【旅館業の営業許可基準の基本(全体・構造設備・欠格事由)】

1 旅館業の営業許可基準の基本(不許可事由)
2 構造設備基準の主要項目
3 構造設備基準の補足説明
4 浴室の基準(バスタブの必要性)
5 旅館業営業許可の欠格事由
6 設置場所の基準(概要)
7 許可基準緩和に関する既存の制度(概要)
8 旅館業の営業許可取得ハードル(概要)
9 旅館業営業許可の審査と他法令の適合性
10 旅館業営業の行為規制(概要)

1 旅館業の営業許可基準の基本(不許可事由)

旅館業の営業のためには『許可の取得』が必要です。
詳しくはこちら|旅館業法の規制|基本・参入規制=許可制
本記事では旅館業の営業許可の基準について説明します。
条文上『不許可となる事情』が規定されています。
基本的な事項からまとめます。

<旅館業の営業許可基準の基本(不許可事由)>

あ 基本的事項

次の『い〜お』のいずれかに該当する場合
→不許可となる

い 構造設備基準

施設の構造が基準に適合しない
構造設備基準の内容は政令で定める
基準の一部は条例で定める(後記※1

う 公衆衛生

施設の設置場所が公衆衛生上不適当である

え 欠格事由

申請者が欠格事由に該当する(後記※2
※旅館業法3条2項

お 設置場所

一定の教育・福祉施設からの距離が近い(後記※3
※旅館業法3条3項,4項

それぞれの項目の内容については後述します。

2 構造設備基準の主要項目

旅館業営業許可基準のうち『構造設備』に関する主要なものをまとめます。

<構造設備基準の主要項目(※1)

項目 ホテル営業(参考) 旅館営業(参考) 簡易宿所営業 下宿営業
客室数 10室以上;主に洋室 5室以上;主に和室 面積で過半が共用部屋・ベッド上下間隔1m以上
1客室の床面積 洋室9・和室7平方メートル以上 洋室9・和室7平方メートル以上 3平方メートル以上・延床面積は別(※5) 4.7平方メートル以上
定員 1名あたり3平方メートル以上 1名あたり3平方メートル以上 1名あたり1.5平方メートル以上
玄関・フロント 3平方メートル以上 宿泊者との面接に適した広さ (※4)
浴室 浴室orシャワー室 入浴設備or近隣に浴場がある 入浴設備or近隣に浴場がある 入浴設備or近隣に浴場がある(※6)
暖房設備 規模に適した暖房設備
その他(※7) ロビー+レストラン 履物の保管設備

※旅館業法4条,旅館業法施行令1条,東京都旅館業法施行条例

3 構造設備基準の補足説明

前記の構造設備基準の表の中の注意事項をまとめます。

<構造設備基準の補足説明>

あ 玄関・フロント(※4)

通達で一定の基準が規定されている
詳しくはこちら|簡易宿所営業×フロントの要否|基本|衛生管理要領改正・設備基準

い 床面積(※5)

平成28年4月に改正された
詳しくはこちら|平成28年4月改正施行令・通達|基本|簡易宿所・延床面積基準緩和

う 浴室(※6)

自治体による規制もある
例;『バスタブ』が必須(後記※8

え その他(※7)

ア トイレ トイレの設置基準もある
詳しくはこちら|簡易宿所のトイレ設置基準(規定のバリエーションと実情)
イ キッチン 自治体による規制もある
例;宿泊者とそれ以外(住民)のキッチンを分ける

4 浴室の基準(バスタブの必要性)

浴室の基準については,自治体によっては特殊な規定があります。

<浴室の基準(バスタブの必要性;※8)>

あ 原則

旅館業法・施行令について
バスタブは必要ではない(前記)

い 自治体による規定

自治体の条例で『バスタブ』が必要であることもある

う 墨田区の例

『浴槽』を前提とした規定がある
※墨田区旅館業法施行条例5条(8)
シャワーではなく浴槽(バスタブ)が必要である
バスタブの設置を許可要件として扱っている
※墨田区生活衛生課ヒアリング平成29年1月

5 旅館業営業許可の欠格事由

許可基準のうち『欠格事由』の内容をまとめます。

<旅館業営業許可の欠格事由(※2)

あ 旅館業法違反歴

旅館業法違反による刑の執行終了・執行免除から3年以内の者

い 営業許可取消歴

旅館業営業許可取消を受けてから3年以内の者

う 法人の役員

法人で,業務執行役員に上記該当者が含まれる場合
※旅館業法3条2項

6 設置場所の基準(概要)

許可基準のうち『設置場所』の概要をまとめます。

<設置場所の基準(概要;※3)>

あ 規定|概要

一定の教育・福祉施設と宿泊施設の距離について
約100メートル未満の場合
→不許可となることがある

い 判断|実情

実際には不許可となることは少ない
詳しくはこちら|旅館業法|設置場所基準|教育・福祉施設との距離制限

7 許可基準緩和に関する既存の制度(概要)

一定の事情がある場合,以上の許可基準には『例外』が適用されます。
許可基準のうち一部の項目について適用除外となるのです。
このような基準緩和の制度については,別に説明しています。
詳しくはこちら|許可基準緩和|既存制度|全体・イベント・グリーンツーリズムなど

8 旅館業の営業許可取得ハードル(概要)

実際に旅館業の許可を取得する場合は『超えるのが困難なハードル』があります。
特に,小規模な施設の場合は,許可基準と施設の規模がアンバランスと言えます。
前述の緩和措置を活用する方法もあります。
しかし緩和措置も限界があります。
現実的・実務的な許可取得における典型的な問題点はある程度決まっています。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|民泊の旅館業営業許可取得のハードル

9 旅館業営業許可の審査と他法令の適合性

宿泊サービスに適用される規制は旅館業法だけではありません。この点,旅館業の営業許可と他の法令の規制を混同する誤解がよくあります。
法律的にはまったく別の扱いとなっています。

<旅館業営業許可の審査と他法令の適合性>

あ 旅館業営業許可の審査基準

旅館業法やこれに関する法令・条例・通達の基準を元に審査する
これらの要件をクリアしていれば許可をする

い 他法令の適合性との関係

旅館業営業許可の審査において
他の法令の適合性は審査基準には含まれていない
例;建築基準法・消防法の適合性・検査済証の有無

う 具体例

次のような事情があっても不許可にはできない
ア 検査済証がないイ 旧耐震基準の建物であることウ 管理組合・オーナーの承諾や許可がないエ 近隣住民が反対している 例;事前の住民説明会をしていない

え 実務的な対応

検査済証の提示は任意でお願いしている
運営上のアドバイスとして審査対象以外のことを伝えることはある
アドバイス内容=他の法令や常識的なもの
※葛飾区生活衛生課ヒアリング平成29年1月
  

10 旅館業営業の行為規制(概要)

旅館業営業の規制は『許可制』だけではありません。
許可を得た後の運営についても一定のルールがあります。
衛生管理,宿泊者名簿,調査協力義務などです。
このような『行為規制』については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|旅館業法|行為規制|施設利用基準・宿泊者名簿・利用拒否NG

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