【遺産分割|手続の流れ|協議・調停・審判・保全処分・欠席対応・寄与分との関係】
1 『遺産分割』は協議→調停→審判という手続の流れとなる
2 遺産分割×審判前の保全処分|暫定的な措置ができる
3 遺産分割|家裁の調停・審判の流れ
4 審判に対する即時抗告|期限は2週間・高裁へ移る
5 家事調停・審判×欠席のフォロー|受託和解・電話会議・調停に代わる審判
6 遺産分割と寄与分|手続としては別だが『セット』が前提
1 『遺産分割』は協議→調停→審判という手続の流れとなる
遺産分割の具体的な手続はいくつかあります。
全体的な流れを整理します。
<遺産分割|手続の流れ>
あ 協議
相続人同士で協議する
『遺産分割協議』と呼ぶ
通常,最初に行う
い 審判前の保全処分
必要に応じて行うことがある
う 調停
家庭裁判所に申し立てる
え 審判
通常は『調停の後』に行われる
調停が不成立となった時に『審判に移行』する
お 抗告
審判に不服がある場合は『即時抗告』ができる
抗告審は高裁で審理される
2 遺産分割×審判前の保全処分|暫定的な措置ができる
遺産分割の手続は完了までにある程度の期間を要します。
そこで,事前に,完了までの間に暫定措置を行う手続もあります。
<遺産分割×審判前の保全処分>
あ 保全処分利用が望まれる事情
次のいずれにも該当する場合
ア 調停が長期化することが想定されるイ その間の遺産の管理が必要である
い 典型的具体例
遺産の中に補修の必要な危険な不動産がある
定期的な家賃収入の管理が必要である
う 手続の流れ
『審判前の保全処分』の申立を行う
→家裁が『財産の管理者=遺産管理人』を選任する
※家事事件手続法189条
※『月報司法書士11年12月』日本司法書士会連合会p22〜
3 遺産分割|家裁の調停・審判の流れ
協議で決められない場合は家裁の手続を利用できます。
<遺産分割|家裁の調停・審判の流れ>
あ 遺産分割|手続の種類
『家事審判対象事件−別表第2事件』に分類されている
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)
い 事実上の調停前置
『遺産分割』の調停・審判のいずれかを申し立てる
最初から『審判』の場合→家裁が『調停に付する』ことが多い
詳しくはこちら|一般的付調停|事実上の調停前置・必要的付調停との違い
※民法904条の2第2項
う 審判移行
調停が不成立となると審判に自動的に移行する
詳しくはこちら|別表第2事件の家事調停の不成立による審判移行(対象事件・管轄・資料の扱い)
4 審判に対する即時抗告|期限は2週間・高裁へ移る
最初に『裁判所としての正式な判断結果』が出るのは『審判』です。
当然,当事者が内容に納得できない,ということもあります。
その場合には『即時抗告』ができます。
審判に対する即時抗告は期限に注意が必要です。
抗告審は高裁となり,実質的な最終の審理・判断となります。
<審判に対する即時抗告>
あ 即時抗告の方法
(即時)抗告状を裁判所に提出する
い 即時抗告の期限
審判の告知を受けた日から2週間
告知を受けた者によって期限が異なる
※家事事件手続法198条1項1号,86条
5 家事調停・審判×欠席のフォロー|受託和解・電話会議・調停に代わる審判
調停の手続は『当事者全員が合意』しないと調停成立とはなりません。
また,出席しないことによる不利益もありません。
そこで当事者が『出席しない』ということがよくあります。
そこまで対立が激しくない場合でも『忙しくて時間が取れない』ということもあります。
このような状況で活用できる制度があります。
<家事調停・審判×当事者の欠席のフォロー>
あ 書面受諾和解
当事者が書面で受諾の意思を伝える
→出席しなくても調停成立となる
※家事事件手続法270条
詳しくはこちら|書面受諾和解・調停|期日に出席せずに和解成立・電話会議システムにリプレイスされ気味
い 電話会議システム
当事者が電話で調停・審判に出席できる
→調停成立もできる
※家事事件手続法268条
詳しくはこちら|電話会議システム|電話で裁判に参加できる|離婚・離縁成立だけはNG
う 調停に代わる審判
裁判所が調停段階で『審判』を行うことができる
当事者の『異議』により効力を失う
『異議』がなければ確定する
<→詳しくはこちら|調停に代わる審判(家事事件手続法284条)の理論と解釈>
https://www.mc-law.jp/sozokuigon/28444/
調停に代わる審判については,本来,実質的に合意成立に近い場合に利用されます。
しかし『相手が出頭しない』場合にも発動されることがあります。
もちろん,相手が納得しない内容があれば『異議』を出されてしまいます。
一方で『異議を出す』ことすら見逃されて,うまく確定に至ることもあります。
6 遺産分割と寄与分|手続としては別だが『セット』が前提
『寄与分』の制度については家裁の調停・審判は『別の事件』扱いです。
とは言っても,実際には『併合』つまり『セットとする』ことが前提となっています。
詳しくはこちら|寄与分の手続|協議・家事調停・審判|遺産分割との併合・申立が遅い→却下
なお,寄与分と似ている制度として,特別受益があります。特別受益はもともと遺産分割と別の手続という扱いがありません。理論的にも現実にも,遺産分割に含まれることになります。
詳しくはこちら|特別受益に関する裁判手続(遺産分割手続と確認訴訟)と法的性質論
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