【建築協定の法的効果|違反に対する措置=工事停止・建物撤去・強制執行】
1 建築協定の法的効果|『私法上』の効果|『刑事罰』はない
2 建築協定×違反に対する措置|工事停止・損害賠償・建物撤去・強制執行
3 建築協定による『建物撤去請求』も可能|認めた判例
4 建築協定による『建物撤去請求』も可能|実質的に認めた判例
5 建築協定運営委員会|具体的な業務の遂行
本記事では『建築協定違反』に対する建物撤去などの措置を説明します。
『建築協定』の基本事項については別記事で説明してます。
詳しくはこちら|建築協定の基本|建築制限の項目・制度導入フロー|運用例・問題点・信託の活用
1 建築協定の法的効果|『私法上』の効果|『刑事罰』はない
建築協定の『法的効果』をまとめます。
要するに『違反があった場合』にどのような対応が可能か,ということに直結しています。
<建築協定の効果>
あ 私法上の効果がある
建築協定の規定内容に応じた法的効果が生じる(後述)
い 行政的罰則・刑事罰の対象ではない
行政処分・刑事罰の適用を受けない
う 第三者の拘束
建築協定成立後の新たな土地所有者
→建築協定に拘束される
※建築基準法75条
2 建築協定×違反に対する措置|工事停止・損害賠償・建物撤去・強制執行
建築協定の『違反』に対する措置は,基本的に『協定の中の条項の規定』となります。
建築協定で設定できる『措置・対応』をまとめます。
<建築協定における違反に対する措置の規定|例>
あ 違反工事の停止・差止請求
い 損害賠償請求
民事的なペナルティという趣旨も含む
う 違反建築物の撤去請求
例;『違反の是正措置』『違反建築物の除去』という規定(表現)
え 強制履行
この規定により裁判所を介した強制執行が可能となる
3 建築協定による『建物撤去請求』も可能|認めた判例
建築協定は『公的な罰則がない』ことか『弱い』というイメージもあるようです。
しかし通常は,建築協定の中で『強制履行・強制執行』が定められています。
実際に『建築協定に違反した部分の請求』が,正式に裁判所で認められた実例もあります。
<建築協定×違反部分撤去の請求|認めた>
あ 事例|建築協定の内容
建物の階層を地上2階までに制限する
い 違反建築
3階建建物が建築された
う 裁判所の判断
3階部分の撤去請求を認めた
※神戸地裁姫路支部平成6年1月31日;その後控訴あり
4 建築協定による『建物撤去請求』も可能|実質的に認めた判例
建築協定に違反した建物の『撤去請求』について理論的に肯定した判例を紹介します。
この事案では『個別事情』により結果的には『撤去請求』は棄却されています。
しかし,前提部分で,理論的に撤去請求が可能であることは示されたと言えます。
<建築協定×建物撤去の強制執行|実質的に認めた>
あ 個別事情により請求を棄却した判例
ア 請求棄却の理由
・協定違反に該当しない
・撤去の請求は権利濫用
イ 結論
撤去請求を棄却した
い 一般論(前提)部分
協定違反に対する『建物撤去の強制履行』の条項がある場合
→建物撤去の強制執行は認められる
※福岡高裁平成21年7月2日
5 建築協定運営委員会|具体的な業務の遂行
実際に建築協定の違反に対しては,具体的アクションの遂行をする必要があります。
つまり『工事停止の要請や提訴・訴訟遂行・強制執行』などです。
これらのアクション・業務を実際に行うための制度を,建築協定に盛り込んでおくのが通常です。
<建築協定締結後の運営=建築協定運営委員会の任務|例>
あ 建築計画の審査
い 建築物の基準適合性確認
建築工事中・完了後に建築協定の基準の適合性を確認する