【労働者性・労働組合法|事例|INAXメンテナンス・コンビニ加盟店ユニオン事件】

1 労働組合法の『労働者』と認めた公的判断|代表例
2 INAXメンテナンス事件|事案・概要
3 INAXメンテナンス事件|判断要素・判断結果
4 コンビニ加盟店ユニオン事件|概要=『労働者』と認めた
5 コンビニ加盟店ユニオン事件|評価・認定

1 労働組合法の『労働者』と認めた公的判断|代表例

労働組合法の『労動者』は労働基準法とは違う定義です。
(別記事『労働組合法・労働者・基準』;リンクは末尾に表示)
本記事では,労働組合法の『労働者』の判断の具体例を説明します。
まずは代表的な公的判断をまとめます。

<労働組合法の『労働者』と認めた公的判断>

あ 家内労働者であるヘップサンダルの加工作業

※中労委昭和35年8月17日;東京ヘップサンダル工組合事件

い 放送会社と自由出演契約を締結した管弦楽団メンバー

※最高裁昭和51年5月6日

う プロ野球選手

プロ野球選手会について労働組合の資格認定がなされた
※昭和60年11月都労委

え 住宅設備・機器の修理・補修作業員

※最高裁平成23年4月12日;国・中労委(INAXメンテナンス)事件(後記)

お コンビニ加盟店主

※平成26年3月13日岡山県労働委員会(後記)

2 INAXメンテナンス事件|事案・概要

労働組合法の『労働者』の判断がなされた判例をもう1つ紹介します。
まずは事案の概要をまとめます。

<INAXメンテナンス事件|事案・概要>

住宅設備機器の修理補修を主要な事業としていた
受託者は修理・補修の業務に従事していた
『カスタマーエンジニア』と呼ばれていた
事業者と受託者の契約は『業務委託契約』であった
※最高裁平成23年4月12日;国・中労委(INAXメンテナンス)事件

3 INAXメンテナンス事件|判断要素・判断結果

INAXメンテンナス事件の判断で使われた事情をまとめます。

<INAXメンテナンス事件|判断要素>

ア 事業組織への組み入れ 事業者は住宅設備機器の修理補修業務の大部分をカスタマーエンジニアに委託していた
事業者は能力・実績・経験などを基準に級を定める制度を運用していた
カスタマーエンジニアは全国の担当地区に配置されていた
業務の日・休日を事業者が指定していた
業務委託契約の期間は1年であり,原則更新されるものであった
イ 契約内容の一方的・定型的決定
個々の業務委託契約の内容を事業者が定めていた
受託者の側で内容を変更することはできない状態であった
ウ 報酬の労務対価性
受託者の報酬は,売上に一定の支給率を乗じて,時間外の加算をして算定されていた
支給率は事業者の規定による『級』によって定まるものであった
エ 業務の依頼に応ずべき関係 受託者は,事業者から受託した業務を直ちに遂行するものとされていた
受託を拒否する割合は非常に少なかった
オ 広い意味での指揮監督下の労務提供・一定の時間的場所的拘束 受託者は,事業者が指定した担当地域内の顧客先=作業場所で業務を行っていた
原則的に業務日の午前8時半から午後7時まで事業者からの連絡を受ける状態であった
受託者は業務終了時に報告書を事業者に送付していた
受託者は作業手順などが記載された各種マニュアルに基づく業務の遂行を要請されていた
カ 顕著な事業者性(がない)
受託者は業務の際に事業者の制服を着用し,事業者の名刺を携行・使用していた
※最高裁平成23年4月12日;国・中労委(INAXメンテナンス)事件

以上の事情を考慮した結論をまとめます。

<INAXメンテナンス事件|判断結果>

労働組合法上の『労働者』に該当する
※最高裁平成23年4月12日;国・中労委(INAXメンテナンス)事件

4 コンビニ加盟店ユニオン事件|概要=『労働者』と認めた

最近の事例で,コンビニ加盟店主を労働組合法の『労働者』と認めたものがあります。
労働基準法の『労働者』ではなく,緩和されている『労働組合法の労働者』です。

<コンビニ加盟店ユニオン事件|概要>

あ 発令の概要

平成26年3月13日岡山県労働委員会
→団体交渉応諾命令など発令

い 判断内容の概要

コンビニ加盟店ユニオンを労働組合と認めた
コンビニ加盟店を労働組合法の『労働者』と認めた

5 コンビニ加盟店ユニオン事件|評価・認定

コンビニ加盟店ユニオン事件の判断の内容をまとめます。

<コンビニ加盟店ユニオン事件|評価・認定>

あ 事業組織への組み入れ

加盟店主の存在及び店舗経営・運営は,FC本部(株式会社セブン-イレブン・ジャパン)の『組織内に』確保されているとまではいえないものの,不可欠な存在として評価できる
い 契約内容の一方的・定型的決定
FC本部が用意した定型的な契約書の内容が当事者間の交渉によって変更されることはない
FC本部と加盟店主の間に交渉力格差がある
加盟店主にある一定の労務提供を義務付けるものといえる
う 報酬の労務対価性
加盟店主の収入はセブン-イレブン店の経営・運営という労働によって得た利益,つまり対価とみるのが相当である。

え 業務の依頼に応ずべき関係

加盟店主は会社が提供する新サービスを拒むことは実質的に困難であるといえる

お 広い意味での指揮監督下の労務提供・一定の時間的場所的拘束

加盟店主がFC本部の指揮監督の下に経営・運営を行っているとものと認められる

か 顕著な事業者性

加盟店主は従業員を雇用して自己の事業組織を構築している
加盟店主は自己の才覚で利得する機会を有し,自らリスクを引き受けて事業を行う者ではある
しかしそれは限定的であって,その事業者性が顕著とまではいえない

<コンビニ加盟店ユニオン事件|結論>

加盟店主は,FC本部とは別の立場にある事業者である
しかし,その独立性は希薄である
→労働組合法上の労働者に当たる

外部サイト|厚生労働省|労働組合法上の労働者性の判断基準について
関連コンテンツ|フランチャイズ契約の解消|民事再生×解除・違約金の有効性・COC条項

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