【定期借地の保証金(敷金)の所得税は使途によって違いがある】
1 保証金や敷金に対する所得税の基本
2 保証金・敷金×所得税|経済的利益の算定
3 保証金・敷金×所得税|経済的利益算定後
4 保証金の使途×所得税|事業用運用
5 保証金の使途×所得税|金融資産運用
6 保証金の使途×所得税|家事消費
7 権利金に対する所得税の課税(概要)
1 保証金や敷金に対する所得税の基本
定期借地契約では契約当初に保証金が支払われることがあります。
詳しくはこちら|定期借地における権利金や保証金の支払(違いと実情)
『保証金・敷金』についての税務上の扱いの基本的事項をまとめます。
<保証金や敷金に対する所得税の基本>
あ 基本的性格
保証金・敷金=『返還を要する預り金』
→『所得』には該当しない
い 『運用益』
長期間預かる
→『運用益=利息に相当する』が生じる
→『運用益』について所得税の対象となる
保証金・敷金は『収入』ではないが,その『運用益』は『収入』として扱われるのです。
次に『運用益』の算定について説明します。
2 保証金・敷金×所得税|経済的利益の算定
課税上,収入として扱われる保証金・敷金の『経済的利益』の算定方法をまとめます。
<保証金・敷金×所得税|経済的利益の算定>
あ 運用益=『経済的利益』算定
経済的利益
=『保証金額』-(保証金額×基準年利率による複利現価率)
い 複利現価率
国税庁の通達により随時示されている
外部サイト|国税庁|基準年利率
3 保証金・敷金×所得税|経済的利益算定後
保証金・敷金の『経済的利益』を算定した後の課税額算定方法をまとめます。
<保証金・敷金×所得税|経済的利益算定後>
あ 経済的利益が土地価格の2分の1以下の場合;通常
経済的利益に対する課税→なし
保証金の運用使途に応じた課税→あり
い 経済的利益が土地価格の2分の1超の場合
経済的利益に対する課税
→『譲渡所得』として課税対象となる
分類=『不動産譲渡所得』=分離課税
4 保証金の使途×所得税|事業用運用
借地の保証金の『使途』によって所得税の課税方法が違います。
最初に『事業用の運用』をした場合について説明します。
<保証金の使途×所得税|事業用運用>
あ 事業用運用|典型例
土地造成費・賃貸事業の借入金返済・新規の建物建築
い 税務的扱い
利息相当額を『収入・経費』のいずれにも計上する
実質的には課税されない
う 趣旨
『払わなくて済んだ』と『実質的に得た』が実質的に同一の物に対する評価と言える
5 保証金の使途×所得税|金融資産運用
預かった保証金を『金融資産の運用』に使った場合の所得税課税についてまとめます。
<保証金の使途×所得税|金融資産運用>
あ 金融資産運用|典型例
預貯金・公社債・指定金銭信託
貸付信託・抵当証券・一時払い養老保険
い 税務的扱い
計上不要である
『利子』について受領時に源泉分離課税されて納税関係が完了する
う 趣旨
『利子への課税』が『運用益』と実質的に同一
→1箇所で計上・課税すれば足りる
→別の『運用益』を計上すると2重に評価・課税することになってしまう
6 保証金の使途×所得税|家事消費
預かった保証金の使途が『家事消費』に該当する場合の扱いをまとめます。
<保証金の使途×所得税|家事消費>
あ 家事消費|典型例
一般的な家事費としての使用
例;自宅の建築費用
い 税務的扱い
ア 基本的扱い
『家事費として使用した金額』について『利息相当額』を『不動産所得』に計上する
イ 利息相当額|利率
『適正な利率』は毎年国税庁が通達として公表している(後記リンク)
例;平成26年度分→0.5%
ウ 課税期間
保証金を返還するまでの毎年
う 趣旨
純粋に『払わなくて住んだ利息』と言える
<参考情報>
次の扱いについて説明している
・定期借地における保証金への課税
・適正な利率
外部サイト|国税庁|定期借地の保証金の課税・適正な利率
7 権利金に対する所得税の課税(概要)
定期借地の契約締結の際に,保証金ではなく権利金が支払われるケースも多いです。
詳しくはこちら|定期借地における権利金や保証金の支払(違いと実情)
権利金への課税は,保証金とは大きく異なります。
権利金への所得税の課税については別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|借地の権利金の所得税は性格や金額によって違いがある