【Googleストリートビューの適法性(平成24年福岡高裁の全体像)】
1 Googleストリートビュー|適用される法令
2 Google×電気通信事業法による『個人情報』規制
3 ストリートビュー|総務省・ICT研究会|見解|概要
4 ストリートビュー×プライバシー|平成24年福岡高裁
1 Googleストリートビュー|適用される法令
Googleのサービスには,直接的な『検索』ではないものも多くあります。
その1つとして『ストリートビュー』が挙げられます。
まずは代表的な法律の適用の有無についてまとめます。
<ストリートビュー|適用されるルール>
あ 個人情報保護法
グーグルには適用されない
『個人情報』が含まれない
詳しくはこちら|『個人情報』の定義(個人識別符号・容易照合性の意味)と具体例
→『個人情報取扱事業者』には該当しない
詳しくはこちら|『個人情報取扱事業者』の定義(5000件要件の撤廃)
→個人情報保護法の規制は適用されない
詳しくはこちら|個人情報保護法の規制(個人情報の第三者提供禁止・訂正や利用停止の請求)
い 電気通信事業法
ア 一般的な規制概要
個人情報の扱いにおいて『本人の承諾』などの一定の義務を負う(後記)
イ ストリートビューの扱い
グーグルは『電気通信事業者』に該当する
しかし,ストリートビューは個人情報を含まない
→規制対象ではない
2 Google×電気通信事業法による『個人情報』規制
前述のとおり,ストリートビューについては『電気通信事業法』は適用されません。
参考として電気通信事業法による個人情報の配慮・規制をまとめておきます。
<電気通信事業法による『個人情報』に関する規制>
あ 電気通信事業法の規制
具体的な内容はガイドラインに規定されている
い 総務省のガイドライン
『電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン』
平成16年総務省告示第695号
う ガイドラインの重要な項目
『個人情報』を公開する場合次のいずれかを行う
ア 本人の同意を得るイ オプトアウトの要件を満たす
※電気通信事業ガイドライン15条2項
ストリートビューの画像に人物が写っていた場合でも,これは『個人情報』には該当しません。
ストリートビューは,電気通信事業法や総務省ガイドラインによる規制対象ではないのです。
3 ストリートビュー|総務省・ICT研究会|見解|概要
Googleストリートビューに関する公的な見解があります。
総務省の設置した研究会による適法性の見解と提言が公表されています。
概要をまとめます。
<ストリートビュー|総務省・ICT研究会|見解|概要>
あ 見解|概要
インターネット道路周辺映像提供サービスについて
一定の措置・配慮をしている限り適法である
Googleストリート・ビューの現状は適法である
い 提言|概要
次の措置・配慮を行うことが望ましい
ア 適法性の確保を徹底することイ ユーザー・一般の方の不安を解消すること
詳しくはこちら|Googleストリートビュー×適法性・提言|ICT研究会・第1次提言
4 ストリートビュー×プライバシー|平成24年福岡高裁
ストリートビューについての裁判例を紹介します。
<ストリートビュー×プライバシー|平成24年福岡高裁>
あ ストリートビューの内容
地理情報を提供するサービス
街中をグーグル・カーで撮影する
インターネットの『地図サービス』において画像を表示する
い 裁判所の判断|地域全般の撮影行為
居室・ベランダを含む居住地域周辺の撮影行為
→違法性を否定した
う 裁判所の判断|洗濯物などの撮影
居室・ベランダ・洗濯物が撮影された
しかし,洗濯物が何であるのか判然としない
この画像に不当に注意を向けさせるような方法で表示されていない
→受忍限度の範囲内である
=私生活上の平穏が侵害されたとは認められない
=プライバシー侵害を否定した
※福岡高裁平成24年7月13日
ストリートビューは一般的に適法という解釈が定着しています。