【文化財保護法・重要文化財|基本|損壊×罰則|報告義務】
1 重要文化財|定義・指定
2 損壊・毀損×罰則|行為者
3 損壊・毀損×報告義務|所有者
4 管理の懈怠×毀損→罰則|管理者・責任者
5 『命令』違反×罰則|違反行為者
6 重要文化財に関する命令の典型例
1 重要文化財|定義・指定
『重要文化財』は法的な規制・保護があります。
思わぬところで抵触=適用される,ということが生じます。
本記事では重要文化財・文化財保護法の基本事項を説明します。
まずは『重要文化財』の定義からまとめます。
<重要文化財|定義・指定>
有形文化財のうち文部科学大臣が指定したもの
文部科学大臣は『重要なもの』を指定する
※文化財保護法27条1項
2 損壊・毀損×罰則|行為者
重要文化財の保護規定の代表は『罰則』です。
これについてまとめます。
<損壊・毀損×罰則|行為者>
あ 対象行為
重要文化財を損壊・毀損・隠匿した
い 故意/過失
『故意』のみが対象である
『過失』は含まれない
※刑法38条1項
う 罰則|法定刑
懲役or禁錮5年以下or罰金30万円以下
※文化財保護法195条1項
刑事責任の原則として『故意犯』のみが対象となります。
実際には,危険の認識の程度によって『故意/過失』を判別します。
具体的事情について,この判断・見解が対立することもよくあります。
3 損壊・毀損×報告義務|所有者
重要文化財に損壊・毀損が生じた場合『所有者』に『報告義務』が生じます。
<損壊・毀損×報告義務|所有者>
あ 報告義務
重要文化財の全部or一部が滅失・毀損した・盗取された場合
→所有者は書面で文化庁長官に届け出る義務がある
い 報告期限
各事象発生の10日以内
う 報告義務違反への罰則|法定刑
過料5万円以下
※文化財保護法33条,203条2号
文化庁は報告を受けた後『修復命令』を出すこともあります。
4 管理の懈怠×毀損→罰則|管理者・責任者
重要文化財が毀損した場合『管理の懈怠』が原因と言えることもあります。
状況によっては『管理者』に罰則が適用されます。
<管理の懈怠×毀損→罰則|管理者・責任者>
あ 対象者
ア 重要文化財の管理者イ 重要文化財の修理・修復の責任者
い 対象行為
怠慢or重過失があった
これにより滅失・毀損・衰亡・盗取されるに至った
う 罰則|法定刑
過料30万円以下
※文化財保護法200条
5 『命令』違反×罰則|違反行為者
重要文化財に関する保護として『命令違反』の罰則もあります。
<『命令』違反×罰則|違反行為者>
あ 対象行為
正当な理由なく次のいずれかに該当した
ア 文化庁長官による環境保全措置命令イ 施設の命令
い 罰則|法定刑
過料10万円以下
※文化財保護法202条1号,45条1項
この中の『命令』については,具体例を次に説明します。
6 重要文化財に関する命令の典型例性
重要文化財については『命令』が保護されます(前記)。
『命令』の具体例についてまとめます。
<重要文化財に関する命令の典型例>
あ 環境保全措置命令|例
特定エリアでの建築を差し止める命令
『不特定の者』を対象とすることは否定されていない
しかし想定はされていない
い 施設の命令|例
特定施設の所有者・管理者から来場者への要請
具体例;掲示を含めて明確に伝達している禁止事項
『不特定の者』を対象とすることも想定できる
なお,これらはあくまでも『考えられるもの』です。
判例などの公的・統一的な見解,というわけではありません。
また,ドローン飛行と関わる具体例を別記事で説明しています。
詳しくはこちら|ドローン事故×重要文化財損傷|文化財保護法違反・姫路城管理条例
なお,以上はあくまでも『刑事責任』の説明です。
民事的な責任はこれらとはまったく別です。
損害賠償責任は故意・過失を問わずに生じます。