【不倫(不貞)の慰謝料として50〜500万円を認めた裁判例】

1 不倫の慰謝料請求
2 男性|家庭破壊工作→500万円
3 男性|上下関係で責任小→(500万円から)200万円
4 男性|双方に責任あり→150万円
5 男性|すでに破綻気味→100万円
6 女性|不貞関係20年→300万円
7 女性|定番・職場内不倫→200万円
8 女性|同棲+離婚の危機→150万円
9 女性|夫婦の同居は維持→100万円
10 女性|職場の部下女性+夫婦修復→50万円

1 不倫の慰謝料請求

不倫(不貞相手)は違法ですので、通常、慰謝料請求が認められます。
詳しくはこちら|不貞相手の慰謝料|理論|責任制限説|破綻後・既婚と知らない→責任なし
ごく平均的な不倫の慰謝料の相場は200〜300万円程度です。
詳しくはこちら|不貞慰謝料の金額に影響する事情(算定要素)
しかし、当然、個別的事情によって慰謝料の金額は大きく変わってきます。
本記事では、実際のケースについて裁判所が慰謝料の金額を判断した裁判例を紹介します。

2 男性|家庭破壊工作→500万円

<男性|家庭破壊工作→500万円>

あ 慰謝料額
請求額 認容額
500万円 500万円
い 事案概要

不貞行為=妻と婚外男性
夫と婚外男性が、繰り返し、交際をやめるということを話し合った
しかし妻と婚外男性は交際を続けた
婚外男性は、妻が夫から離れて自分のもとに来るようにしたいと思い、夫婦の家に電話をかける、庭先で妻の名を呼ぶ、などを繰り返した
婚外男性は、夫婦関係を悪化させれば妻が自分のもとに来ると考え、夫の勤務先に、妻との性的関係を詳細に記載し写真を添付した葉書を10通送った
その後、婚外男性と妻は同棲を続けていた
※浦和地判昭和60年12月25日

請求額を上げておけば500万円よりも上の金額が認容された可能性があります。
弁護士の訴額設定が妥当ではなかったと思われます。
他の後記事例ではマージンが取られています。
つまり、いずれも認容額よりも大幅に大きい請求額が設定されています。
この背景には、この処分権主義による上限による抑制現象を回避する目的もあるのです。
詳しくはこちら|夫婦トラブルに関与した者の損害賠償責任(カウンセラー・弁護士)

3 男性|上下関係で責任小→(500万円から)200万円

<男性|上下関係で責任小→(500万円から)200万円>

あ 慰謝料額
請求額 認容額
700万円 200万円
い 事案概要

不貞行為=妻と婚外男性
外泊を伴う不貞行為が2回あった
夫婦関係は破綻し、修復の目処が立っていない
婚外男性の雇用主は夫であった(雇用主の妻が不貞配偶者であった)
妻の方が社会的、経済的に優越した立場にあった
妻の責任が大きい(婚外男性の責任は相対的に小さい)

う 法解釈論

主たる責任は不貞を働いた配偶者にあり、不貞の相手方の責任は副次的なものである、という解釈(制限説)を採用した
詳しくはこちら|不倫の責任に関する見解は分かれている(4つの学説と判例や実務の傾向)
※東京高判昭和60年11月20日

え 原審の判断

原審では、欠席判決であり、慰謝料として500万円が認められていた
※前橋地裁高崎支判昭和59年9月19日

4 男性|双方に責任あり→150万円

<男性|双方に責任あり→150万円>

あ 慰謝料額
請求額 認容額
1000万円 150万円
い 事案概要

不貞行為=妻と婚外男性
不貞期間が長期であった
不貞開始前は破綻していなかった
→不貞開始後に破綻した
妻の責任も大きかった
※東京地裁平成10年5月29日

5 男性|すでに破綻気味→100万円

<男性|すでに破綻気味→100万円>

あ 慰謝料額
請求額 認容額
800万円+弁護士費用147万円 100万円+弁護士費用10万円
い 事案概要

不貞行為=妻と婚外男性
妻はスナック勤務であった
妻が積極的であった
不貞は『夫婦同然の暮らし』に至っていた
妻は夫への不満を持っていた
※東京地裁平成10年7月31日

6 女性|不貞関係20年→300万円

<女性|不貞関係20年→300万円>

あ 慰謝料額
請求額 認容額
1200万円 300万円
い 事案概要

不貞行為=夫と婚外女性
公立学校の教員同士の不貞
関係期間が約20年であった
※大阪地裁平成11年3月31日

7 女性|定番・職場内不倫→200万円

<女性|定番・職場内不倫→200万円>

あ 慰謝料額
請求額 認容額
2000万円+弁護士費用200万円 200万円+弁護士費用20万円
い 事案概要

不貞行為=夫と婚外女性
不貞行為者は職場の同僚同士であった
不貞の2人は『再婚した夫婦』のようにふるまっていた
※東京高裁平成10年12月21日

8 女性|同棲+離婚の危機→150万円

<女性|同棲+離婚の危機→150万円>

あ 慰謝料額
請求額 認容額
1000万円 150万円
い 事案概要

不貞行為=夫と婚外女性
不貞関係の2人は同棲している
夫婦は離婚の危機に瀕している
※横浜地裁昭和61年12月25日

9 女性|夫婦の同居は維持→100万円

<女性|夫婦の同居は維持→100万円>

あ 慰謝料額
請求額 認容額
1000万円 100万円
い 事案概要

不貞行為=夫と婚外女性
情交関係は2年以上継続していた
夫婦の同居は維持されていた
その間、夫Bは家業(飲食店)を真面目に行った
最終的に夫婦関係は改善された
※名古屋地裁平成3年8月9日

10 女性|職場の部下女性+夫婦修復→50万円

<女性|職場の部下女性+夫婦修復→50万円>

あ 慰謝料額
請求額 認容額
500万円 50万円
い 事案概要

不貞行為=夫と婚外女性
夫=上司、不貞女性=部下という関係であった
不貞に至りこれを継続した経緯は、夫が主導的であった
夫婦間の信頼関係が危機状態に至った要因には、不貞以外の事情もあった
不貞女性が積極的に不貞関係を解消した
不貞女性は職場を退職し、近隣で転職することをあきらめ、地方の実家に戻った
提訴後、夫婦関係は修復した
※東京地判平成4年12月10日

本記事では、不倫の慰謝料請求についての実際のケースの裁判例を紹介しました。
これらの裁判例から分かるように、細かい個別的な事情によって慰謝料の金額は大きく違ってきます。
また、事情によっては慰謝料請求自体が認められないこともあります。
詳しくはこちら|既婚男性の交際(不倫)相手と妻の両方が慰謝料を請求した裁判例(集約)
また、事情によっては、不倫をした相手からの慰謝料請求が認められるという逆転の状態になることもあります。
詳しくはこちら|既婚と知って交際した者からの慰謝料請求は事情によって認められる
いずれにしても、実際の裁判での主張の組み立てや立証のやり方次第で結論が変わるということです。
実際に不倫の問題に直面されている方は、本記事の内容だけで判断せず、弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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