【株価下落・コンプライアンス体制構築不備により役員は責任を負う】
1 役員が会社に対して負う責任(概要)
2 役員が第三者に対して負う責任(概要)
3 複数の役員→会社・第三者に対する責任|連帯債務
4 株価下落×株主からの損害賠償請求|原則
5 株価下落×株主からの損害賠償請求|例外
6 コンプライアンス体制構築不備×取締役の責任
1 役員が会社に対して負う責任(概要)
会社の組織・構成は会社法に細かい規定があります。
『役員』は組織の上で重要な構成員です。
『役員』は権限が大きく,これに応じて責任も大きいです。
そこで,役員の任務懈怠(不正行為など)によって会社に生じた損害について賠償責任を認める規定があります。
詳しくはこちら|取締役などの役員が会社に対して負う責任
2 役員が第三者に対して負う責任(概要)
役員個人が責任を負うのは『会社』に対して,だけではありません。
『会社以外の被害者=第三者』に対して責任を負うこともあります。
これについても会社法に規定があります。
詳しくはこちら|取締役などの役員が第三者(会社以外の者)に対して負う責任
具体的には,会社の外部の被害者が,会社ではなく,役員個人に対して直接,損害賠償請求をするというものです。
3 複数の役員→会社・第三者に対する責任|連帯債務
役員は人数が複数,ということが多いです。
役員の責任が『複数人』に生じた場合の関係が規定されています。
<複数の役員→会社・第三者に対する責任>
複数の役員が責任を負う場合
→連帯責任となる
※会社法430条
4 株価下落×株主からの損害賠償請求|原則
会社の不正・違法行為が社会的に批判されることもあります。
この場合,株価下落につながり,株主が困ることになりがちです。
これに関する法的な責任をまとめます。
<株価下落×株主からの損害賠償請求|原則>
あ 発想
『株価下落』は株主が受けた『間接損害』である
株主から取締役個人に対する『間接損害』の賠償請求をしたい
い 基本的解釈
間接損害の直接請求は認められない
ただし特殊事情があれば例外的に認められる(後記)
う 理由
・取締役は『会社に対して』賠償義務を負う
※会社法423条1項
・これにより『株価への影響』が解消される
・『株主への責任』を認めると『責任が重複=ダブルカウント』となる
※東京高裁平成17年1月18日
※東京地裁平成8年6月20日
これについては『例外』も想定されています。
例外については次に説明します。
5 株価下落×株主からの損害賠償請求|例外
『株価下落』についての取締役の責任の『例外』をまとめます。
<株価下落×株主からの損害賠償請求|例外>
あ 例外的解釈
次のような特殊事情がある場合
→株主から取締役への『間接損害の賠償請求』が認められる
い 特殊事情|例
次のいずれにも該当する場合
ア 非公開会社イ 違法行為をした取締役と支配株主が同一or一体である
※会社法429条1項
※民法709条
※東京高裁平成17年1月18日
※東京地裁平成8年6月20日
6 コンプライアンス体制構築不備×取締役の責任
一般的に,企業の不祥事・不正行為が生じた場合,原因・責任が問題となります。
通常『特定の担当者』だけに原因があるわけではありません。
『コンプライアンス体制構築の不備』が原因と言えます。
コンプライアンス体制の構築・維持は取締役会が権限と責任を持っています。
結局,不祥事の責任が『取締役個人』に生じることもあります。
また,上場企業では『取引所のルールとの抵触』も生じます。
これらについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|コンプライアンス体制構築義務|コーポレート・ガバナンス・コード