【労働者性・判断事例|スキル・美貌系|職人・デザイナー・執筆・ホステス】
1 判例|塗料製法の指導・研究→労働者と認定
2 判例|アンカー職人→労働者ではない
3 判例|番組制作デザイナー→労働者と認定
4 判例|執筆・清書業務→労働者ではない
5 判例|ホステス・キャスト→労働者と認定
6 通達|同居の親族→労働者ではない
1 判例|塗料製法の指導・研究→労働者と認定
『労働者』に該当するかどうかが判断された事例を紹介します。
本記事ではスキル・美貌という本人の特性を用いる業種についてまとめます。
<塗料製法の指導・研究→労働者と認定>
あ 否定要素
業務内容=塗料製法の指導・研究
直接上司の指揮命令に服していない
遅刻・早退などがあったが給与を減額されていない
い 肯定要素
毎日一定時間勤務していた
一定額の『本給』と残業手当が支給されていた
う 裁判所の判断
労働者にあたる
※最高裁昭和37年5月18日
2 判例|アンカー職人→労働者ではない
(1)アンカー職人→労働者ではない|事案
<アンカー職人→労働者ではない|事案>
あ 業務受託の諾否の自由
職人は受託を拒否できた
拒否した場合,事業者は他の職人を探していた
い 指揮監督の程度
ア 作業要領による指示
必要最低限の指示説明の範囲内であった
イ 現場での『職長』
『指揮命令の統一化』を図る立場に過ぎなかった
ウ 『安全会議』の実施
従業者の参加は強制的ではなかった
う 時間的・場所的拘束
作業開始時刻は確定的なものではなかった
タイムカードによる出退勤管理もなかった
え 報酬の労務対償性
作業ミスについての『報酬からの控除』があった
→請負人の瑕疵担保責任
単純な『労務の対価』とは言えない
お 『事業者性』
従業者が工具を所有していた
従業者が所得税の確定申告をしていた
従業者が労災保険に『一人親方』として加入していた
か 専属性の程度
従業者が他社の仕事を受けることは禁止されていなかった
※東京地裁平成16年7月15日;池袋職安所長(アンカー工業)事件
(2)アンカー職人→労働者ではない|裁判所の判断
<アンカー職人→労働者ではない|裁判所の判断>
労働保険上の『労働者』には該当しない
※雇用保険法4条1項
※東京地裁平成16年7月15日;池袋職安所長(アンカー工業)事件
3 判例|番組制作デザイナー→労働者と認定
<番組制作デザイナー→労働者と認定>
あ 事案
テレビ放送事業を行う財産とタイトルデザイナーとの契約
雇用・請負の混合的性格を持つ契約であった
『労働』=『雇用』的性格の範囲において,労働法上の保護を受ける
い 裁判所の判断
労働者にあたる
※東京地裁昭和43年10月25日;東京12チャンネルタイトルデザイナー解雇事件
4 判例|執筆・清書業務→労働者ではない
<執筆・清書業務→労働者ではない>
あ 事案
業務=筆耕(者);文字を書く・清書する業務
印刷会社からの仕事の依頼に対して許諾・拒否の自由がある
時間的・場所的拘束はない
労務の代替性がある
報酬は出来高で決まる
い 裁判所の判断
労働者にあたらない
※東京地裁昭和48年2月6日
5 判例|ホステス・キャスト→労働者と認定
<ホステス・キャスト→労働者と認定>
あ 業種
飲食店のホステス(キャスト)
い 使用従属性
ア 仕事依頼の応諾の自由はなかったイ 業務遂行上の指揮監督はあったウ 時間的拘束性はあった
タイムカードでの管理・遅刻や欠勤の制裁
エ 代替性はない
契約の成否は個人的な要素の影響が大きい
う 労務対償性→あり
システム=1日出勤すれば3万円は最低額として保証・売上額によって加算
え 事業者性→認めない
原告負担の衣服料が高額であった
時給が7000円以上であった
→通常の範囲内である
お 専属性
勤務時間外に他の業務に従事することが可能であった
→これだけでは専属性を否定できない
か 裁判所の判断・結論
労働者にあたる
※大阪地裁平成17年8月26日
6 通達|同居の親族→労働者ではない
<同居の親族→労働者ではない>
あ 原則
労働者にあたらない
い 例外
次の条件に該当すると労働者にあたる
ア 常時同居の親族以外の労働者を使用する事業において,一般事務または現場作業に従事しているイ 業務を行う場合に,事業主の指揮命令に従っていることが明確であるウ 次の事項が就業規則などに定められている
始業・終業時刻・休憩時間・休日・休暇等・賃金の決定・計算・支払方法・賃金の締日・支払時期等
※通達;昭和54年4月21日基発153