【労働者性・判断事例|役員系|兼務の取締役・監査役・代表者】
1 判例|営業所長・常務取締役→労働者と認定
2 判例|工場長・取締役→労働者と認定
3 判例|庶務会計・監査役→労働者と認定
4 判例|名ばかり『副社長』→労働者と認定
5 通達|共同経営・出資者→労働者となることもある
6 通達|役員だが業務執行権・代表権なし→労働者と認定
7 判例|代表取締役→労働者ではない
8 通達|代表者・執行機関→労働者ではない
1 判例|営業所長・常務取締役→労働者と認定
『労働者』に該当するかどうかが判断された事例を紹介します。
本記事では『役員』などの役職が付いてた従業者のケースをまとめます。
形式・名目ではなく実質的な業務・責任内容で判断されることが分かります。
<営業所長・常務取締役→労働者と認定>
あ 事案
営業所長と常務取締役を兼任していた
2つの役割のうち,営業所長としての労働が主要な部分であった
常務取締役としての委任契約は付随的なものであった
い 裁判所の判断
労働者にあたる
※東京地裁昭和62年3月20日
2 判例|工場長・取締役→労働者と認定
<工場長・取締役→労働者と認定>
あ 事案
従業員であった『工場長』が取締役に就任した
従業員の地位と取締役の地位は併存する
い 裁判所の判断・結論
労働者にあたる
※名古屋地裁昭和55年10月8日
3 判例|庶務会計・監査役→労働者と認定
<庶務会計・監査役→労働者と認定>
あ 事案
監査役であった
代表者の指揮命令に従って庶務会計の事務に従事していた
い 裁判所の判断
労働者にあたる
※京都地裁昭和50年8月22日
4 判例|名ばかり『副社長』→労働者と認定
<名ばかり『副社長』→労働者と認定>
あ 事案
建設請負業を行う会社にAが『副社長』の肩書で採用された
Aは取締役に選任されていない
給与は一般従業員と同様の扱いであった
Aが起案した規程類を社長が独断で不採用とした
Aの給与額を会社側が一方的に減額したことがあった
Aは一般の支店勤務従業員と同様の雑務を行った
い 裁判所の判断
稼働の実態が『労働者』に近い
→労働者にあたる
※札幌地裁昭和42年2月22日;北海道技建工業予告手当等請求事件
5 通達|共同経営・出資者→労働者となることもある
<共同経営・出資者→労働者となることもある>
あ 対象業務と条件
共同経営事業の出資者
組合or法人との間に使用従属関係がある
賃金を受けて働いている
い 結論
労働者に該当する
『使用従属性』が存在することが前提となっている
※通達;昭和23年3月24日基発498
6 通達|役員だが業務執行権・代表権なし→労働者と認定
<役員だが業務執行権・代表権なし→労働者と認定>
あ 対象業務と条件
法人の役員で業務執行権・代表権を持たない者
『工場長・部長』の職にある
賃金を受けている
い 結論
労働者に該当する
※通達;昭和23年3月17日基発461
7 判例|代表取締役→労働者ではない
<代表取締役→労働者ではない>
あ 事案
経営に直接関連する事項について決定・実施していた
他の者から指示・権限の制限を受けることはなかった
い 裁判所の判断
代表取締役の持つ『代表権』の範囲は包括的であった
→『労働者=指揮命令下での労務』との兼務ではない
→労働者にあたらない
※東京地裁平成11年12月24日;ポップマート事件・第1審
8 通達|代表者・執行機関→労働者ではない
<代表者・執行機関→労働者ではない>
あ 対象業務(役職)
法人・団体・組合等の代表者または執行機関
い 結論
労働者に該当しない
※通達;平成11年3月31日基発168