【囲い込み・その他の不正×法的責任|行政/刑事/民事責任】
1 行政責任=国土交通省の監督|指示処分・業務停止処分
2 囲い込み×行政責任|レインズへの登録義務違反
3 刑事責任|囲い込み→詐欺・横領・背任罪
4 民事責任|囲い込み→損害賠償義務
本記事では不動産流通業界の不正についての法的責任を説明します。
1 行政責任=国土交通省の監督|指示処分・業務停止処分
不動産仲介業者の監督機関は国土交通省です。
不動産仲介業者の不正行為については,監督する立場にあります。
『監督』の一環として行政的な措置があります。
<行政責任=国土交通省の監督>
あ 指示処分
ア 法令違反
宅建業法などの法令に違反した時
イ 損害を与える系
・業務に関し取引の関係者に損害を与えた時
・損害を与えるおそれが大である時
ウ 公正を害する系
・業務に関し取引の公正を害する行為をした時
・取引の公正を害するおそれが大である時
※宅建業法65条1項
い 業務停止処分
ア 『あ』の『イ・ウ』と同様イ 指示処分に従わない時
※宅建業法65条2項
詳しくはこちら|宅建業者に対する監督処分の基本(種類・対象行為)
以上は一般的な宅建業者の行政責任の説明です。
囲い込みに関する行政責任については次に説明します。
2 囲い込み×行政責任|レインズへの登録義務違反
囲い込みでは『レインズ(REINS)への登録』を怠ることが定番の手口です。
これが宅建業法違反につながることもあります。
これについてまとめます。
<囲い込み×行政責任|レインズへの登録義務違反>
あ 違反する行為
『レインズへの登録』をしない・遅い場合
→宅建業法違反となる可能性がある
い レインズへの登録|義務・期限
媒介契約の種類 | 義務・期限 |
一般媒介契約 | 義務はない=任意である |
専任媒介契約 | 媒介契約締結後7日以内 |
専属専任媒介契約 | 媒介契約締結後5日以内 |
※宅建業法34条の2第5項,施行規則15条の8
3 刑事責任|囲い込み→詐欺・横領・背任罪
不動産仲介業者の不正行為は内容次第で,刑事責任の対象となることもあります。
囲い込みなどの不正行為に対する主な刑事責任をまとめます。
<不動産仲介業者の不正×刑事責任>
あ 詐欺罪
依頼者=売主を騙すこと
い 横領罪
依頼者=売主に帰属する金銭を着服すること
う 背任罪
任務に背いて委託者に損害を与えること
具体的・個別的事情によって該当する罪名は違ってきます。
それぞれの要件はちょっと複雑です。
ここでは主な罪名の指摘だけにとどめておきます。
4 民事責任|囲い込み→損害賠償義務
囲い込みなどの不動産仲介業者の不正行為は民事責任も生じます。
<不動産仲介業者の不正×民事責任>
あ 損害を被る者
仲介業務の依頼者
=売主・貸主
い 法的責任
不法行為or債務不履行or不当利得返還請求権
→損害賠償責任
う 損害・不当利得の内容
ア 受領済の費用イ 逸失利益
機会損失=売却機会のロス・時間的なロス
※民法415条,709条