【離縁の種類|死後離縁|相続には影響なし・原則的に家裁の許可が得られる】
1 協議離縁|当事者両方の『届出』だけで成立する
2 裁判離縁|裁判所が『離縁』を認める制度|『婿養子が離婚+離縁』が典型
3 死後離縁|一方の死後に『離縁』することもできる
4 死後離縁の法的効果|相続には影響ない
5 死後離縁|性質論=『夫婦の死別+姻族関係終了』の『養子』版
6 死後離縁|許可基準|原則的に認められる
7 死後離縁|恣意的ではない→死後離縁を許可した判例
1 協議離縁|当事者両方の『届出』だけで成立する
養子縁組を解消する方法で最も単純なものは『協議離縁』です。
養子・養親が離縁することに合意し,役所に離縁届を提出することで離縁が成立します。
詳しくはこちら|創設的届出/報告的届出|役所への届出の分類|提出義務・罰則
2 裁判離縁|裁判所が『離縁』を認める制度|『婿養子が離婚+離縁』が典型
養子縁組を解消したいけれど『一方が拒否』するケースもあります。
このような場合は,裁判所の判断によって強制的に離縁を成立させる手続があります。
『裁判離縁』という制度です。
典型例は『婿養子』の状態から『離婚+離縁』をセットで行うというものです。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|『婿養子』|離婚をしたら『離縁』も認められるが例外もある
3 死後離縁|一方の死後に『離縁』することもできる
養子・養親のいずれかが死亡した後に『離縁』することができます。
どのような場合に『死後離縁』を活用すべきなのか,については後述します。
まずは死後離縁の手続・効果について順に説明します。
死後離縁の手続は『生存する当事者の意向』で行うことになります。
しかし『独断でできる』わけではありません。
家庭裁判所の許可が必要とされています。
<死後離縁|手続>
あ 死後離縁の要件
家庭裁判所の許可が必要
※民法811条6項
い 家裁の審判手続の申立人
ア 基本
死後離縁を希望する当事者
=生存している養子or養親
イ 法定代理人の関与
当事者が15歳未満の場合
→法定代理人が手続を行う
※家事事件手続法162条2項
う 役所への『養子離縁』の届出
家裁の審判(許可)を得た後に役所への届出を行う
『審判書謄本+確定証明書』が必要
4 死後離縁の法的効果|相続には影響ない
死後離縁の法的効果をまとめます。
<死後離縁の法的効果>
あ 死亡当事者の相続
既に死亡している養親or養子に関する相続
→『死後離縁』の影響はない
い 将来の相続関係
死後離縁により生じなくなる
例;兄弟・祖父母(と孫)などの関係
う 死亡当事者の親族との親族関係
終了する
↓
扶養義務が消滅する
え 苗字
ア 原則=復氏するイ 例外
役所に『続称の届出』をする→復氏しない
『養子である期間』が7年以上であることが必要
※民法816条
死亡当事者の『相続』は既に発生しています。
『養子縁組を解消した状態』は『死亡時に遡る』わけではありません。
相続の効果を覆すことにはなりません。
もちろん,死後離縁とは別に相続放棄の手続を行うことは可能です。
5 死後離縁|性質論=『夫婦の死別+姻族関係終了』の『養子』版
以上のように,死後離縁は特に大きな法的効果があるわけではありません。
実質的な意義・性質についてまとめます。
<死後離縁|性質論>
養親の死後もなお残存する養親の血族と養子との間の法定血族関係を消滅させる養子の一方的意思表示である
※東京高裁昭和52年6月13日
当事者の近親者との人間関係を解消する,という気持ち的な効果・目的が大きいと言えます。
この点,似ている制度として『夫婦の死別』後に行う『姻族関係終了』という制度があります。
この制度を『養子縁組』にコンバートしたものが『死後離縁』と言えるかもしれません。
ただし,家裁の手続の必要性など,異なる部分もあります。
詳しくはこちら|相続放棄の効果・他の制度との関係|遺産分割・遺留分・特別受益・姻族関係終了
6 死後離縁|許可基準|原則的に認められる
死後離縁について裁判所が許可を出す手続における『判断基準』を説明します。
<死後離縁|家裁の許可基準>
あ 基準
明らかに不純のものでない限り許可する
い 認められない=『不純』に該当する典型例
養方の財産を相続したのに養方の者に対する扶養義務や祭祀を免れる目的がある
※昭和28年大阪高裁管内家事審判官会同結果
7 死後離縁|恣意的ではない→死後離縁を許可した判例
死後離縁の許可を申し立てるケース自体は非常に少ないです。
そこで,参考となる判例が少ないのです。
貴重な判例を紹介します。
<『不純』ではない→許可を認めた判例>
あ 事案
養子縁組の主な目的
=老後の世話・家業の引き継ぎ
養子が先に死亡した
養子の子らには世話を期待できない
い 裁判所の判断
死後離縁は恣意的ではない
→死後離縁を許可した
※福岡高裁平成11年9月3日
本記事では,離縁の種類と,その中の死後離縁を認める基準について説明しました。
離縁に関する判断は,個別的な事情によって異なることもあります。
実際に離縁に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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