【精神病×離婚原因|基本|判断方法|精神病の種類・程度・回復の見込】
1 精神病×離婚原因|種類=痴呆・そううつ病など
2 精神病×離婚原因|条文規定・結婚制度論
3 精神病×離婚原因|実務での具体的判断方法
4 精神病×離婚原因|程度・回復の見込|解釈論
5 精神病×離婚|判例|精神病が『強度』ではない
6 精神病×離婚|判例|『一時的回復』があるが程度が強度
7 精神病×離婚原因|判例|精神病の発症が繰り返されている
1 精神病×離婚原因|種類=痴呆・そううつ病など
『精神病』は離婚原因の1つとされています。
一定の程度が必要とされます(後述)。
まずは『精神病』の典型例をまとめます。
<精神病の種類|例>
ア 早期性痴呆イ 麻痺性痴呆ウ そううつ病エ 偏執病オ 初老期精神病
2 精神病×離婚原因|条文規定・結婚制度論
(1)精神病×離婚原因|条文規定
『精神病』を離婚原因として定める民法の条文をまずは確認します。
<精神病×離婚原因|条文規定>
配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがない
※民法770条1項4号
(2)精神病×離婚原因|趣旨=結婚制度論
精神病を離婚原因として規定している趣旨についてまとめます。
<精神病×結婚制度論>
あ 『保護主義』
夫婦間は困った時こそ,相互に協力し助け合うべき
→『回復の見込み』がある以上は『寄り添ってサポートすべき』
=解放しない(離婚を認めない方向)
い 『破綻主義』
現実に『夫婦としての共同生活ができない状態』にある
→拘束しても意味はない
=解放すべき(離婚を認める方向性)
う 解釈論
『破綻主義』・『保護主義』の両方がベースとなる
『保護主義』が,やや強い傾向にある
3 精神病×離婚原因|実務での具体的判断方法
実務では『精神病』の判断が難しいことがあります。
判断する具体的な方法の概要をまとめます。
<精神病×離婚原因|実務での判断方法・概要>
あ 医師による鑑定
通常,精神科医の鑑定結果を用いる
い 法的判断
鑑定結果だけで判断するわけではない
精神病の『程度』・実質的合理性などを独自に考慮・判断する
医師による鑑定が必要ですが『鑑定で判断が決まる』というわけでもないのです。
4 精神病×離婚原因|程度・回復の見込|解釈論
『精神病』のうち,一定の程度に達しているものが『離婚原因』となります。
この『程度』の基準についてまとめます。
<精神病×離婚原因|程度・回復の見込|解釈論>
あ 『強度の精神病』
ア 解釈
婚姻の本質的効果を維持できない程度の重症
=夫婦間の役割分担・協力を果たすことができない程度
例;同居・協力・扶助義務
イ 具体的典型例
夫婦としてのコミュニケーションも取れないような状態
い 『回復の見込みがない』
ア 解釈
不治の病
イ 該当しない例
入退院を繰り返している
退院のたびに日常生活に支障がない程度に回復している
→『不治』ではない
=該当しない
なお『離婚原因』として認められても『離婚が認められる』とは限りません。
『裁量棄却』となる可能性が高いです。
『裁量棄却』を回避できた場合に初めて離婚が認められることになります。
詳しくはこちら|精神病×離婚|裁量棄却・具体的方途論|典型事情|不合理性=批判
次に『精神病の程度』について判断された判例を紹介します。
5 精神病×離婚|判例|精神病が『強度』ではない
<精神病が『強度』ではない|判例>
あ 事案
通院治療を受けながら単身生活を送っている
単純な事務作業を行うことは可能である
医師・ケースワーカー・家族などの一定のケアが必要である
中程度の欠陥治療の状態にある
自立的な社会生活を送ること自体ができる
い 裁判所の判断
『強度の精神病』に該当しない
→離婚を認めない
※東京地裁昭和59年2月24日
6 精神病×離婚|判例|『一時的回復』があるが程度が強度
<精神病が『一時的回復』があるが程度が強度|判例>
あ 事案
妻が精神病になった
一時的な回復はみられる
しかし,夫婦としての義務を果たすことができない
い 裁判所の判断
『強度の精神病』に該当する
→他の事情の判断もある(別記事;リンクは末尾に表示)
※最高裁昭和45年11月24日
7 精神病×離婚原因|判例|精神病の発症が繰り返されている
<精神病の発症が繰り返されている|判例>
あ 事案
妻の言動に積極性がない
病識を欠く
感情障害が著しい
漸次統合失調症→人格荒廃過程にある
再発が8回あった
主婦としての日常生活の能力がない
い 裁判所の判断
『強度の精神病+回復の見込みなし』に該当する
※金沢地裁昭和36年5月10日
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