【上告|申立・流れ|上告提起・上告受理申立|上告事由・上告受理事由】
1 高裁の判決×不服申立|種類=上告提起+上告受理申立
2 上告事由=憲法違反・一定の法令違反
3 上告受理事由(概要)
4 上告審|手続の流れ|申立から審理に至るまで
5 上告理由書の送付|1・2審との違いに注意
1 高裁の判決×不服申立|種類=上告提起+上告受理申立
高等裁判所の判決に不満を持つ,という状況もあります。
この場合の不服申立について説明します。
まずは不服申立の手続の種類についてまとめます。
<高裁の判決×不服申立|種類>
あ 上告提起
『上告事由』を理由とするもの
非常に限定されている(後記)
い 上告受理申立
『上告受理事由』を理由とするもの
やや広いが,最高裁が裁量で『受理しない』ことができる(後記)
う 両方の申立
『あ・い』の両方の事由がある場合
→『あ・い』の両方を申し立てることができる
一般的には『最高裁での審理=第3審』というものです。
『単に高裁判決に不満がある』だけでは最高裁での審理はできません。
『上告事由』や
2 上告事由=憲法違反・一定の法令違反
上告提起の対象となる『不服内容』が『上告事由』です。
非常に限定されています。
<上告事由>
あ 憲法違反など
ア 憲法の解釈の誤りイ 憲法違反
い 法律上の訴訟手続の重大な違反
具体的な違反事項は条文に規定されている
う 法令違反
判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反
※民事訴訟法312条
3 上告受理事由(概要)
上告受理事由(上告受理申立の理由)があると上告受理申立ができます。言わば入口の審査です。
上告受理事由は,法令解釈の重要なものを含む判断について,再度の審理を求めるというものです。
<上告受理事由(概要)>
あ 判例違反
最高裁判例と相反する判断がある場合
い 法令の解釈に関する重要な事項
『重要』という部分は大きな評価・裁量が含まれる
→最高裁の判断により『実質審理・業務を回避できる』
→これが『上告受理申立』制度の趣旨である
※民事訴訟法318条1項
詳しくはこちら|民事訴訟の上告受理申立の理由(上告受理の要件)
4 上告審|手続の流れ|申立から審理に至るまで
上告審の手続の流れを説明します。
ここでは,申立から審理が始まるまでの部分をまとめます。
<上告審|手続の流れ>
あ 申立書の書面審査
高裁が書面に形式的な不備がないかをチェックする
対象書面=上告状・上告受理申立書など
い 裁判所から『通知書』送付
高裁から当事者双方に通知書が送付される
『上告提起通知書』・『上告受理申立通知書』
う 当事者が『理由書』を提出する
上告理由書・上告受理申立理由書を高裁に提出する
提出期限=送達を受けた日から50日以内
詳しくはこちら|刑事・民事・家事手続の不服申立(控訴・上告・抗告)の書面提出期限
え 理由書の書面審査
高裁が『理由書』に形式的な不備がないかをチェックする
お 最高裁への記録送付or却下
ア 理由書に不備がない場合
高裁が最高裁に訴訟記録を送付する
※民事訴訟規則197条
イ 理由書に不備があった場合
高裁が『上告or上告受理申立』を『却下』する決定を行う
※民事訴訟法316条1項,318条5項
か 最高裁→当事者への通知
最高裁は当事者双方に『書類送付を受けた』旨の通知を出す
5 上告理由書の送付|1・2審との違いに注意
上告の申立部分の流れで注意するべきことがあります。
『上告理由書の送付』です。
これをまとめます。
<上告理由書の送付|1・2審との違いに注意>
あ 上告理由書の送達なし
一般的に『上告理由書』が相手(被上告人)に送達されない
→被上告人は『上告人の主張内容』が分からない状態となる
※民事訴訟規則198条
い 1・2審との違い
1・2審では立証・訴訟の『対立構造』が徹底されている
→『申立書・準備書面』などは相手に送付される
上告審は『法律審』なので対審構造が緩和されている
この『違い』をしっかりと把握していない弁護士も多い
上告審の審理の性格や特徴については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|上告・最高裁の審理の基本(法律審・書面審理・結論のバリエーション・審理期間)
本記事では,上告や上告受理申立の手続の流れなどの基本的なことを説明しました。
実際には,個別的な事情によって,法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に,不当な判決への対応に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。