【ステマ|口コミ・有名人方式|法的責任・レピュテーションリスク】
1 ステルスマーケティング;ステマ|意味・語源
2 ステマのバラエティ|口コミ・有名人
3 ステマの実質的な害悪=利益の移転
4 ステマ記事×マーケット|相場=1記事40〜60万円
5 ステマ×リスク|2種類|法的/レピュテーションリスク
6 ステマ×法的責任|損害賠償・措置命令・刑事罰
7 『ステマ』のステルス|高度化
8 ステマの判定の困難性|対価・真実性の両方が重要
9 有名人の賞賛コメント|現実的な状況整理
<注意>
当事務所・本記事は違法・不当な行為を推奨するものではありません。
具体的な解釈論について明確にしたい場合は法律相談をご利用ください。
1 ステルスマーケティング;ステマ|意味・語源
最近はオンラインでの広告が非常に普及しています。
オンラインの広告では『ステルスマーケット』の問題もよく生じています。
<ステルスマーケティング;ステマ|意味・語源>
あ ステマ|意味
広告主とメディアが結託して,あたかも公平な一般記事のように偽装する
い 『偽装』の判断の重要要素
記事(記載内容)が『中立・自発的』ではないことの明記・表示の有無
表示例;『広告』『PR』『提供』『特別企画』
う 語源
ア ステルス性
兵器をレーダーなどのセンサー類から探知され難くする軍事技術の総称
イ 英語の『stealth』
『こっそり』『隠れる』などの意
2 ステマのバラエティ|口コミ・有名人
ステマは,大きく2種類に分類できます。
<ステマのバラエティ|口コミ・有名人>
あ 『口コミ』方式
中立な投稿者を装って事業者が投稿する
い 『有名人の自発的記事』方式
有名人に商品・サービスの促進的記事作成・公表を依頼する
掲載場所の例;オフィシャルサイト・SNS・ブロクなど
有名人自身が実際に持った『良い印象』を記載した場合は該当しない(後述)
3 ステマの実質的な害悪=利益の移転
ステマは『弊害』を生じます。
分析的にまとめます。
<ステマの実質的な害悪=利益の移転>
あ ステマの影響
当事者 | 効果 |
広告主 | プラス |
メディア | プラス |
広告代理店・PR会社 | プラス |
ライター | プラス |
閲覧者・読者 | マイナス |
い ステマ×利益移転
『閲覧者・読者の利益』を『他の4者に移転する』効果を生じる
4 ステマ記事×マーケット|相場=1記事40〜60万円
ステマの悪影響は『利益の移転』です(前述)。
メディアや広告主は『大きな利益』を得ます。
そこで一定のコストをかけてでも実行するインセンティブがあります。
ステマ記事作成への協力についてのマーケット・相場が形成されています。
<ステマ記事×マーケット>
相場=1記事40〜60万円
影響力が小さい場合は20万円〜という相場もある
※『週刊ダイヤモンド2015年7月11日』p59
※『週刊ダイヤモンド2015年8月22日』p13
5 ステマ×リスク|2種類|法的/レピュテーションリスク
ステマを行うことによるリスク・ペナルティがあります。
大きく2種類に分類できます。
<ステマ×リスク|2種類>
あ 法的リスク
景品表示法の『不当表示』に該当する可能性がある(後記)
い レピュテーションリスク
強い批判・非難が生じる可能性がある
いわゆる『炎上』に発展することもある
詳しくはこちら|企業×SNS|基本|公式アカウント=中の人|従業員のSNS利用の監督
6 ステマ×法的責任|損害賠償・措置命令・刑事罰
ステマにより生じることがある法的責任をまとめます。
<ステマ×法的責任|民事・刑事>
あ 行政・刑事|景品表示法違反
ア 違反事項
不当表示・優良誤認
※景品表示法5条1号,2号
イ 違反×措置命令
行政による措置命令
※景品表示法6条柱書前段
ウ 措置命令違反×罰則
措置命令に応じなかった場合
法定刑=懲役2年以下or罰金300万円以下
併科もある
両罰規定もある
法人の法定刑=罰金3億円以下
※景品表示法36条,38条1項1号
詳しくはこちら|景品表示法の基本(優良誤認・有利誤認と調査・指導・措置命令・罰則)
い 民事|損害賠償請求
損害が生じた場合,事情により賠償責任が生じる
※民法709条
7 『ステマ』のステルス|高度化
ステマを行う事業者は一定のリスクがあります(前述)。
そこで,リスクを回避する方法も開発されています。
<『ステマ』のステルス|高度化>
あ ステマ^2(ステマのステルス)
『ステマ』部分を記事から除外する
リンクのみ掲出し,リンク先サイトにてステマ部分が表示される
い ステルス性
メディアには『ステマであること』が分かりにくい
8 ステマの判定の困難性|対価・真実性の両方が重要
実務的なステマの判定は一定の困難性があります。
記事・記載内容が『虚偽』かどうかの判断の中身を分析します。
<有名人の賞賛コメント×ステマの判定の困難性>
あ 事案
有名人がメーカーから商品を無償で提供された
有名人がこれを使用(試用)した
有名人がSNSなどで『好印象の感想』を記載・公表した
い 『ステマ』の判断|主要な判断基準
『実際のものより著しく優良であるとの表示』
※景品表示法5条1号;優良誤認
う 理論的な判断基準
ア 本当に『良い』と思ったのでそのように書いた場合
『実際のものより優良との表示』に該当しない
金銭受取の有無は,理論的には関係ない
イ 『良い』と思わなかったが『良い』と書いた場合
原則的に『優良誤認』に該当する
しかし,メーカーが『記事の作成・公表』を有名人に頼んだことが前提である
頼んでいない場合『(自ら)表示した』のと同視できない
このように『違法/適法の限界』は判定が難しいゾーンです。
本質的に『言論・表現の自由』の制限となる法規制です(憲法22条)。
元々規制自体が『最小限』であるべき,という要請が強いと言えます。
9 有名人の賞賛コメント|現実的な状況整理
有名人のコメントについては,法的な責任の判断よりも重要なことがあります。
『レピュテーション・信用性』への影響です。
これをまとめます。
<有名人の賞賛コメント|現実的な状況整理>
あ 現実的な状況整理
有名人の発言は自身の信頼性・信用度をかけている
い 具体的メカニズム
有名人が『特定の商品・サービス』を賞賛した
+仮に賛同する閲覧者・読者が少ない場合
→有名人自身の信頼性・信用度が低下する
<参考情報>
平成23年10月28日
消費者庁
『インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項』
外部サイト|消費者庁|広告表示・景品表示法上の問題点及び留意事項