【会員制・組合方式運送サービス×タクシー業該当性|判断基準=実質的独立性】
1 『会員制』の運送サービス×『旅客自動車運送事業』|利用者の『独立性』
2 会員制×『旅客自動車運送事業』|『独立性』は実質的に判断される
3 『共済会』制度→違法|長崎地裁佐世保支部昭和62年9月24日
4 『公正会』制度→違法|神戸地裁昭和42年11月29日
5 『組合員』制度→違法|鹿児島簡裁昭和37年5月2日
6 『共済組合』制度→違法|高松高裁昭和44年4月30日
7 判例はいずれも『実体・実質』がない→違法
1 『会員制』の運送サービス×『旅客自動車運送事業』|利用者の『独立性』
自動車の『運送サービス』を提供する事業は『旅客自動車運送事業』に該当します。
この点『会員制』であれば『旅客自動車運送事業』には該当しないという解釈につながります。
<会員制×旅客自動車運送事業|解釈の概要>
あ 『不特定の乗客』に該当しない
以前の条文・現在の法解釈では『不特定の乗客』が前提となっている
詳しくはこちら|旅客自動車運送事業(タクシーなど)の規制の全体像
い 『運送』(サービスの提供)に該当しない
『運送事業』は第三者へのサービス提供が前提となっている
『利用者が事業者から独立している』ことが前提となる
詳しくはこちら|シェアリング×会員制・組合方式|法規制の対象・該当性|基準=独立性
2 会員制×『旅客自動車運送事業』|『独立性』は実質的に判断される
自動車での乗客運送サービスを『会員制』『会員限定』にすれば『不特定の乗客』には該当しません。
前述の解釈論からは『旅客自動車運送事業』には該当しない=許可不要,という方向性になります。
『会員制度・組織を作ってその組織内部が自動車を共有する』というビジネスモデルの発想につながります。
この点,実際にこのビジネスモデルを稼働していたケースが過去にいくつもあります。
次に判例を紹介します。
3 『共済会』制度→違法|長崎地裁佐世保支部昭和62年9月24日
<タクシー業×『会員制』|判例>
あ 事案
『共済会』の会員だけが会員が『共有』する運転手付き自動車に乗車できる
入会のための資格制限・資格審査がなかった
会員ではない者も乗車ができる実情であった
利用者はメーターで算出される,距離に応じた料金を払っていた
運転者には利用料の約50%が共済会から支給されていた
い 裁判所の評価
実体は『旅客』=他人である=『特定の会員』ではない
実体は営業用タクシーの運転手と異ならない
共済会の収支=損益は共済会が負担する
→『営利目的』と言える
う 裁判所の判断(結論)
『一般乗用旅客自動車運送事業』に該当する
※長崎地裁佐世保支部昭和62年9月24日
4 『公正会』制度→違法|神戸地裁昭和42年11月29日
<タクシー業×『会員制』|判例>
あ 事案
ア 形式的スキーム
公正会の会員への運送サービス提供,という形式であった
イ 自動車の装備
自家用車に公正会の標示板・計算器・マーク等を設置した
ウ 利用者へのサービス提供
賛助員証の有無を確認する
賛助員証を持たない者にはこれを交付した上運送する
エ 資金のフロー
走行距離に応じて計算器により算定した金額を『支援金』として受け取る
運転者は,受領した支援金を公正会に納入する→6割は『返給』される
一定額を超える部分は納入免除=運転者の直接収益となる
い 裁判所の判断
『賛助員』の実質は一般乗客=他人,である
『支援金』は実質的に『運送の対価=運賃』である
運送サービスは『自動車運送事業』に該当する
※神戸地裁昭和42年11月29日
要するに『会員制』というものが実質的には機能していなかったのです。
実体・実質からすると『不特定多数向けのサービス』と評価されたのです。
5 『組合員』制度→違法|鹿児島簡裁昭和37年5月2日
<タクシー業×『会員制』|判例>
あ 事案
『組合員』のみに運送サービスを提供していた
『第1種組合員』は自家用車を運転し『運送サービス』を提供する
『第2種組合員』は運送サービスを利用する
『第2種組合員』は,組合員名簿上だけでも2000人以上存在する
資格制限・身元確認・理事会の審査なし
実際に偽名・虚偽の記載が多い
い 裁判所の評価
組合員名簿によっても『人物の範囲』が適確に把握できない
実質的に営業用タクシーの料金と異なるところはない
『維持費』名目で徴収される金員の多寡による利害
→『第1種組合員』の得失に帰する
→『営利目的』あり
う 裁判所の判断(結論)
『運送事業』に該当する
※鹿児島簡裁昭和37年5月2日
6 『共済組合』制度→違法|高松高裁昭和44年4月30日
<タクシー業×『会員制』|判例>
共済組合組織による利用者の乗車営業は『自動車運送事業』に該当する
※高松高裁昭和44年4月30日
7 判例はいずれも『実体・実質』がない→違法
上記の判例となっているケースはいずれも『実体・実質』が伴っていないものでした。
そのため結局『違法』となっています。
逆に言えば『実体・実質』を伴っているので検挙→裁判,となっていないケースがあるかもしれません。
現在,従来の枠組みを踏まえ『違法』を避けるビジネスモデル構築の競争が幕を開けています。
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