『逆転現象』〜値下げさせてくれ!〜
3 『値上げ強制』と闘うユーザー想いの企業|MK・ワンコインドリーム・パンダタクシー
4 タクシー料金|あまりに異常な状態を裁判所が認めて無効化した|裁量権の逸脱
本記事では,タクシー料金の公的な『上限・下限』のルールについて説明します。
この点『価格協定=カルテル』の禁止という原則については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|公定価格=公認カルテル|信書・書籍・タクシー・医療サービス|士業は撤廃済
1 タクシー料金の『上限・下限』設定|公定幅運賃制度導入
平成26年にタクシー営業に関してすごいルールが設定・施行されました。
<タクシー料金の『公定幅運賃』制度>
あ 法的根拠
タクシー特別措置法
平成26年1月改正法施行
い 対象エリア
都市部
→東京23区・大阪市 ・札幌・福岡など
う 規定内容
運輸局が『運賃の上限・下限』を設定する(公示など)
この範囲外の運賃は認められない
え 違反者への対応
『下限』を割り込んだ場合
→各運輸局は『是正勧告』や『運賃変更命令』を行うことができる
2 タクシー料金|事業者と規制庁の『逆転現象』〜値下げさせてくれ!〜
ここで,既存のタクシー事業者が『値上げしなくてはならない』状態になりました。
一方『値上げしたら既存の顧客を失う』ことにつながります。
このように困惑した『ユーザー想いの会社』は是正命令や運賃変更命令を受けます。
常識によって,主張を逆に捉えてしまいそうになるので,ここで整理しておきます。
<運賃を巡る主張の整理>
ユーザー想いのタクシー事業者 | 値下げしたい |
運輸局 | 値上げしなさい |
なお,この『歪み・逆転』現象は『不当廉価』という制度でも発現します(リンクは上記)。
3 『値上げ強制』と闘うユーザー想いの企業|MK・ワンコインドリーム・パンダタクシー
ユーザー想いのタクシー事業者は『運賃命令変更』の差止訴訟や仮処分を裁判所に申し立てました。
<ユーザー想いの会社=提訴事業者>
ユーザー想いの事業者 | エリア | 初乗り運賃設定額 | 運輸局の設定(※1) |
MKタクシー(グループ) | 大阪市 | 610円 | 660円以上 |
ワンコインドリーム | 大阪市 | 500円 | 660円以上 |
MKタクシー | 福岡市 | 520円 | 630円以上 |
BLUE_ZOO社(パンダタクシー) | 福岡市 | 290円 | 630円以上 |
※1 最も一般的な大きさの車種における下限
4 タクシー料金|あまりに異常な状態を裁判所が認めて無効化した|裁量権の逸脱
タクシー料金の横暴的設定については,複数の裁判所が『ダメ(違法)』と口をそろえて言っています。
本来,違法と判断するハードルは高いのですが,それを軽く超えてしまったのです。
<裁判所の適切な判断|仮処分抗告審>
あ 裁判所の決定
裁判所・日付 | 種類 | 結果・概要 |
大阪高裁平成27年1月7日 | 仮処分 | タクシー事業者勝訴・国側敗訴 |
福岡高裁平成27年1月10日 | 仮処分 | タクシー事業者勝訴・国側敗訴 |
大阪地裁平成27年11月20日 | 本案 | タクシー事業者勝訴・国側敗訴 |
※『本案』=正式な訴訟という意味
なお仮処分は2件とも抗告審である
いずれの原審でもタクシー事業者が勝訴している
い 裁判所の判断内容
政府の判断は『裁量権の逸脱』にあたる
『違憲』ではないが『処分』は無効とする
なお,この『裁判所の判断』は,あくまでも『仮処分』についてのものです。
正式訴訟(本案)についてはまだ審理が進んでいます。
現時点の『適正な判断』の方向性が維持されることが望まれます。