【返還時期の定めのない貸金は『相当期間』の催告が必要】
1 返還時期がない貸金は,催告→返済となる
2 『相当期間』は通常1週間程度とされる
3 『相当期間』経過前でも仮差押は可能
1 返還時期がない貸金は,催告→返済となる
お金の貸し借り(金銭消費貸借)が,知人同士のような親しい仲で行われた場合,明確に返済期限を決めないこともあります。
この場合は,貸主としては,借主に対し「相当の期間」を定めて「返還の催告」をすることができます(民法591条1項)。
相当期間が経過した後に,正式な『返還請求』ができるようになります。
逆に言えば,即刻の返還請求は,法律上は認められていません。
これについては,消費貸借以外の一般的な債務とは扱いが異なります。
詳しくはこちら|督促・催告・相当期間に関する問題の整理
2 『相当期間』は通常1週間程度とされる
条文上相当の期間としか記載されておらず,日数までは明記されていません。
取引上一般に必要とされる期間,と解釈されています。
そして,一般に必要とされる期間としては,平均的な場面では1週間前後であると考えられています。
勿論,個別的な特殊事情があれば違ってくることもありましょう。
ただし,実際には,本当に特殊事情がある場合は,それに対応して返済期限や猶予期間を明確に設定していることが多いでしょう。
明確に合意していなくても,金銭貸付の経緯から,黙示的に,返済期限や猶予期間を設定したと言えることもあるでしょう。
3 『相当期間』経過前でも仮差押は可能
<発想>
事業をしている友人に資金を貸した
どうも,資金繰りが悪化している様子だ
友人が,売上などの入金された現金を他の返済に回される可能性がある
そうすると,回収できなくなりそうだ
返済期限を決めていない場合は,催告(請求)から1週間程度経過しないと,法的な請求はできません。
つまり,財産の差押えができるのは,1週間程度経過した後,ということです。
今すぐに押さえたい場合は,仮差押の手続きによれば可能です。
この場合,先行して仮に押さえないと,後からでは押さえられなくなるという事情がないとできません。
借主の資金繰りの悪化について,一定の証明をしなくてはなりません。
証明は簡易なもので良いとされています。
これを疎明(そめい)と呼んでいます。
別項目;仮差押
条文
[民法]
(返還の時期)
第五百九十一条 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
(略)