【建築基準法の違反(違法建築)への罰則と行政的措置】

1 建築基準法のルール(概要)
2 違法建築の罰則(責任大カテゴリ)
3 違法建築の罰則(責任中カテゴリ)
4 違法建築の罰則(責任小カテゴリ)
5 特定条項『小』の内容
6 違法建築に対する事後的な行政的措置
7 除却などの命令についての行政代執行(概要)
8 既存不適格・再築不可物件と除却命令(概要)
9 違法建築・検査済証なしと増改築時の障害(概要)

1 建築基準法のルール(概要)

『建築物』の建築では多くの基準・ルールがあります。
主に建築基準法において規定されています。
基準の適合性の確認自体が『確認申請』というルールになっています。
詳しくはこちら|建築確認|審査内容=建築基準法等の適合性|審査の流れ|建設主事・特定行政庁
建築基準法の基準に適合しない建物を建築すると法的責任が発生します。
いわゆる『違法建築』と言われるものです。
違法建築に対して,除却命令などの行政的措置が取られることもあります。
本記事では,建築基準法違反についての法的責任・措置を説明します。

2 違法建築の罰則(責任大カテゴリ)

違法建築のうち責任が大きいカテゴリについてまとめます。

<違法建築の罰則(責任大カテゴリ)(※1)

あ 罰則

『い〜お』の違反について
法定刑=懲役3年以下or罰金300万円以下
法人の場合罰金1億円以下

い 命令違反

特定行政庁or建築監視員による次の命令への違反
ア 措置命令イ 緊急施工停止命令 ※建築基準法9条1項,9条10項前段

う 一般違反設計

次の基準・規制に適合しない『設計』で建築工事を施工した
→罰則対象者=設計者
ア 構造耐力;20条イ 大規模建築物の主要構造部;21条ウ 防火壁;26条エ 耐火建築物などの特殊建築物;27条オ 特殊建築物の避難・消火に関する技術的基準;35条カ 特殊建築物の内装;35条の2キ 防火壁・防火区画の技術基準;36条

え 用途変更に関する違反

『い』の『エ〜キ』に適合しない設計で建築工事を施工した
※建築基準法87条3項

え 設計図なし・無視

設計図を用いないor設計図に従わないで施工した
→罰則対象者=工事施工者

お 建築主の意図的な違反設計

建築主が上記違反を知っていて施工を指示した
→罰則対象者=建築主・設計者・工事施工者
※建築基準法98条,105条1号

3 違法建築の罰則(責任中カテゴリ)

違法建築のうち責任が中程度であるカテゴリについてまとめます。

<違法建築の罰則(責任中カテゴリ)>

あ 罰則

『い・う』の違反について
法定刑=懲役1年以下or罰金100万円以下
法人の場合も同様である
罰則を受ける者は(前記※1)と同様である

い 手続欠如系の違反

ア 確認なしで建築したイ 完了検査の申告をしない/虚偽の申告をしたウ 検査済証なしで使用を始めた

う 特定条項『中』の違反設計

罰則対象者は上記『責任大』のタイプと同様である
ア 特定条項『中』の内容 構造耐力系・防火・耐火構造系・設備系など
イ 設計図なし・無視 設計図を用いないor設計図に従わないで施工した
特定条項『中』に関する工事内容に限る
ウ 建築主の意図的な違反設計 建築主が上記違反を知っていて施工を指示した
※建築基準法99条

4 違法建築の罰則(責任小カテゴリ)

違法建築のうち責任が小さいカテゴリについてまとめます。

<違法建築の罰則(責任小カテゴリ)>

あ 罰則

『い』の違反について
法定刑=罰金100万円以下
法人の場合も同様である
罰則を受ける者は(前記※1)と同様である

い 違反行為

ア 設計者が建築士ではないイ 工事監理者が定められていないウ 特定条項『小』(後記※2)に違反する設計で施工した ※建築基準法101条

5 特定条項『小』の内容

責任小カテゴリに該当する建築の違反の内容をまとめます。

<特定条項『小』の内容(※2)

ア 敷地の衛生・安全;19条イ 居室の採光・換気;28条1項,2項ウ 便所;31条エ 敷地の接道義務;43条1項オ 道路内の建築制限;44条1項カ 壁面線による建築制限;47条キ 容積率制限のうち一定のもの;52条1項,2項,7項ク 建ぺい率制限;53条1項,2項ケ 建築物の最低限度敷地制限;53条の2第1項コ 一定エリア内の外壁の後退距離;54条1項サ 一定エリア内の建築物の高さ制限;55条1項シ 北側斜線などによる高さ制限;56条1項ス 日影による高さ制限;56条の2第1項セ 特例容積率適用地区内の建築物の高さ制限;57条の4第1項ソ 高層住居誘導地区の軽ペイ率制限;57条の5第1項タ 高度利用地区内の建ぺい率などの制限;59条1項,2項チ 特定街区内の容積率などの制限;60条1項,2項ツ 都市再生特別地区内の容積率などの制限;60条の2第1項,2項テ 特定防災街区整備地区内の各種制限;67条の2第3項,5項,7項ト 景観地区内の最高限度高さ制限など;68条1項〜3項ナ 居室の採光面積,天井・床の高さなどの構造の基準;36条ニ 用途制限;48条1項〜13項 ※建築基準法101条

6 違法建築に対する事後的な行政的措置

違法建築の建物の完成後には,罰則以外の行政的措置がなされることもあります。
行政的な措置についてまとめます。

<違法建築に対する事後的な行政的措置>

あ 前提条件

建築物が建築基準法に違反する

い 必要な措置の命令

特定行政庁は必要な措置を命令できる
命令の対象者=建築主・工事の請負人など

う 命令の種類

建築物の除却・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限
※建築基準法9条1項

え 命令違反への罰則|法定刑

懲役3年以下or罰金300万円以下
※建築基準法98条1項1号

7 除却などの命令についての行政代執行(概要)

除却命令などが出されても,対象者が応じない,ということがあります。
この場合は法的に強制する手段があります。
行政代執行という手続です。
要するに行政が強制的に建物を解体することができるのです。
行政代執行については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|行政代執行|基本・手続|『命令』が前提・裁判所不要

8 既存不適格・再築不可物件と除却命令(概要)

違法建築の中には特殊な事情を経たものもあります。
いわゆる『既存不適格』と呼ばれる建物です。
この場合には『除却命令』は出されていません。

<既存不適格・再築不可物件と除却命令(概要)>

あ 通常の違法建築

除却命令が出されることがある(前述)

い 既存不適格・再築不可物件

ア 前提事情 建築時は適法であったが,その後規制内容が変更された
→結果的に『法律の基準に適合しない状態』となった
→『既存不適格・再築不可物件』と呼ばれる
典型例;道路のセットバック
イ 除却命令 『除却命令』は出されない
詳しくはこちら|既存不適格建物の適用除外(建築基準法3条2項)

9 違法建築・検査済証なしと増改築時の障害(概要)

違法建築の場合は建物完成時に検査申請を行えません。
また,建築内容は適法でも検査申請をしないままというケースもあります。
この場合『増改築ができない』状態になることがあります。
詳しくはこちら|違法建築→検査済証なし→増改築・用途変更・ローンNG|規制緩和方針

本記事では,建築基準法に違反した場合の罰則や行政上の措置について説明しました。
実際には,個別的な事情によって,法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に建物の適法性に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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